No.718 存続

先週もまた、資金繰りに問題を抱える会社からの相談がありました。

既に新規融資は止められ、10月に向かえる決算時に黒字化できなければ、全額返済を求められているといいます。

どう考えても危機的状況にありますが、お話をお伺いしていても、どこか他人事のような受け答えで、少々戸惑いを覚えました。

よくよくお話をお聴きしていると、ご自身がそこそこの資産家で、「自分がお金を出せばまだ何とかなる」という漠然とした現状安住の心にその原因があることがわかってきました。

その結果、こちらから出させていただいたご提案に対しても、できない理由を滔々と語られ、結果として何一つ進展しないまま時間だけが過ぎていきました。

会社は、どれほど赤字を出し続けても、それを以て潰れることはありません。お金さえ回すことができれば生き残ることはできます。この会社も、個人資産がなくなるまで投入し続ければ、それまでは生きながらえることができるのです。

実はこういうケースが非常に厄介で、このタイプの経営者は、自分の資産ばかりか、奥様の実家やその他親族まで巻き込んだ末に強制退場となるケースが多いものです。

もちろん経営者は、会社を存続させ、かつ良い経営を実現することが使命ではありますが、社会や他者に迷惑をかけることがないよう、会社存続のボーダーラインを自ら設定し、それを超えたら、責任をもって自ら退場する覚悟も必要だと思います。

もうひとつ、このようなケースに共通するのは、「後継者がいない」ことです。この社長も、残念ながらお子様がいらっしゃらず、社内にも適任者がおられませんでした。会社の状況から、M&Aという出口もありません。

実際にお話をお聴きしながら、後継者がいらっしゃれば状況は変わっていたように感じました。

残念ながら、今回のご相談においては、有効なご提案ができないまま、時間切れとなってしまいました。

やはり、後継者を明確にし、育成していくことが、経営者としての最低限の責務であると、改めて認識した相談案件でした。