No.731 承継

先日、商工中金から『中小企業の事業承継に関する調査』が発表されました。同金庫の取引先が調査対象ですので、中小企業全体を網羅しているものではありませんが、興味深いデータがいくつかありましたのでご紹介させていただこうと思います。

一つ目は、「誰に継がせたいか」が、自分自身の社長就任の経緯によって異なる点です。

ご自身が後継者である場合、85.1%が「親族内承継」を考えているのに対して、創業者は59.5%で、後継者では9.0%しかない「社内昇格」が27.1%を占めています。「能力がある者に継がせたい」という創業者の傾向が顕著に出ているデータだと感じました。また「M&A」を検討している創業者が、後継者の4倍近くいることもその表れかもしれません。

一方で、ご自身が社外招聘である場合、「親族内承継」21.2%、「社内昇格」33.3%、「社が招聘」30.3%、「M&A」12.1%と、その方向性がかなりばらけています。この点について、今の私には明確な理由が説明できませんので、今後の研究対象にしたいと思います。ちなみに「M&A」が一番多かったのはこのカテゴリーでした。勤務経験がないため、会社に対する愛着や思い入れが薄いことがその理由かもしれません。

二つ目が、「企業規模が大きくなるに従って、親族内承継の意向が高まる」ことです。

年商が5億円以下では66.6%であるのに対して、100億円を超えると82.6%にまで徐々に高まっています。さらに、5億円以下では8.3%ある「M&A」の意向が、100億円を超えると0%になります。もちろん、サンプル数の違いもありますが、一定の傾向が現れていると思われ、実に興味深いデータです。仮説に過ぎませんが、現在の事業に対する現経営者の自信のバロメーターのようにも感じます。

三つ目が、「後継予定者の同意確認済みの時期」です。親族内承継においては、60歳を超えると84.1%の方が同意を得ているのに対して、親族以外の場合は、60歳代で49.4&、80歳を超えても78.6%となっています。経営者の高齢化の原因を垣間見ることができた気がしました。

最後に、「事業承継の懸念点」の第一位が「後継者の育成」(57.8%)であったこと。いつの時代も変わらない悩みですね。

この調査結果を拝見して、創業者と後継者の意識の違いを改めて感じさせていただきました。そして、現在の日本の事業承継上の問題を解決する方向性の一つとして、親族内承継の促進が重要なテーマであることを再認識させていただきました。

このアンケート結果を、今後の事業承継に対する相談の参考にさせていただこうと思います。