「千年」バックナンバー No.201~300

目次

No.201 臆病

1000nen

2013/12/23 09:00:00

 
先日、ある会計事務所で研修の講師を務めたのですが、そこでちょっとした事件が起こりました。その事件とは、といってもそれほど大したことはないのですが、事前に担当者がヒアリングしていた内容とは全く別の内容を求められたのです。
 
原因は先方の窓口の方にあったのですが、その事務所の当社担当者は顔面蒼白。資料もなく、完全アドリブでの対応となりました。
 
またその内容のお話を求められた背景や目的、研修を受講される方々の今置かれている状況や意識などをヒアリングするのに少々時間を要し、研修開始が10分ほど遅れました。
 
内容的にはこれまでも何度かお話ししたことがあるものでしたので、事なきを得たのですが、事前確認を怠った担当者は、叱責から逃れることはできませんでした。
 
事前のヒアリングはおよそ1か月前。余程のことがない限り、研修に求められる内容が変わることはないのですが、ことこの事務所、というより先方担当者については注意が必要な方でした。それをわかっていながら事前確認をしなかった。そのところが問題です。
 
彼はただひたすら恐縮して叱責を受け容れています。そこでふと心配になり、最後には次の言葉を添えました。
 
「ビビる必要はないが、もっと臆病になりなさい」
 
このままでは、ただ単に失敗を恐れ、仕事に対して委縮してしまうのではないかとの心配を感じたのです。
 
ビビるのではなく、もっと積極的に、もっと前向きに事前確認を行い、確かで間違いのない仕事を追求し続ける姿勢を持って欲しい。
 
臆病になるとは、「これで大丈夫」と思ったとき、更にもう一歩進めて「他に考えておくべきことはないか?」「やり忘れていることはないか?」と考えること。
 
国民教育の父と言われる森信三氏も
 
「真の誠とは、何よりもまず己のつとめに打ち込むところから始まる。もうこれ以上尽くしようがないというところを、なおもそこに不足を覚えて、更に一段と自己を投げ出していく」
 
ことが大切だと述べられています。
 
私は「臆病ものほど良い仕事をする」と思っています。改めて自分自身の仕事の進め方を見詰め直してみようと思った出来事でした。
 
 


No.202 新年

1000nen

2014/01/06 09:00:00

 
新年明けましておめでとうございます。今年もご笑読のほど、よろしくお願い致します。
 
私事ですが、受験生二人を抱える当家のこの年末年始は、実家にさえ帰らせてもらうこともできず、かといって遊びに出させてももらえず、完全に自宅に引き籠っておりました。おかげさまで、会社のこと、これからのことを存分に考える時間がありました。(どこかの国の首相が、「家族の幸福は、妻への降伏」と仰っていましたが、まさにその通りかと・・・)
 
また昨年末から潜在意識の中で出口を探しているようなところがあり、何とも言えないモヤモヤを感じながら年を越してしまったのですが、元旦の日経新聞の見出しに踊った「空恐ろしさを豊かさに~常識超え新しい世界へ~」の文字に、我が心が躍りました。
 
九州に赴任して2年半。その経験の中から導き出した答え、言い換えるならば私が勝手に作り上げた常識に縛られ、過去の延長で描く未来に十二分な魅力を感じられず悶々としていた自分、モヤモヤしていた原因を認識すると共に、常識という制約条件を取っ払った時に明るい未来が待っていることに確信を持ち、これこそが私が望んでいたことであると自覚したのです。
 
この転機を受け、ある事業において「10年後3倍」の目標を掲げ、その実現に向けた具体策を練りに練りました。
 
10年で3倍というと大したことがないように思われるかもしれませんが、労働集約型産業であり、尚且つ人材育成に相当な時間と労力を要する当社事業においては、決して簡単なことではありません。
 
しかしながら、考えれば考えるほどウキウキ・ワクワク・ドキドキしてくる。受験生を凌ぐ集中力が自ずと生まれ、時間が経つのも忘れて没頭し、また達成した10年後を思い描き、その時の歓喜する自分と仲間たちの姿に心躍らせることができました。その時々に生じる数多の気付きのたびに感嘆の声を上げる私に受験生たちが振り向くので、少々申し訳ない気持ちにもなったのですが・・・
 
今年は去年の延長ではない。去年という舞台は幕を閉じ、新たな全く異なるステージに立っている。去年までの経験から得られた智慧と技術を活かして、今年という演目をどのように演じるか、改めてじっくり考える。新年にはそういう視点が必要なのだと、改めて感じることができました。
 
信念を持って、素晴らしい10年後を迎えられるよう、今年という舞台を精一杯演じ切りたいと思います。


No.203 甲午

1000nen

2014/01/14 09:00:00

 
毎年恒例となりました、と思って書き始めましたが、どうも昨年はなかったようですが(苦笑)、日本個性学研究所の石井先生から干支の解説が届きましたので、皆さんにもお伝えしたいと思います。(午の解説が少しわかりにくかったので、加筆してあります)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
≪甲≫
「甲」はかいわれ、春になって樹の芽が冬中被っていた殻を破って出て来た姿。鱗芽(芽が出る前の皮に覆われている芽)が外に発現した象形文字。故に物事のはじめを意味し、はじまるとも読む。その芽がぐんと伸びると(申、伸)。はじめという意味から、十分な慎重を要する。故に慎むという意味があり、新しく始めるところの法、制度を意味する。
 
ところが始まろうとする機運にあるが、人間はともすれば旧来の陋習(ろうしゅう:卑しい習慣、悪い習慣)になれてしまい、改革・革新をやらず、因循姑息になり、全てにだれてしまいがち。そこで甲は狎(なれる)に通じる。
 
従って、この自然の機運に応じて、旧来の陋習を破って、革新を進めなければならない。
 
≪午≫
「午」は「忤(さからう)」の意。かんむりは地表を表し、下の十の一は陽気でⅠは陰気がしたから突き上げてくる様で、まさに地表に出ようとする象形文字。従って人事に訳すと、反対勢力の高まりを示す。
 
≪甲午≫
よって「甲午」は、新しい流れが始まり、新たな革新をしようとするが、陋習のはびこる現在の環境、その勢力が革新に激しく反対する状態を意味する。
 
宇宙を流れる基本的な潮流は新しい時代に入り、その時代に応じた革新を期待している。名君はそれを敏感に感じ取って革新を進めようとするが、それに反対する勢力も力を増してくる。人間というものは基本的に新しいことを好まない。安定、現状維持を望む。ましてや現在十分に利益を享受し、その維持、保守に余念がない反対勢力には大迷惑である。
 
ゆえに革新は慎重に、用意周到に行われなければならない。陋習を打ち破るために革新の歩みをとめてはならないことを示唆している。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
如何でしょうか?毎年、前年の解説を読み返しますと、「本当にその通りだった」と感心するばかりです。具体的にはどんな内容は当然それぞれの企業によって異なるでしょうが、本質はそれほど違わないように思います。
 
私たち企業人がトップ自ら陋習を断ち、範となり、勇気を持って革新をし続けていくことが大切なのだと思います。
 


No.204 観劇

1000nen

2014/01/20 09:00:00

 
先週の金曜日、大阪事務所のメンバーを中心に、大阪松竹座で開かれた、坂東玉三郎さんの新春特別舞踏会を観劇してきました。
 
歌舞伎ではなく舞踏会ということで、若いメンバーは眠りの世界に誘われるのではないかと心配していましたが、全員「良かった」「綺麗だった」「また来たい」と好評で、ちょっとほっとしています。
 
席は三階席の更に最後列で、表情や指先のしぐさの細かいところまでは見ることができませんでしたが、さすが玉さん、ぐっと惹かれるものがありました。また共演は中村七之助さんで、こちらも玉さんに負けず劣らずの好演でした。
 
少し話は逸れますが、昨年観させていただいた勘九郎さんの襲名披露でも感じたこと。父・勘三郎さん亡き後、お二人ともぐっと良くなったように思います。先日も、歌舞伎大好きという方とお話をしておりましたが、全く同じ感想でした(少しは感じられるようになったのかと、嬉しくもありましたが)。何か熱いものを感じます。
 
閑話休題。観劇の後の食事会で、異口同音に出てくる感激の言葉に、やはりこういうものは残していかなければならない、そして伝えていかなければならないと、強く感じました。
 
一方で、約1か月続くこの興業、殆ど「満員御礼」です。凄いことだと思います。
 
守りたいと思う人がいる。その守りたいという人は、結局足を運ぶことでしか、その気持ちを表すことができない。でも足を運ぶことによって御足(お金)が集まり、残したいと思う人が更に芸を磨き、しつらえを磨き、衣装を磨くことが可能となる。結果また足を運びたくなる。まさに「商い=飽きない」の原点であるように思います。
 
私たちとお客様との関係もまさに同じ。お付き合いをいただくよりもっと深く、「守りたい」と思っていただけるような会社になるために何をするか、そういう観点で物事を考えていかなければならないと感じました。
 
ちなみにこの観劇には、会社から一人2,000円の補助をいただきました。社員の豊かな感性を磨くためにも、このような取り組みは必要ではないかと感じます。


No.205 主体

1000nen

2014/01/27 09:00:00

 
先日、ある方とお話をしている中で、ドキッとする内容がありました。
 
「客観的なものの見方をする力は必要だが、行き過ぎると、自分のことでさえ我がことと考えられなくなる。主体性が失われ、当事者意識がなくなる」
 
確かにその通りだと感じます。特に私たち、税理士やコンサルタントという生き物は、客観的なものの見方ができることが必須能力と言っても良く、採用段階でも特に留意する点でもあります。
 
しかしそれが行き過ぎると弊害が生まれる・・・
 
実は私たちの業界は優秀な管理者が育ちにくいという現実があります。プレイヤーとしては優れていても、マネジメントができない人が多いのです。私は先の話を聴いた時に、その理由ははっきりと認識することができました。
 
皆さんの会社では如何でしょうか?プレイヤーとしては優秀だった人間が、管理者になった途端にその魅力を失い、他への批判ばかり口にしたり、何か問題が起こると他責にしたり・・・。経営者の方とお話をしていてもよくお伺いする内容です。
 
客観的とは、第三者的にものを「観る」力であり、その対極にあるのが「主体的」。「観る」のではなく「体」を張って対処する、他人事ではなく我がこととして行動をする姿勢が感じられる言葉です。
 
ではどうしたら「主体性」を身につけさせることができるか。それには日頃の言葉掛けが大切だと思います。
 
例えば、何かやって欲しいことがあった際、「○○しておいて」といった指示ばかりしていると、主体的に物事を考える習慣が育たないばかりか、仕事に慣れてくると、その指示内容が「間違っている」「そんなことをやったって意味がない」などと客観的、批判的なものの見方をする習慣が芽生えてきます。
 
もちろん右も左もわからないような者には的確な指示を出す事が重要ですが、ある程度力が付いてきたならば「君はどう思う?」「君だったらどうする?」と声を掛ける。もし自分が考えていることと違っていれば、疑問を呈しつつ、お互いが納得できるラインを導き出し、「よし、じゃあ君の案を採用しよう」と結論付けする。そういうリーダーの姿勢が必要であり、それができるようになると、徐々に主体性が生まれてくる、そういうものだと思います。
 
客観的批判ばかりを繰り返す社員が良いか、主体的にイキイキと働く社員が良いか、それは火を見るより明らかです。そしてその違いは、自分自身の指示の仕方によって決められる。
 
「あれやっとけ」は楽ですが、理想の社員を育成するために、ひと手間かけることが大切だと思います。
 


No.206 指導

1000nen

2014/02/03 09:00:00

 
現在、私が所属する部署では、毎日日報を提出させています。具体的には、当日実施した仕事の内容とその所要時間(実際にはスケジュールから自動転記される)、加えてその日1日に感じたことや反省などを所感として記載します。
 
そしてリーダーにはできるだけコメントを書くように指導しています。先日、ちょっと面白いことがありました。これはある日のあるリーダーのある部下に対するコメントです。
 
「システムを活用いただくことを目的(ゴール)にすると「無理強い」という話になります。「お客様の成長に貢献したい」「喜んでいただきたい」ということを目的(ゴール)にすればまた違った想いになるのだと思います。」
 
そしてその翌日・・・
 
「私が考える顧客満足は仕事を通してお客様の成長に貢献することだと捉えています。私たちが提供しているサービスは本当に良いサービスです。そう信じているので多少おせっかいだと思われても私は背中を押します。お尻を叩きます。」
 
「無理強いしない」と「お尻を叩く」。全く真逆とも思えるこの2日間のアドバイス、皆さんはどうお感じになりますか?
 
リーダーは明確に「お客様のためになる事であれば」という気持ちから発していますので、そのギャップに気付きません。しかしアドバイスされた方は「じゃあ、どうすればいいの?」ということになる。
 
これはよくあることだと思います。要するに立ち位置が違っているのです。行動レベルでしか判断できない者にとっては全く真逆に見えるが、目的レベルで考えることができれば、両者に違いはない。
 
しかしリーダーは、自分の言いたいことを言うことが目的ではなく、部下に正しい行動を起こさせることが大切。彼には早速、今一度目的に立ち返って、2日間のコメントの真意を示しつつ、口頭で指導するよう伝えました。
 
今回の事象から、指導の見える化の大切さを感じると共に、自分自身も同じように自分目線で指導したつもりになっていないか、気を付けていこうと思いました。


No.207 改革

1000nen

2014/02/10 09:00:00

 
先週の金曜日、岡崎商工会議所様主催の経営者・後継者・経営幹部の方々を対象とした研修「ひとづくり塾」の第8講がありました。テーマは「リーダーシップ」で、メインの内容の一つです。
 
しかし全9講であと残り2回であるにも関わらず非常に欠席者が多く、とてもさみしい感じがしました。理由はどうやら消費増税前の駆け込み需要への対応にあるようです。一時的なものでしょうし、ある程度は仕方がないようにも思います。
 
しかし一方で、欠席された方々には一定の共通点があるように感じました。
 
ひとづくり塾では毎回、各講座で学んだことの中からそれぞれ3つずつ実践事項を掲げ、次の回まで29日間の実践を誓っていただきます。そして次講で1カ月間の活動報告をしていただくのですが、欠席された方の多くは、なかなか実践できず、「次は頑張ります」で終わってしまっていた方。
 
また参加された方の中でも、毎回どんな困難な状況であっても必ず実践してこられる方と、できない理由の列挙で終わってしまっている方がいます。それが8回目ともなりますと、成長度合いにも明らかな差が出てきていました。
 
活動報告が可能な実践期間はあと1か月しかありませんので、今回改めて次のようなお話をし、必ず実践するよう、厳しくお伝えしました。
 
・できない理由は誰にでもある。それを克服できるかどうかだけが成長できるかどうかを左右する。
・「ちょっと頑張ろう」程度の覚悟しかないから、「ちょっと難しい」ことが乗り越えられない。3%、5%の改善ではなく、倍増、半減レベルの改革を行う覚悟が必要。
・今の困難を見る前に、1年後の素晴らしい世界を想像する。それが本当に手に入れたい世界であるならば、必ず実現する。
・そしてその素晴らしい世界が実現できたとき、どれだけの人たちが幸せになるかを考える。そうすれば、何があっても気張れる。
 
最終講となる次回はメンバー全員が参加し、かつ全員が素晴らしい成果報告をしていただき、大いに美酒を酌み交わしたいと思います。


No.208 信念

1000nen

2014/02/17 09:00:00

 
昨日、「永遠の0」という映画を見てきました。開始30分で涙腺が決壊し、観終わった頃には一緒に行った社員から「目がはれてますよ」と言われるほどの水害に見舞われました。
 
何故これほどに泣けるのか、ずっと考えているのですが、明確な答えが見当たりません。頭で考えることと心で感じることは、やはりちょっと違うのかもしれません。
 
ただ岡田准一演じる宮部久藏という人物の生き様に魅力を感じていることは、間違いありません。信念を貫く生き様に人は感動し、自らの命を呈してその恩に報いようとする。言葉にしてみると薄っぺらいものですが、その上司・部下の人間関係への感動は動かしがたいものです。
 
「人を幸せにするための信念を持ち、如何なる困難も克服し、貫く」
 
そういう生き様を、私もしていきたいと強く感じました。
 
一方で、数年前、知覧特攻平和会館へ訪れた際の感動が蘇ってきました。未成年の学徒たちが残した遺書の数々。達筆で、かつ家族への愛が満ち満ちている。その方々が命を呈して守ろうとしたこの国が、彼らの期待通りの国になっているのか、それを思う時、心が押し潰されそうになります。
 
そしてこの千年経営研究会を立ち上げるきっかけとなったあの日。あの日の覚悟を今きちんと持ち続けていることができているのか!とう突きつけられたようにも思います。
 
私自身、これを機にもう一度初心を思い起こし、信念に磨きをかけ、取るべき行動を改めて見詰め直していこうと思います。
 


No.209 統合

1000nen

2014/02/24 09:00:00

 
先日、ある方から相談を受けました。
 
会長である父と社長である兄の意見が合わず、困っているとのこと。弟の彼は「何とか潤滑油になれれば良いのですが」と仰います。
 
私は「潤滑油になんてなれない」とした上で、次のようにお話ししました。
 
「それぞれが正しいと信じていることを調整することなどできない。逆に第三者が入ることで、一層隙間が生じ、ギャップが大きくなるだけ。」
 
「本当に二人の関係を良くしよう、お互いの考えを統合させようと願うならば、あなたが互いに正しいと主張していることの両方をやり切ること。両方やってみれば、それぞれのメリット・デメリット、長所・短所が見えてくる。そしてその良い点を統合するとこんなに良い結果が産まれるという実績を作ること。そのとき初めて二人の歩み寄りが始まる。」
 
更に「もっと大切なことがある」と次のように伝えました。
 
「理想の兄弟経営を実現したいと願うならば、まずあなたがお兄さんの考えを徹底的に知り尽くすこと。何もYESマンになれというのではない。自分の考えもきちんと主張しながら、「兄貴の考えは俺の考え、俺の考えは兄貴の考え」と言えるくらい徹底的に“派無し”をする。それがないから右往左往しなければならない。」
 
「性格・能力・役割は違っていていい。というより違っていることこそ望ましい。しかし考え方や価値観が違っていては、元の木阿弥。表面的なつながりではなく、本質的なつながりを持とうとする姿勢こそが大切。」
 
私は出来得るならば兄弟経営が理想と思っています。しかしそれはあくまでも価値観の共有が大前提です。
 
兄弟のみならず、経営幹部全員がそのような関係になれば鬼に金棒。
 
「価値観の共有」には何よりも「本音でぶつかる」姿勢が必要です。是非本気になって自分をさらけ出し、相手を知り尽くして、価値観の合一を目指していただきたいと思います。


No.210 気付き

1000nen

2014/03/03 09:00:00

 
先日、ある経営者の方とお会いしました。
 
3年ほど前からお付き合いが始まったその社長は、とてもワンマン。何事も自分で決めて、「これでやれ」。直ぐに動かないと「何故できないんだ」と怒鳴り散らすという典型的なタイプの方。
 
ところがお会いした時には、どうにも元気がない。どうしたのかとお尋ねすると、半数の社員が去って行ってしまったのだとか。確かに応接のある2階にいたはずの社員さんが見当たらない。その中には、NO2だったはずの方までも・・・。
 
「さすがに堪えたよ」とは、素直なお気持ちだったと思います。
 
その後、ご自身を次のように振り返られました。
 
「自分は二代目で、実力や経験で動かしていた先代とは違い、理論武装をしなければ下が付いてこないと思っていた。だから仕事が終わってから、どうしたらよいかを何時になっても考え続ける。深夜2時、3時になることもしばしば。それだけの思いをして、これで大丈夫と確信して指示を出したことを直ぐにやってくれないと、腹が立ってしょうがない。「俺がここまで考え抜いて出した正しい答えを、なんですぐにやらないんだ!」と・・・」
 
「でもそれはマスターベーションに過ぎなかった。半分以上の社員が、それも幹部と認めていた人間までもが去っていってしまった。これはもう、人のせいにできるレベルじゃない。俺が悪かったのだと、初めて気が付いた。ちょっと遅すぎたけどね・・・(苦笑)」
 
「今は残ってくれた社員と一緒になってやっていくしかない。もう深夜に考えるのは止めた。会社に出て、残ってくれた社員と一緒に考えるようにした。最初の内はビクビクしていた社員も、ようやくこの頃は口を開いてくれるようになった。夜もよく眠れる。これでやっていくしかないと、肚を括ったよ」
 
そう仰ったお顔には、少し安堵の色が浮かんでいるように感じました。
 
先週まで日経新聞「私の履歴書」に連載されていた二代目市川猿翁さんがまとめの言葉として、詩人ルイ・アラゴンの「教えるとは共に希望を語ること。学ぶとは真実を胸に刻むこと」という言葉を取り上げておられましたが、このフレーズを目にした時、真っ先に先の社長の顔が思い浮かびました。
 
きっと今日も真実を胸に刻んで希望を共に語っておられることと思います。


No.211 卒業

1000nen

2014/03/10 09:00:00

 
先週の金曜日、岡崎商工会議所様主催の「ひとづくり塾」第8期生の修了式がありました。先の豪雪による商流の麻痺と、決算期末の繁忙が重なったことが原因だったのでしょうか、欠席者が多く、これまでに比較して少々寂しい式となりましたが、それでも無事15名の受講者が卒業されていきました。
 
修了証書を受け取る受講生を見ながら、人間の知的欲求と成長意欲というものは、いくつになっても衰えないものだと、つくづく感じます。
 
開講時には斜に構えていた人も、「行ってこい」と言われてただそこに座っていただけの人も、修了証書を受け取る姿は実に凛々しい。まさにこの9カ月間の学びと実践に間違いがなかったことを証明してくれているかのようです。
 
修了式の中で、一人一人の決意表明をしていただく時間があります。それぞれが思いを込めた言葉たちは、どれも嬉しいものですが、その中でも特に喜びを感じる内容がいくつかあります。
 
一つは「チャレンジングシートをこれからも続けます」というもの。チャレンジングシートとは、月1回の講座で学んだことの中から、次回までの29日間で実践することを誓い、かつ次講の冒頭でその実践状況を発表するためのシートです。「続けます」という言葉には、毎月毎月目標を明確に持ち、その達成のための行動を明らかにし、日々実践することを誓い、また月々の反省を忘れず、次に活かしていこうという意思と意欲の現れです。とても素晴らしいことだと思います。
 
二つ目に「これからも共に学んだ仲間たちとの縁を大切にしていきます」。それだけ切磋琢磨し合ったということであり、互いに学び合ったことの証です。開講時に「外部ブレーンを作ってください」とお願いしていますが、まさにその願いが叶ったことを嬉しく思うのです。
 
最後に「次回のひとづくり塾に会社の仲間を誘います」。同じ講座を学びたいということは、共通の言語を学び、同じ思いで会社を良くしていきたいという気持ちの表れ。それだけの価値を感じてもらえたことももちろんですが、「仲間と一緒に会社を良くしていきたい」と心から思ってもらえたことそのものを嬉しく思います。
 
いずれにしろ、今回の受講生の皆さんも、概ねそのような想いを持てていただいたようで一安心しています。
 
まだ受講されておられない方は、是非第9期生にご応募ください。お待ちしております。


No.212 ひま

1000nen

2014/03/17 09:00:00

 
先週は、確定申告期間の最終週ということもあってアポイントが入らず、スケジュール帳がほぼ真っ白でした。まさに「ひま」を絵に描いたような状態・・・
 
しかし、お陰様でこれまで積み残してきたものや放置してきたことに目が行き届き、気付いてみれば、非常にすっきりした気分になっていました。
 
更に・・・。今年は年初に大規模な人事異動がありました。東京・大阪・福岡の所長が総入れ替え。それに伴い、担当エリアも大幅に見直され、これまでのデータや経験がそのままでは使えない状態にあります。大移動の混乱も相俟って、五里霧中とまではいかないまでも、私をはじめ全員が手探り状態で過ごしてきた3ヶ月間でした。
 
そんな中で与えられた「予定のない時間」と、誰も外出することなく全員雁首揃えることができたことは、とても良い機会となりました。他のメンバーも同じ思いだったようです。
 
意図せず得られたこの3日間は、まさに神様からのプレゼント。「たまにはこういう日も必要だ」と気付かせていただきました。
 
また今年から、私が管轄する大阪事務所、福岡事務所それぞれで、独自のサークル活動を行っていこうと決めていました。その名も「やっぱ好きやねん!大阪」と「博多おっしょい!(“おっしょい”とは、福岡三大祭の一つ“博多山笠”での掛け声です)」
 
実は福岡事務所には元々あり、場当たり的に、たまたま一緒にどこかに行くことはあったのですが、計画的な活動はゼロ。立ち上げから一緒のメンバーに一人加わっただけの陣容でしたから、毎日がサークル活動みたいなもので、なんだかんだと後回しになり・・・。
 
今年はメンバーも大きく入れ替わり、かつ新メンバーも加入、更には私の営業エリアが拡がってより一層事務所にいない日が増えてきていることもあり、「今年こそはやろう!」と決めていたのです。
 
しかし結局先週まではやはり手つかず状態でした。今回あり余る時間の中で、1年間のサークル活動計画を立案しました。バナナボート&バーベキュー大会あり、吹奏楽コンクールの鑑賞あり、と結構充実した内容の計画ができ、今からとても楽しみです。
 
「何も予定しない」じっくり考える時間を意識的に設けること、そして社員とのコミュニケーションの場を計画的に設けることを、忘れないで続けていきたいと思います。


No.213 箴言

1000nen

2014/03/24 09:00:00

 
先週は、大阪・神戸・岡山・広島と、山陽新幹線のぞみ停車駅を日替わりでセミナー講師を務めてきました。同じ内容の話を4日連続するのは私自身初めてでしたが、さすがに疲れました(苦笑)。
 
参加者はそれほど多くなく、各会場10名程度でしたが、何とかほとんどの方に5段階評価のアンケートにて「5(とても参考になった)」ないしは「4(参考になった)」のご評価をいただくことができましたが、お一人だけ「2(あまり参考にならなかった)」に○が・・・
 
それも既存のお客様。通常、お客様の場合、多少遠慮とお気遣いがあって、一つ二つ上のご評価をいただけるもの。それが「2」ということは、よほど参考にならなかったのか、相当のご立腹だったのか・・・
 
青ざめた私は、早速担当者に連絡し、原因を尋ねてもらったところ、「期待する内容と違っていた」とのこと。
 
この点については少々講師泣かせ。もし具体的な期待内容が明らかであるならば、事前にお伝えいただければ対応できることもありますし、また、よほど異なっていれば、事前にその旨お伝えすることもできる。もし皆さんもそのようなときは、事前にお聴かせくださいね。
 
恨み節はこれくらいにして・・・
 
「いろいろと調べたり話を聞いたりすることがお好きな方。今回のお話はすでに知っていることが多かったのでは」という担当者評のその方が具体的に期待されていた内容は、確かに魅力的で、話にもっとふくらみが出るであろうものでした。
 
実際、よりよいセミナーにしていくためにはこういう声が大切で、かつとても貴重なもの。誰だって嫌われたくない。本心に反して高得点をつけてお茶を濁すこともできたはず。にもかかわらず、あえて「2」をつけてくださった。そのこと自体に感謝しなければなりません。
 
一つ救われたのは、これまで知っていながら実践できていなかったこともおありだったようで、結果的には「行って良かった」といっていただけたとのこと。担当者からも感謝され、一安心。
 
今回のご指摘を真摯に受け止め、次回以降のセミナーに活かしていきたいと思います。


No.214 助言

1000nen

2014/03/31 09:00:00

先日ご契約をいただいた公認会計士の先生からお聴きしたお話が興味深いものでしたので、ここでご紹介したいと思います。
 
58歳になられるその先生は二代目。訳あって30歳で承継した先生は、当時数名だった事務所を「たぶん、地域NO1」といわれるだけの規模にされ、それに見合うだけの実績を残されています。
 
進学進級の季節ということもあり、また事前にニュートップリーダーの「事業承継の王道」の原稿をお渡ししていたこともあって、話は自然にご子息のことに。
 
先生のお子様は男の子お二人。長男さんは私立で雌雄を争う大学の理工、次男さんは難関国立大学の経済。お二人とも「我が子ながらとても優秀」。
 
そこで子育ての秘訣をお伺いしたところ、次のような答えが返ってきました。
 
「人間をやって20年未満の者に、自分自身何がやりたいとか、何が向いているなんてわかるはずがない。30年、40年の経験があって、客観的にものごとを捉えることができる人間が、その子の特性を掴んで、誘導してやることが一番。」
 
「それもやらされ感があってはいけない。羊飼いのように、なんとなくそれが当たり前のようにしていくことが大切。」
 
「洗脳と忌み嫌う人もいるが、それが彼らにとって悪い結果をもたらしているのであればだめだけど、そうとは思えない。自分の特性を信じ、自ら選び、自ら掴み取った大学で、活き活きと勉強している。」
 
「逆にそれが親として最も大切な役割であり、子育ての秘訣でもあると思う」という先生は、最後に「どうも二人ともうちを継ぎたいそうだ」とニヤリ。個性が全く異なる兄弟経営に、夢を馳せていらっしゃるようです。
 
親が見込んだ子の特性・役割を、子が喜んで受け入れ伸ばしていく。千年経営において、とても重要なことであるとともに、親をトップ・リーダーに、子を社員・部下に置き換えれば、社員教育においてもとても大切な視点だと思います。


No.215 周年

1000nen

2014/04/07 09:00:00

 
先週の土曜日、私が入社して初めて担当させていただいた会社の40周年記念パーティーに招待され、参列させていただきました。
 
私が担当させていただいた当時は確か80名程度。しかし今は全社員1,800名になるまでに成長されており、東急ホテルの大広間を貸し切った会場は、「どれだけ採用しても足りない」ほどの忙しさの中、休日出勤者を除く1300名の社員と30名程度の来賓で埋め尽くされ、それはそれは盛大なものでした。
 
この会社は5年に一度、周年パーティーを行われており、私もこれ5回目の参列となりますが、社員にとってこのイベントの大切さを毎回感じさせられます。
 
確実に増えていく社員は、会社の成長を実感させてくれます。
 
毎回流される、創業以来の歴史を振り返る、時々の記念写真をまとめた映像は、懐かしさと、苦難を乗り越えてきた誇りと、共に理想を目指し、達成してきた喜びを思い起こさせてくれます。
 
社員による和太鼓演奏は、それはそれは盛り上がり、社員の一致団結の姿を見させてもらえます。
 
永年勤続者表彰を受けた人の代表者の決意表明は、決して作られた言葉ではなく、本当に次の45周年、50周年へ向けて、よりよい会社を自ら作っていくんだという気持ちを感じさせてもらえます。
 
社長から一人ひとり声を掛けられて渡される記念品は、「またがんばっていこう!」という意思と意欲を駆り立ててくれるものだと思います。
 
いずれにしろ周年行事は、社員にとっての価値は絶大。些細なもので構わない、お金を掛けなくても構わない。節目を大切にする姿勢は、千年経営にとって、とっても重要なことだと思います。
 
 


No.216 親心

1000nen

2014/04/14 09:00:00

 
先日お伺いした会社の社長は80歳で、ご子息の後継予定者の専務は50半ば。完璧な「老-老承継」企業でした。
 
担当者から聴いていたのは、専務がいろいろと新たな取り組みをしようとしているのを、社長があれこれと理由をつけて取り入れようとしない、といったものでした。
 
今回も、専務とお話をする予定でお伺いしたところ、たまたまいらっしゃった社長が顔をお出しになった。数分後には独壇場になったその社長のお話は、事前に聴いていた印象とは少々異なっていました。
 
もちろん創業者によく見られるワンマン的な要素はお持ちですが、決して人の話を頭ごなしに否定される訳でもなく、会話中も専務の意見を尊重されているように思えました。
 
ただ確かにお二人が考えられている方向性は少々異なっているようで、余程“派無し”合わないといけないことは明白でした。
 
一方で、あくまでも私が受けた印象ですが、社長がお持ちの方向性は、「どうしたら息子が社長として、社員からもお客様からも取引先様からも受け入れてもらえるか?」と視点で考えられているように思えました。
 
話しの端々に現れる、そう受け取れる発言に、「いくつになっても親は親だなぁ」とつくづくと感じながら耳を傾けておりました。
 
とても残念なことですが、たぶんこのお二人はこれまで、お互いに気を使いながらも歩み寄ることをしてこなかったために、ここまできてしまったのだろうと思います。このことは私たちも他山の石として自らを省みる必要があるように思います。
 
帰り際、私一人が社長に呼び止められ、「どうぞ息子をよろしくお願いします」と仰って、頭をお下げになりました。
 
少々ハードルは高いですが、20代前半のお孫さんも視野に入れながら、子を思うその親心に、何とか応えていきたいと思います。


No.217 健康

1000nen

2014/04/21 09:00:00

 
先日、健康道場コスモポート主宰の吉丸房江先生のお話をお聴きして来ました。
http://www.cosmoport.jp/
 
コスモポートの酵素温浴は、博多で不健康な生活を送る私の唯一の健康法であり、くつろぎのひと時でもあります。博多にお越しの際は、ぜひご一緒しましょう。
 
博多に来て二年半、吉丸先生とは何度かお会いしていましたが、今回はじめて健康についてじっくりとお話を聴く機会に恵まれました。その内容を皆さんにもお裾分けしたいと思います。
 
・あたたかさが大切。植物も暖かくないと芽が出ない。体を温めることも大切だが、心の温度をあたたかくすることがもっと大切。健康の秘訣は、「素直で、明るく、あたたかく」。
・人は心に三匹の「たい」を飼っている。「認められたい」「褒められたい」「誰かのためにしてあげたい」。あたたかい心で、「誰かのためにしてあげたい」という気持ちが芽生えるまで、認めてあげること、褒めてあげること。
・神様は喜びしか与えていない。元気が当たり前。病気になることの方が普通じゃない。病気になる人は、わざわざ難しいことを考えている人。
・癌になる人は、責任感・正義感が強い人、人に任せられない人、真面目で正直な人。ちゃらんぽらんなひとは癌にならない。人生はワルツが必要。「興奮」→「緊張」→「緩み」を繰り返すことが大切。緩みのない人が病気になる。
・笑うと13本の神経が活動し、快ホルモンが分泌される。それだけで健康になる。腹を立てると47本の神経が突き刺さる。
・大げさに感謝し、大声で笑うと元気が沸いてくる。自分に合った薬などどこにもない。自分に合った薬は自分で作るしかない。それが笑うこと。
・胃と腸の調子がいいのが一番。「いいちょうし」
・体の免疫力を高めるには、肌に気持ちのよいことをする。着るものは、お日様で乾した服。木漏れ日も最高。
・健康になりたいならホレホレ大学に入学する。まずは自分自身にほれる。自分にほれれば、両親やご先祖様にもほれることができるようになる。第二に連れ合いにほれる。配偶者だけでなく、一緒に仕事をしている仲間にもほれる。第三に仕事にほれる。「ほれて通えば千里も一里」。仕事がうまくいかないのは、ほれ方が足りないだけ。
 
いかがでしょうか?「健康」という範疇を越え、人生そのものの教訓に溢れた3時間に亘るお話は、とっても有意義なものでした。ぜひ皆さんもこれらの言葉を噛み締め、味わって、健康な日々を送っていってください。千年経営の前提は、健康にあるのですから。
 


No.218 粉飾

1000nen

2014/04/28 09:00:00

 
先日お伺いした税理士事務所さんで、粉飾の話で盛り上がりました。その先生が引き受けた経営改善計画書作成のお手伝いをした先が5年間に亘って粉飾をしていて、まずはその洗い出しに苦労した、という話がきっかけです。
 
私は常々「粉飾だけはしてはいけない」とお話しています。「粉飾する経営者は経営者失格」と厳しく戒めます。
 
その理由は、第一に、粉飾は信頼をしてくださっている方々への裏切り行為だからです。お客様、仕入先様、協力業者の方々、そして金融機関様・・・信頼をしてくださっている方々に嘘をつき、信頼を裏切る。そんな行為が許される訳はありません。
 
第二に、好ましい経営からの逃亡行為だからです。決算書は経営者の通信簿。そこに経営者の資質と能力が反映されるのは間違いありません。だからこそ経営者は、必死になって好ましい結果を出すことに尽力をするのです。それを、好ましい結果が出なかったからといって粉飾をして誤魔化す。そんな行為が許される訳はありません。
 
更に粉飾は麻薬と一緒、一度手を出すと、なかなか抜けることができません。「今回だけ」は絵に描いた餅に等しい。最初はばれないかどうか、どきどきしながら日々を暮らすことになりますが、誰も何も言わなければ「このままいけるのではないか?」と勘違いをし始める。そのうち神経が麻痺し、冒頭の会社のように抜き差しならない状況に陥るまで、何の罪悪感も感じなくなってしまう。そういう危険性を孕んでいるのです。
 
そうはいっても、私自身同じような状況に立たされたとき、「絶対にしないか」と問われれば自信はありません。誰でも陥る可能性はあると思うのです。だからこそ経営者にとって最も大切なことは「嘘をつかない」「信頼を裏切らない」「問題から逃げない」という強い気持ちを持ち続けることだと思います。
 
また、もし既にしてしまっている会社があれば、今すぐに心からの反省をしていただき、贖罪の気持ちを強く持って、改革に着手していただきたい。
 
過去において、粉飾をしていた会社とお付き合いをしたことがあります。その中で、その行為を恥、悔い、詫び、即座に改革に着手した会社は、その後間違いなく回復を実現しておられます。しかしそうでない会社は、今この世にない・・・。
 
「粉飾は絶対にしない」これを機に、強く心に念じていただきたいと思います。


No.219 言動

1000nen

2014/05/05 09:00:00

 
先日、ある会社で社員研修を実施しました。1時間ほどの研修の後、食事を取りながら質疑応答の時間を設けていただきました。
 
「俺がいるとみんなしゃべらない。別室にいるから、いろいろ聴いてやって欲しい」ということで、「お前ら、ちゃんと聴いとけよ」と出て行かれた社長。その期待は、残念ながら社長不在でも叶えられることはありませんでした。
 
参加者は約半数の10数名。一人を除いて、自ら質問される方はいませんでした。私からの問い掛けに答えていただける方も後二名のみ。それ以外の方は、うなずくともなく、ただ「そこにいる」という状況でした。
 
社員さんにお会いしたのは今回が初めてでしたが、この状況はある程度想像できていました。その理由は、それまでの社長の、職員さんを小馬鹿にするような発言。
 
社長自身、そんなに悪い方ではありません。本音で社員さんを馬鹿にしているとも思えない。ただ「口が悪い」。これはとってももったいない話だと思います。
 
私は常々、「トップは役者でなければならない」とお話しています。どんなに腹が立っていても、ときに笑って指導しなければならないときがある。腹の中では笑っていても、ときに厳しく叱責しなければならないときがある。社員さんの成長のためであれば、それくらいのことができないといけない。
 
しかしこの社長の言動は全く逆効果。
 
では何故、このような発言が平気でできるのか?それは「この会社は自分の才覚で成り立っている」といったようなおごりにあると思います。
 
おごりがあると、周囲への感謝の気持ちが失われます。感謝の気持ちがあれば決して出ることのない心無い言葉の数々は、社員さんの心を傷つけ、言葉を失わせる。
 
トップは常に、自分の言動が社内にどのような影響を及ぼすかを考えなければなりません。「何故そんなに気を使わなければならないのか?」それは社員さんの力を借りてしか、トップとしての仕事ができないからです。逆に言えば、自らの言動で、社員さんの力はゼロにもなるし、百倍にもなる。
 
トップはそのことを十二分に心して、日ごろの言動に気をつけるべきだと思います。


No.220 議論

1000nen

2014/05/12 09:00:00

 
先週、当社の役員会が開催されたのですが、毎回活発な議論が展開されます。なぜならば、面白いほど意見が食い違うからです(笑)。
 
当社は、コンサル、システム、営業、開発など、さまざまな部隊から成り立っています。また同じコンサル部隊でも専門分野が分かれており、性格の違いに加え、これらの出身母体の違いによって大事にしているポイントが異なっているのです。
 
もちろん「自利利他」という基本理念が共有されているため、最終的にはうまく落ち着くのですが、ゴールに行き着くまでにはまさに百花繚乱の如き意見が出されます。
 
私はこの会議が大好きです。
 
意見が出されるのは、
①    みんな会社が大好きで、みんながもっと良くしていきたいと強く願っているから。
②    お互いに本音をぶつけても構わないという信頼と安心を感じているから(特にトップに聴く耳があることが大きい)。
③    たとえ当初の自分の意見と違っていても、一度決めたら絶対にやりぬくんだという責任感をみんなが持っているから。
だと思います。そういう仲間と仕事ができていることそのものがありがたいと思います。
 
「うちの会社では意見が出ない」という話をよくお聴きします。ぜひ上記の3つのポイントの何が不足しているかを考えていただくと良いと思います。
 
たぶん①は大丈夫ではないでしょうか?②が不足するなら、前回のコラムをお読みいただき、自らの言動を振り返っていただきたいと思います。
 
また、②を実現するにはヒーローがいると話が早いと思います。みんなが下を向いてトップの話を聞くばかりの中で勇気を持って意見を言う。「私も少しよろしいですか?」という他のメンバーが出てくるまで、勇気を持って意見を言い続ける。そういうヒーローです。
 
最初は一人で十分です。これはと見込んだメンバーに根回ししてでも発言をしてもらう。そういう演出も必要だと思います。
 
そのような取り組みの中で自由闊達な意見交換ができるようになったとき、③は自ずとでてくるもののように思います。


No.221 立腹

1000nen

2014/05/19 09:00:00

 
先日、ある講演で、人間の煩悩についての話をお聴きしました。仏教の経典から紐解かれるその話の中で、人の心を蝕む最もよろしくない煩悩として「三毒」の説明がありました。
貪欲(とんよく) :欲望に任せて執着し、むさぼること 
瞋恚(しんい)  :怒ること、憤ること
愚痴(ぐち)   :一切の道理にくらいこと、心の迷い
 
お話を聴いているうちは、「確かにそうだな」程度の、客観的な受け止め方しかできていなかったのですが、そのうち、自分の中に潜む最も忌むべき煩悩が姿を現してきました。
 
とても良いお話を聴きながら、いびきを掻く、何かをいじり物音を立てる。そんな人たちに対して湧き上がる怒り。何度も何度も沸き起こるその感情が感知されたとき、私は慄くほどのショックを受けました。
 
私はまさに三毒の中にいる。
 
そう受け止めたとき、貪欲の深さ、愚痴の多さもふつふつと思い出されてくる。何とも言えない絶望感の中、さらに追い討ちを掛けるように、先生からの一言が・・
 
「結局、自分を苦しめているのは自分」
 
自分で言うのも変ですが、正直、怒りを面に出す回数は、以前と比べればかなり減ってきているとは思います。だから自分の中に誤解があった。怒りの感情そのものが減ってきているのではないかと。
 
しかし今回、決してそうではなかったのだと気付くことができました。減っているのではなく、表面に出なくなっただけ。しかし怒りそのものをなくさなければ、自分自身の苦しみはなくならない。
 
自力でできることには、もしかすると限界があるのかもしれません。また怒りそのものをなくすことなどできないかもしれない。しかし少しずつでも瞋恚の煩悩を消していけることがあるのならやっていきたい。出さないようにするのではなく、消していくために・・・
 
私は今回の気付きを通じ、
 
「腹が立つ 狭き心に腹が立つ 一息入れて笑顔さやかに」
 
を心掛けていこうと決めました。そうでない私を発見されましたら、是非ご遠慮なくご指摘ください。笑って受け止めさせていただきます。但し、一呼吸いただく場合がありますのでご容赦ください。


No.222 変化

1000nen

2014/06/02 09:00:00

 
今私は、会計事務所向けのシステムを提供し、その活用サポートをさせていただいていますが、先月から一部の担当先の引継ぎを始めました。その訪問先の中にシステムの活用が全く進まず、私たちの表現で「退会懸念先」という先がありました。
 
前回の訪問は3年前。そのときの先生は、職員さんやお客様に対する不平不満、事務所運営が思い通り行かない愚痴ぼやきばかり。かといって何か対策を打つともなく、当社のシステムを導入されている意味さえ疑問に感じるほどでした。
 
それでもその後、活用促進のために何度かご連絡をさせていただいたのですが、なかなか訪問させていただくことさえできずにいました。
 
しかし今回、少々強引にアポ入れし訪問してみると、全くの別人。職員さんへの労いの言葉から始まり、これからどういう事務所運営をしていきたいかを熱く語っていただきました。その中で、全く使っていただけていなかった当社システムも「これからどんどん使っていきたい」と嬉しい言葉が・・・。
 
それまでは募集を掛ければある程度採用できていたものが、このところよい人材に恵まれず、結局既存の職員さんに負担がのしかかっている。その中で文句も言わず仕事をしてくれる職員さんに対してにわかに感謝の気持ちが生まれてきたのだとか。
 
「人って本当に変われるんだなぁ~」とつくづく感じました。
 
同行した次期担当者も、私が残していた報告書や事前の打ち合わせの内容から少々躊躇していましたが、このような状態で引き継げる喜びを隠しませんでした。
 
私もとても嬉しかったのですが、その一方で大きく反省もしました。
 
今回は引き継ぎというテーマがあったので少々強引にアポ入れしたのですが、これまでも同じような方法でアポ入れしていれば、もしかしたら訪問できていたかもしれません。しかし私の中で、「あまり好ましくないお客様」というレッテルを貼っていたがために、訪問を断れることにホッとしていた自分がいました。
 
そんな思い込みをなくし、もう少し早く訪問することができていたら、もっと早くお手伝いさせていただくことができたかもしれない。
 
「人は一瞬にして変わることができず。思い込みや決め付けで、可能性を潰さない」
 
そのことを改めて心に誓うことができた出来事でした。


No.223 指導

1000nen

2014/06/09 09:00:00

 
先日の千年経営研究会の月例会で、ジェネレーションギャップについての話が出ました。ある参加者から出された、「話が通じない若手社員がいる」という悩みからの展開でした。
 
さまざまな意見の交換がありましたが、最終的には、次のようにまとめられました。
 
1.ジェネレーションギャップはいつの時代もある。
 ジェネレーションギャップは何千年も前から存在している。それが理由で伝わらないということはあり得ない。ジェネレーションギャップという言葉を使うことで、伝える側が楽をしているだけ。必ず伝わると信じて伝え続ける。
 
2.共通の認識を見つけて、突破口とする。
 人は誰しも、生い立ちも、経験も、生まれ育った環境も違う。しかし人間である以上、「通じる話」は必ずある。その共通点を突破口として、伝えたいことを伝えていく。
 
3.14回言えば、必ず伝わる。
 「聴」という字は、「耳から14回入れば心に届く」と書く。14回伝えれば必ず伝わると信じて伝え続ける。通常、14回も言わなくても伝わるもの。そうすると、これまで「わかって当たり前、わからなかったら馬鹿野郎!」だったものが、「わからなくて当たり前、わかってくれたらありがとう!」に変わり、人間関係もより好ましいものになる。
 
4.指導記録をつける。
 いつ、どんな問題が起こり、それに対してどのように指導し、どのような変化が見られたかを丁寧に記録する。そうすれば指導上の問題点が見出しやすくなるし、指導に対する真剣みが増す。結果は、徐々に変化が実感できるようになるか、耐え切れずに辞めていく。
 
5.世代の共通点は理解する。
 世代間のキャップではなく、世代の共通点はある。その共通点を把握することで、一人の指導実績が、複数人に対する指導に役立っていく。
 
6.指導ポイントは絞り込む。
 改善して欲しい点は複数あるが、あれもこれもと欲張らず、「これだけはどうしてもわかって欲しい」ことに絞り込むことが大切。他の問題は笑い流しても、その点だけはしつこく、何度でも、できるようになるまで、厳しく言い続ける。こちらの本気度をわからせる。
 
いかがでしたでしょうか?まとめるとこんな感じになりますが、会って話をすると、文字面ではわからないものがあります。聴きたいこと、知りたいこと、解決したい悩みがあったら、やはりきちんと足を運ぶことが大切です。次回の月例会には、多くの方のご参加をお待ちしております。


No.224 ES

1000nen

2014/06/16 09:00:00

 
私どもでは今、会計事務所向けのシステムを提供していますが、先日私の担当先から解約の申し出がありました。昨年退職した社員から引き継いだ先で、あまりご利用が進んでいないことはわかっていましたが、福岡から5時間、そのエリアには1件だけ、という状況で、引継ぎ後半年を経過していたにも関わらず、ついついフォローの先延ばしをしてしまっていました。
 
引き止めるべきか、このまま解約をお受けするか、大いに迷いましたが、これから十分なフォローができるかどうかを自分に問うた時、難しいという判断に至り、先方にご連絡をし、十分なお手伝いができなかったことをお詫びして、解約届をお送りする旨、お伝えしました。
 
早速本社に連絡を取り、解約届を郵送してもらうようにお願いしたのですが、電話を取った子の声が、少々嬉しそうにも聞こえ、その理由を尋ねると、言い難そうに口篭る。ピンと来た私は「もしかしたら苦労してた先?」と水を向けると、「正直、ニヤッとしてしまいました」とのこと。
 
とにかく口うるさい先生で、サポートメンバーは閉口していたのだとか。その後、彼女たちの上司に確認をしてみても「大変でした」と。
 
今回の件では、私自身のフォローに対する姿勢には問題がありました。大いに反省し、早速フォロー計画の見直しを実施しました。
 
また解約はイコール売上減少を意味します。決して望ましい状態とはいえません。
 
しかし私は、社員に苦を強いるような売上ならない方がまし、だと思います。それが社員の成長に何ら寄与しないものであれば尚更です。そんな苦労をするくらいなら、新しい売上を上げるための苦労の方が圧倒的に楽しい。そう思うのです。
 
「CS(顧客満足)よりES(社員満足)が先」
 
当社の創業者・佐藤澄男が常に口にしていた言葉を思い出しました。今回の件を通じて改めてその大切さを噛み締め、仕事のありようを見直ししていきたいと思います。


No.225 広告

1000nen

2014/06/23 09:00:00

 
4月21日号のこのコラムでご紹介した「健康道場コスモポート」に、社員を連れて行ってきました。というと、半ば強引に誘ったように思われるかもしれませんが、前回のコラムの内容を聴いた社員の「是非行ってみたい!」との声に押されて、仕方なくお連れした次第。
 
残念ながら「今月行ける日は今日しかなかった」この日、吉丸先生は東京出張で不在。できれば社員にも聴かせてやりたかったお話は、次回への持越しとなりました。
 
しかしそのおかげで、改めてこの“場”の凄さを知ることとなりました。
 
風呂上り、キョロキョロする社員を見て、同じように温浴に来た方々が、次々と話し掛けて来られます。いつもであれば吉丸先生の話をお聴きするその時間、ここに来るようになってどんなに重い症状だったのが良くなったかを、何だか自慢げにお話になるのです。またご自身の話かと思ってきいていると、実はそこで知り合った方の“手柄話”だったり・・・
 
いずれにしろ、皆さんが「だからあなたたちもちゃんと通いなさい」と、この“場”の主宰者の代弁者となって熱く語られるのです。
 
そのとき私は、「ああ、これこそが本当の広告だ」と感じました。始めて会った人に通う必要を説く、そういった“広く告げる”存在がいる。まさにこの存在こそが“広告”の真の姿だと、感じたのです。本物の広告は、お金が掛からない。それどころか、お金を払う人たちが喜んでその役割を担ってくれる・・・
 
話が五泊六日の宿泊コースに至ったときには、驚き倍増。来年の2月まで予約で埋まっているということ。それも税理士事務所が忙しい2・3月を外せば、来年の6月まで既に満員御礼なのだそうで・・・そんな話は吉丸先生からは一度たりとて聴いたことがない。
 
「売るつもりがないのに売れていく」
 
これが真の事業のありようではないかと感じました。事業は、「求める人に、求めるモノを、求める方法で」提供すれば、売ろうと思わなくったって、売れないはずがない。
 
一方多くの中小企業で「提供できる力はあるものの気付いてもらえない」こともまた多い。そのハザマを埋めてくれるのが、この“広く伝える”人たちの存在だと思います。
 
特に提供時間に限りのあるコスモポートの場合、紹介すればするほど、自分たちがその機会を奪われていくことはわかっているのに、紹介したい気持ちを抑えられない。
 
そんな事業にすることができたら、どんなに素晴らしいことでしょう。
 
それを37年間も続けておられることに心から尊敬の念を感じると共に、いつかそのような事業を現実のものとしたいと、私自身が念願せざるを得ませんでした。


No.226 イク○○

1000nen

2014/06/30 09:00:00

 
みなさんは「イクジイ」「イクバア」という言葉をご存知ですか?私も知らなかったのですが、育児を担ってもらう祖父母のことであり、働く女性を支援する古くて新しい方向性を示す言葉のようです。
 
実はこのところ、祖父母による孫の教育について、何かと触れる機会がありました。先日も株式会社ハートランド総研から送られてくる「陶冶会レポート」に記載された、帝塚山大学名誉教授・伊原吉之助氏の文章が目に留まりました。
 
「祖父母は家庭内の世間の目、家庭と社会を繋ぐ存在です。躾とは、子供が成長と共に身に着ける秩序感覚であり、他人との付き合い方の基本です。子供の躾は若い父母には難しい。叱る一方なので躾が偏る上、父母は家庭では気楽に振る舞い、子供の手本になりにくい。その点、祖父母は「家庭内の世間の目」ですから、父母も自然と身を慎みますし、孫を第三者の目で見て褒める余裕もあります。」
 
「祖父母は人生経験豊かで生活の智恵がたっぷりあり、日常生活の中で折に触れてそれを孫に伝授します。祖父母が孫を訓育感化すると、孫はまともな日本人に育ちます。人生経験未熟な若い父母では、子供は日本人らしい発想法や行動様式が十分身につきません。」
 
子育てをして早18年になりますが、なるほどと思うところです。
 
一方で、このところ高齢者の素行に目に余るものがあるのも事実。孫という「家庭内の目」がなくなっていることが原因なのかもしれません。
 
いずれにしろ、三世代同居、とまではいかないまでも、「イクジイ」「イクバア」の価値は今一度見詰め直す必要があるように思います。
 
特に同属企業においては、社長という経営者としての修行時代を見事に全うし、優れた経営者として内外に認められ、かつ時間的にも気持ち的にも余裕がある先代が、次々代の後継者である孫を育てる価値は、一般家庭の何倍、何十倍も価値があります。
 
後継者教育の最重要課題の一つとして、「イクジイ」「イクバア」の効用をご検討いただくことをお勧め致します。
 
 


No.227 ひとづくり

1000nen

2014/07/07 09:00:00

 
先週から、岡崎商工会議所様主催の「ひとづくり塾」第9期生が受講生21名でスタートしました。「経営管理者育成」を標榜するこの講座、第1回目が開催されたときは、まさかこれほどまでに続くとは、正直思っておりませんでした。長くて3年、もしかすると1回こっきりかも、と思われていました。
 
しかしふたを開けてみればもう9回。集客に奔走された岡崎諸侯会議所様には頭が下がる思いが致します。
 
今回の参加者には、いくつかの特徴があります。一つは、17社21名のうち、10社13名が過去に参加経験がある会社からのご参加であること。「同じ内容の研修を受講することは、社内に共通の言語を作ること」とお伝えしていますが、そのことが徐々に理解をしていただけている証しと、とても嬉しく思います。
 
二つ目に、既に後継することが決まっている人が3名、それ以外に現社長や後継予定者の親族が5名、計8名が同族経営に関わる方であるということ。
 
先日サントリーの新社長に指名された現ローソン会長の新浪氏が、インタビューで「今のようなスピードの速い環境下では、同族経営がベスト」という主旨の話をされていましたが、私も全く同感です。特にサントリーには、鳥井信宏という直系の後継者候補がグループ内(サントリー食品インターナショナル社長)におられますから、なおさら。「私が育てます」との新浪氏の言葉に、強い決意が感じられました。
 
最後に、参加17社のうち、実に11社の経営者、経営幹部の方が、当日開催された開講式に参列されたこと。私の記憶が正しければ、過去最高だと思います。派遣された後継者、経営幹部の皆さんの成長への期待の高さに、気が引き締まる思いが致しました。
 
開講式では、受講生の皆さんの参加に向けた決意発表があります。お一人お一人の偽りなき決意をお聴きする中で、新浪氏とまではいかないまでも、お預かりした後継者、後継幹部の皆さんの成長の一助になればと、意を強くした次第です。
 
既に来期の実施も決定しております。よろしければ皆さんもひとづくり塾・第10期にご参加ください。お待ちしております。


No.228 中間検討会

1000nen

2014/07/14 09:21:00

 
12月決算の当社では、毎年7月に中間検討会なるものを全社員参加で開催します。上半期の計画進捗状況と下半期における重点活動事項などが発表されるのです。
 
税務・法務・労務・経営コンサル・M&A・FP・不動産などと複数の業種にまたがる当社では、お互いのやっている仕事や状況はわからないことが多いもの。このイベントが、他部門の活動状況を知ることができる最高の機会なのです。私は毎年この日をとても楽しみにしています。
 
今年も七夕の日に中間検討会が開催されました。社長挨拶に続けて各部門長から報告があったのですが、どの部署の発表も、業績目標達成のためにあらゆる工夫をし、最大の努力をしている姿が目に浮かぶもので、とても頼もしく、そして嬉しく感じるものばかりでした。
 
少し話はさかのぼりますが、私が入社した平成元年、社員数はまだ100名に至らず、ひとつのビルに肩寄せ合って仕事をしておりました。その頃は階段を一つ上がれば社労士が、一つ下がれば行政書士が、と、常に他部署のメンバーと直に触れ合うことができていました。
 
しかしその後、社員数の増加と共に離れ離れになっていき、昨年には実に8箇所16フロアに枝分かれし、物理的な距離感が精神的な距離感に繋がっていくような寂しさがありました。3年ほど前、会社への要望をヒアリングしたところ、第1位が「全社員が一つの場所で仕事ができること」でした。みんなが同じ思いであったことを痛感させられました。
 
その思いが余程強かったのでしょうか、ヒアリング実施から3年、ご縁があって今のビルと出会い、無事に移転・集約することができました。移転が発表されたときには全社員大いに喜び、より一層コミュニケーションを豊かにしていこうと誓い合いました。
 
しかし物理的距離感をなくしたからといって、それだけでは不足をしていました。「一箇所に集まればお互いのことをもっと知ることができる」そんな思いで集合したのですが、実際は目の前の仕事に没頭せざるを得ず、場所を一にするだけでは他部署の状況をつぶさに知ることまでは困難だったのです。
 
そんな複雑な思いが交錯する中で開催された今回の中間検討会。終了後「そういう取り組みをするならうちも協力できるよ」とか「ぜひ具体的な取り組み内容を教えて欲しい」などといった会話が行き交っていました。移転後1年を経過して、改めてこの会の重要さを感じることができました。
 
「目の前にいるからわかっている」と思いがちですが、意外と知らないことが多いもの。みなさんもお互いの活動を発表し合う機会を設けられてはいかがでしょうか?


No.229 複眼

1000nen

2014/07/21 09:00:00

 
 昨年末に退職者が出たこともあり、今年に入り、担当先の見直しを行いました。順次引継訪問をしているのですが、そのたびに複眼の価値を感じます。
 
 当社ではお客様訪問後3営業日以内に報告書を提出するというルールがあります。結構厳格に運用されており、ルールを守らない者は厳しく指導・叱責されます。入社時の研修でも、次のように繰り返し厳守するようにと伝えます。
 
「上司は報告によってしか仕事の状況を把握できないし、組織の動きや問題点を掴むこともできない。また的確な指導を行うこともできない。」
「正しい報告がなされて初めて組織はその進路を正しく維持でき、かつ人は正しく成長し続けることができ、更にお客様に対する最大のご満足を提供し続けることができる。」
「報告こそ、組織を守り、自分を育て、お客様のご満足を得る要である。」
 
 さて、前担当者がきちんと残してくれた報告書を読んでから、引継先を訪れるのですが、目線が違うとこれほど違うものかと驚くことがあります。
 
「十分ご満足いただけている」はずの先が「退会を考えていた」とか、「退会の恐れがある」はずの先が「もっと活用していきたい」だったり・・・
 
 この差異は、決して個人的な能力の問題ではなく、「見方の違い」にあると思います。人はその「個性」と「経験」、そして指導を受けた「上司」の影響を受けて、オリジナルの「アンテナ」を構築します。よって発信源は同じでも、受信側のアンテナによって受け止め方が違ってくる。
 
 もちろん経験量によってそのアンテナの受信エリアは広がっていきますが、残念ながらフルカバーはできない。だから複数の人間が関わることが大切なのだと思います。
 
 担当者を替えることは勇気がいることですが、定期的な担当変更は不正防止のみならず、お客様満足の向上、社員の育成にも効果的であると思います。
 
 担当変更できるだけの社員がいない、との声も聞こえてきそうですが、定期的に上司が訪問することはできます。また当社では、開発担当者がフォロー担当者と共にお客様を訪問することがあります。これも複眼効果を発揮する有効な方法です。日ごろお客様に接することができない社員さんにその機会を与えることにも価値がある。
 
 複眼効果、一度検討してみてはいかがでしょうか?


No.230 因果

1000nen

2014/07/28 09:00:00

 
先週の金曜日、5件のアポイントが入っていたのですが、そのうちなんと2件が「ドタキャン」。否、事前にキャンセルの連絡を受けていればまだ良いのですが、2件ともが「訪問したらおられなかった」。
 
実は(どこかとは言いませんが)この県ではよくあること。私の正直な気持ちは「またか」でした。県民性というのでしょうか?アポ入れをしながら、「またあの悲しい気持ちにさせられるのではないか?」と自然とため息が出てしまう県なのです。
 
そんな思いでいたところ、昨日、ある勉強会に参加してきました。仏教をベースにしたお話をいただけるところなのですが、まさに私のために開かれたのではないか、と思うほどのないようでした。テーマは「因果の法則」。
 
開始間もなく、僧侶から次のような質問がありました。
 
「たとえば皆さんが道路を車で走っていたとします。あなたが青信号を通過しようとしたら、横から赤信号を無視して突っ込んできた車とぶつかってしまいました。さてこの結果の原因は何でしょう?」
 
もちろん私の頭に浮かんだ答えは「赤信号を無視して突っ込んできた相手」でした。
 
ところが僧侶の答えは、「たとえ赤信号を無視して突っ込んできた車があったとしても、数秒後、ないしは数秒前に通過していればぶつかることはなかった。その時間に通過する因縁があった。原因はあなたにある」と。
 
仏教における「因果」とは、自分で蒔いた種は、必ず自分に結果が現れる。言い方を変えるなら「この世の中に何一つ人のせいはない」と教えていただきました。
 
「ドタキャンされるのはなぜか?」そう自問自答し、自らの行いを改めていく。そう考えていけば、「ドタキャンされるのではないか?」と疑っている時点でドタキャンを招いているのかもしれない。本当に会いたいと願うならば、当日確実にお会いできるよう、事前の連絡を怠らず、どれだけ今回の面談があなたのためになるのかを知っておいていただく努力を惜しまず実践することが必要だったのかもしれない。そう考え始めれば、確かに私に原因がある。
 
なんだかすっきりしました。
 
一方で少しモヤモヤ感が残ったのは、「突っ込んできた車の人はどうなるのか?」その答えも明確でした。「自分で蒔いた種は、必ず自分に帰ってくる」。
 
「自業自得」を自覚し、常に自分に原因はないかと反省する心を磨いていきたいと、改めて感じさせていただく出来事でした。
 


No.231 国体

1000nen

2014/08/01 00:00:00

明治天皇の玄孫、竹田恒泰氏の著書「日本人の原点がわかる「国体」の授業」という本を読みました。

本業以外で何かと話題を振り撒いている竹田氏ですが、本業(憲法学、史学の研究者で作家)での主張は非常に的を得ていて、いつも好感を持って読ませていただけます。

「国体」とは「国家の体面・体裁、主権または統治権の所在によって区分される国家の形態」とされます。ちょっと難しいですね。竹田氏の表現を借りれば、「日本人のアイデンティティの根幹をなすものであり、それを変えてしまったら、もうその国ではなくなってしまうもの」、もっと平たくいえば、「その国らしさ」といえるでしょうか?

竹田氏の説く「国体」とは何か、については本書を読んでいただくとして、終戦記念日に読めたことを、とてもありがたく感じました。

昭和57年に閣議決定されたように、終戦記念日は「戦没者を追悼し平和を祈念する日」ですから、「二度と戦争をしないと誓うこと」「戦争で亡くなった方々を悼むこと」が大切です。

しかし今回この本を読ませていただいて、せめて終戦記念日くらいは、かの敗戦で失ったもの、変えられてしまった大切なことにきちんと向き合い、考える時間を持つことが大切ではないかと思うのです。

少なくとも私は、この本を読むことによって、日本人としての誇りと勇気をいただくことができました。そして早速、この夏の課題図書として娘たちにプレゼントしました。これを機に、自分自身に誇りと自信を持ち、立派な子育てをしていってくれることを願って止みません。

世界最古の国であり、かつ世界各地で血で血を洗う殺し合いをしている中、戦争を放棄するという最も崇高な意思決定をしたこの日本に生まれてこられたことに感謝し、今目の前の自分がなすべきことに精一杯の時間をかけ、努力を惜しまず、この国体を維持してきてくださった方々に報いていきたい、素直にそう感じることができました。

みなさんも是非お読みください。


No.232 計画

1000nen

2014/08/04 09:00:00

 
今私は、財務計画策定マニュアルを作成しています。これは、ある会計事務所の先生からのご要請で作成しているもので、会計事務所が関与先様に財務計画立案のアドバイスをするためのマニュアルです。
 
先生からのご要望は、こうです。
「私からみたら、どうしても財務計画を作成する必要があるのだけれども、そのことは認めつつも、実際に作成しようという経営者は少ない。」
「また実際に計画策定のお手伝いをしようにも、どのようにしていったらよいかわからず、不安に思う。」
「だから、実際に財務計画を策定しようと思わせることができ、私自身もきちんとしたアドバイスができるようにするためのツールが欲しい。」
 
このようなご要望はこれまでもあったのですが、今回の先生の熱意は相当なもので、私自身が「これを機にきちんと整理をしよう」と思わざるを得ないものでした。
 
そのご要望をいただいたとき、まず先生にお伝えしたのは、次のような内容でした。
 
「第一に、経営者の頭の中では損益は大体掴んでいる。だから損益計画の必要性はわかるが、わざわざそこに時間を掛けようとは思わない。しかし資金繰りが頭の中にある経営者は少ない。よって資金繰りに着目した計画作りを提案しなければならない。」
 
「税の問題は、先生がプロで相手が素人。だから教えなければお金をもらえない。しかし経営計画は、相手がプロでこちらは素人。アイデアレベルの話はできても、本質的な話はできない。よって、良い質問をすることによって、既に相手の頭の中にあるものを引き出すのがこちらの役割。」
 
この2点は、経営者の方にもよくよくご理解いただきたい点です。
 
前者については、「キャッシュを増やすことが経営者の役割」という認識をお持ちいただきたい。「金の亡者になれ」ということではありません。よく「損益は見解、資金は実態」といわれますが、キャッシュがきちんと積み上がっていくような、実態のある成果を目指してください、ということです。
 
後者については、よく「何をすれば良いか、教えてください」と聞かれますが、その答えは外にはない。しかし経営者ないしはその会社の中には既にある。私たちコンサルタントの仕事は、その「既にある内なる答え」を引き出すのが役割です。
 
「既にある内なる答え」にきちんと向き合い、「実態のある成果を目指す」。是非心掛けていただきたい姿勢です。


No.233 指導

1000nen

2014/08/25 09:00:00

先週、ある若手社員と営業同行に行ってきました。入社して1年と3ヵ月。ある程度、一人でこなせるようになってきてはいるものの、先輩社員と比べると、まだまだ成果が追いついていない、そういう状況にありました。

「今回は口出ししないから」と伝えていましたが、営業開始30分後にはどうにも口を出さざるを得なくなっていました。もちろん私の堪え性のなさに原因はありますが、微妙に話が噛み合っておらず、先方のご要望とは反対の方向に行きそうになっていたからです。

何故「噛み合わない」結果になってしまったのか?面談終了後の反省会で、その原因が明らかになりました。「提案をしなければならない」との思いが強過ぎたのです。

話は少し逸れますが、私どもではお客様に訪問した際には、必ず3営業日以内にその面談結果を報告書に残すことになっています。目的は、

①目に見えない訪問先での担当者の対応を上司が知り、適切な指導を行うため。

②担当者が次回訪問するときの備忘記録として。

③引継ぎの際の具体的な引継書として。

などさまざまですが、いずれにしても報告書を残さない社員は、成績が上がらないことよりも厳しく指導されます。

閑話休題。彼は、新人当時に指導員としてつけられた先輩社員から、営業に同行させてもらう際、常に「○○だったらどういう提案をする?」と質問されていたそうです。素直な彼は、「営業訪問時には何か提案すべきことを持っていかなければない」と捕らえ、以来、先輩社員が残してきた報告書をじっくりと読み込み、提案事項をばっちり固めてから訪問するというスタイルを構築していました。

しかし、先方の経営状況は刻一刻と変わっていきます。先輩が訪問していたときとは提案すべき内容が変わっていて当たり前。その事実がすっかり頭から抜けてしまっていました。

結果として、提案しようとしていた内容に関わるキーワードがお客様から出てきた途端、「いざ鎌倉!」の如く、怒涛のように準備してきた提案内容を話し始める。相手が聴く耳を持っていようがなかろうが・・・

たまたま今回は優しい方で、始終笑顔でお話をお聴きいただいたのですが、そもそも求められている内容とは異なっているのですから、彼が捲くし立てたその15分は、お客様にとって無駄な時間。その損失を埋めるために、少々お話をさせていただいた、ということです。

これは若手社員にはよくあることで、決して彼だけを責められるものではありません。ただ彼には「営業は恋愛と一緒」としたうえで、まずは相手が好きなこと、聴きたいこと、やりたいことを明確にすることが必要で、先輩が残してくださった報告書は、それを知るための手掛かりでしかないことを、繰り返し伝えました。

「そういえば指導してくださった先輩は、よく先方の話に耳を傾けていらっしゃいました。私が勝手に勘違いをしていたようです。」素直な彼は、これからより成長していってくれることを確信しました。

一方で私たちも気をつけなければならないのは、ある意図を持って指導するものの、それが彼にとって最適な指導になっているのか?ということについて、常に問い続ける必要がある、ということです。一人ひとりの個性、成長度合い、欲求レベルによって、同じ指導でも効果は異なる。受け止め方が違えば成長レベルも違う。そのことをよく理解して指導に当たらなければならないことを痛感させられた出来事でした。


No.234 異見

1000nen

2014/09/01 09:00:00

当社の創業は昭和41年10月、ほぼ丸2年で50周年を迎えます。45周年の3年前、当社では社員全員による「提案コンテスト」なるものが行われ、50周年を迎えるにあたって、どんな会社にしていきたいかが検討されました。

その一つが「50周年、名駅集結!」であり、名駅ではありませんでしたが、一昨年、ありがたいことに、熱田区、中区、東区、豊田市、豊橋市に分散していた部署のほぼ全メンバーが一箇所に集まることができました。これも一重に皆様のご支援のおかげと、この場を借りまして御礼申し上げます。

それ以外にも、非常にチャレンジングな目標がいろいろと掲げられました。現在私が所属する部署でも、「これまでの延長線上では考えられない」目標が設定され、その目標に向かってメンバー全員が一丸となって邁進してきました。

おかげさまで、この3年間は何とか順調に来させていただいているのですが、後2年が結構きつい。まさに「これまでの延長線上では実現不能」な状態であり、抜本的改革がなければ成し得ないもの。

しかし個々の現場での検討では、どうしても積み上げ式になってしまいがちです。特にこれまでの当社における全社的目標は、各部署の目標の積み上げで設定されてきたので尚更です。

そこでこのところ、各部門の長が集まる機会を意識的に増やして来ました。そして「思ったことを言う」というルールを設け、一切の遠慮を排除して意見を出し合うこととしたのです。

そうするとまさに「異見噴出」で、個々の部署では「当たり前」なことが、他の部署から見ると「奇異」に移ることが意外に多いことに気付きます。

「異見」に晒されると人は「反論」「弁明」を繰り返すことになるのですが、一通り出尽くすと、案外すっきりと「これまでの常識」から抜け出すことができるものだと、最近つくづく思うようになりました。私自身も、いろいろな「気付き」を得、自己革新に自信が持てるようになってきています。

そして「非常識の中に成長の種がある」ことも、改めて確信を持てるようになってきています。

「異見の出る場を意識的に設ける」是非みなさんもご検討いただければと思います。


No.235 採用

1000nen

2014/09/08 09:00:00

 
先週から、大阪事務所の新規採用活動を始め、昨日4名の方の面談を実施しました。
 
面接のたびに思うのですが、同じ募集内容を見てきているはずなのに、応募者のタイプは実に十人十色。もう少し同じようなタイプに集中しても良いように思うのですが、不思議なものです。
 
今回はお客様である会計事務所様に訪問し、システム利用のサポートをさせていただくことを中心とした募集です。当社としては現職が同じようなシステムサポートで、「自分のキャリアを活かしたい」という方を主として求めているのですが、実際には
「今は事務職ですが、外に出て行く仕事をしてみたい」
「今は営業職ですが、数字を追うことなく、お客様のお役に立てる仕事をしたい」
といった方がいらっしゃいますので、どうしてもばらけてしまうようです。
 
一方で、その時代時代の応募者に共通する要素もあるように感じます。このところの共通項は「自分を成長させたい」というもの。みなさんの会社ではいかがでしょうか?
 
もちろん、どんどん成長していって欲しい訳ですが、前向きのように感じるこの言葉、多少違和感を覚える場合があります。例えば「この会社なら、自分を成長させられるように思いました」という言葉が伴う場合などです。
 
「ここは学校じゃない!」
 
他力を活用することは大事ですが、依存してはいけない。「自己成長の責任は常に自分にある」ということをきちんと認識しておかなければなりません。そのことを深く考えもしないで就職活動をしている人が多いように思います。特に、今の仕事にやりがいが感じられずに転職活動をしている方に多い。
 
はじめからやりがいのある仕事などない、はじめから自分が成長することを保証されている仕事などない。もちろん会社側は、やりがいがある仕事、社員を成長させる場と機会を与えようと最大限の努力はしなければなりません。しかしそれを活かすかどうかは、結局のところ働く人に他ならない。
 
今回の面接の半分は「説教」タイムとなりました。
 
逆に「今の仕事にはやりがいがあるのだけれども・・・」という方からは、
 
・休みが月に2~3日しかない。休日でも携帯に電話が掛かってくる。
・毎日、深夜まで働いているが、残業代が一円も出ない。
・お客様のところへ行くための交通費も個人持ち。
・事前の説明は何もなく、いきなり給料を3割カットされた。
 
などと、世に騒がれるブラックな話も聞かれました。今回に限らず、結構多く耳にする内容です。
 
私たちはそのような会社にしないよう、健全な成長をしていけるようにがんばりましょう。そして社員の成長をサポートする場と機会をきちんと設ける努力を怠らないよう、精進して参りましょう。


No.236 聴く力

1000nen

2014/09/15 09:00:00

当社では今、大学生3年生向けのインターンシップを実施しています。いろいろなコースがありますが、私は東京・大阪・福岡での「1dayコンサルタント入門編」というコースを担当しています。

このコースでは、まず「コンサルタントとは如何なる仕事か?」「コンサル会社によるコンサルティング手法の違い」「コンサルタントが果たす役割」「コンサルタントに求められる資質と役割」などを午前中に講義し、午後からはデモ会社のデータに基づく、グループワーク(以下GW)でのコンサルタント体験をしてもらいます。

既に福岡・東京を終え、明日の大阪で最終日を迎えますが、コンサルタントという、学生には直接的な縁のない職業を学ぶ機会とあって、皆高い関心を示しながら受講してもらえています。

その中で少しだけ気になることがありました。それは「聴く力」。

コンサルティングにとって最も大切な要素の一つが「聴く力」です。クライアントの現状、求められていること、一番解決したい悩みなど、トコトン聴かなければ、好ましいコンサルティングはできません。何故ならば、コンサルタントの仕事とは「既に相手の中にある答えを引き出す」ことから始まるからです。

経営者の頭は、常に何かを考えています。もちろん経営以外のことも含めて、とりとめもなく思考は回遊を繰り返しています。人は「一日に8億個の煩悩が沸き起こる」といわれますが、満更おかしな数字でもないように思います。

その混沌とした思考を整理しなければ、正しい方向性を導き出すことはできません。だからこそ引き出すための「聴く力」が欠かせない。

今回のGWでは「そこ、もうちょっと深く聴いて!」と感じることがとても多くありました。自分たちが用意した「答え」の裏づけが得られたら終わり、そんな感じで、クライアント役である私は、取り残されたような孤独感がありました。

もちろん「初めての経験だから」ということもあるのでしょうが、それとは違う理由があるように思います。それは「相手のことを知りたいという欲求の欠如」です。その欲求は「思いやりの心」と言い換えてもよいかもしれません。

この点は午前中の講義で、耳にタコができるほど力説していた部分なのですが、頭での理解では埋められない、「日常での不足」があるように思います。

相手のことを知りたいという強烈な欲求が、“聴く力”を醸成する。

これは私たちも強く意識しておかなければならないことだと思います。今回のGWを通じて、私自身が改めて学ばせていただきました。


No.237 注進

1000nen

2014/09/22 09:00:00

先日お聴きしたある会社のお話は、久しぶりに驚きの内容でした。

年商2億円そこそこのその会社は、5年ほど前から中国進出に向けて先行投資をしていたのだそうです。その額、累積で8,000万円。年商と比較して、その額の多さはご理解いただけるかと思います。

しかしその間稼ぎ出した売上は僅か300万円。普通だったら撤退の検討をするところだと思いますが、なんとその会社の社長は、更に追加投資を考えておられたとのこと。

「先祖代々の資産がある」ことから、それまでは目を瞑っていた私のコンサル仲間も、さすがに黙っていられなくなったのだとか。正直、その仲間もかなり気が長いと思うのですが・・・。

私は常々、新規事業については、「3年で単年度黒字、5年で累積赤字一掃が目安」とお伝えしています。それが実現できないと判断できた時点で、速やかに撤退すべきだと思います。

しかし先の社長は、更に追加投資をされようとした。それは何故でしょう?

もちろん、その事業に勝算があるから、という見方もできますが、かのコンサル仲間曰く「社長の道楽に過ぎない」のだとか。

実はここがオーナー経営の落とし穴、といっても過言ではないと思います。もし仮に、自社の社員が同様の投資をしようとしていたら、間違いなく止めることでしょう。しかし、誰からも止められないオーナー経営者は、ついつい走り続けてしまう。

このような事態に陥らないためにオーナー経営者は、二つの要素を持つ必要があると思います。

一つは、先の「3年で単年度黒字、5年で累積赤字一掃」といったような基準をきちんと設け、自らが設定したその基準をきちんと守る、という覚悟と踏ん切りです。例え1円でも赤字が残っているなら止める、そういう姿勢を持つ必要がある。

しかし人間は弱いもの、特に自分との約束には甘くなりがちです。そこで、そんなときに毅然と注進してくれる人を作っておくことです。それが社員さんであれば、まさに忠臣となりますが、それはなかなか難しい。だからこそ、信頼できる社外のブレーンが必要です。

そういう存在が自分の周りにいてくれるか、常に振り返り、不在であれば探し出す努力を続けなければなりません。

このことは、オーナー経営者に限らず、誰にとっても大切な視点だと思います。一度、振り返る機会を設けても良いと思います。


No.238 開業

1000nen

2014/09/29 09:00:00

先日、開業6年目の税理士先生とお話しする機会がありました。数件の引継先をもらっての開業だったそうですが、それでも食っていくにはとても足りない。

「勤務時代は営業なんてしたことがなかった。どちらかというと苦手意識があったし、営業をするということは自分の仕事を増やすこと。がんばればがんばっただけ自分の首がしまるように感じていた。立場が変われば、本当に180度変わるのです」と苦笑い。

そんな先生が「開業時は営業が全て」と胎括りし、開業間もなくいろいろな経営者団体に顔を出すようになり、名刺を配りまくったのだとか。もし今開業する人がいたら、「とりあえず名刺を500枚ばらまきなさい」とアドバイスされるという先生。

「名刺をお渡しすれば何かあるもの」と、徐々に問い合わせが増えてきたのだとか。しかし「当初の営業活動は失敗」だったと。「時間はあるけど仕事がない状態で、時間の切り売りをしてしまった」のだとか。要するに「安売りしちゃったんですよね」

仕事が徐々に増えていく中で、安売りはそれこそご自身の首を絞めることに・・・。そんなとき、ある経営者仲間から叱責された。「時間だったら誰でも売れる。先生にしか売れないものを売らないとだめだ」と。

その言葉に「雷に打たれたようなショックを受けた」先生は、以来「自分にしかできないことは何か」を徹底的に探された。結果として、過去の経験の中から、自分が最も得意とし、かつ自分自身にやりがいを感じる仕事を絞り込みをされた。

約2年間で溜め込んだ不採算な仕事を徐々に解消し「昨年、やっと過去の負債を完済」されたとのこと。

「まだまだ楽ではないが、少なくともやりがいのある仕事で食っていけることが何よりも幸せ」と仰る先生の顔は、実に活き活きとされておりました。

今回の面談を通じ、開業時の大変さと共に、「自分らしい経営」の大切さを痛感させていただきました。

「正しい経営などない。その人にあった経営があるだけ」

その意味を、私自身も改めて考えてみたいと思います。


No.239 変革

1000nen

2014/10/06 09:00:00

先週1日から5日まで、会計事務所の先生方26名と共に、インドネシア視察旅行に行って来ました。平均年齢29歳という若さでかつ世界第4位の人口(約2億4800万人)の市場性、輸出に頼らずに毎年安定的に6%前後の成長をし続ける世界第16位のGDP(8782億ドル)の経済規模、化石燃料や希少金属などの豊かな資源を持つインドネシアは、ここ数年、海外進出先として注目を集めています。

実際に目にした首都ジャカルタは、見上げれば高層ビルが立ち並んでいるものの、視線を下げればゴミと失業者と放牧されている牛やヤギ・・・。まさに先進国と発展途上国が同居している、といった感じで、成長余力を十二分に感じることができました。

今回の視察では、JETROや政府機関、現地の会計事務所や弁護士事務所、金融機関に工業団地と、進出に必要となるあらゆる機関の視察をしてきました。

その中でも、実際に進出している企業でのお話は、実に参考になるものでした。

何よりも腐敗認識指数が世界175か国中114位と、政治家や役人の腐敗は相当なもので、「裏金を渡すのだけはしたくなかったが、この国では裏金なしでは仕事ができない」ほどなのだとか。

また価値観の違いが大きく、「日本の常識は全く通用しないと考えておいた方が良い」。

・「努力は美徳」という考えは全くない。「余計なことをするのは無駄」と考える。

・不具合を出しても気にしない。大雑把。「仕方がないことは仕方がない」

・時間にルーズ。納期を守る意識が低い。

・「以心伝心」は通用しない。自分の解釈で仕事をしてしまう。

・プライドが高く、間違っても誤らない。「私は悪くない」

・目の前のことを穏便に済ませようとする。「はい」と言ってもわかっていないことが多い。

などなど、人材育成には非常に苦労されているとのこと。

「それでも進出するしかなかった」と現地の社長は語ります。属する業界が縮小していく中で「出るも地獄。留まるも地獄。同じ地獄なら前を向こうと決意した」のだとか。

確かに人口が減少していく国内において、市場規模が縮小することは避けることができません。その中で生き残ろうと思えば、小さな市場を席巻していくか、他の市場にシフトするか、新たな市場を創出するか、伸びている海外市場に進出するくらいしか選択肢はありません。その中で当該企業は今回の選択をなされた。大変な意思決定だったと思います。

ただ「悪いことばかりではなかった」と仰います。

第一に、進出初年度から利益が出せるほどの需要があったこと。これはこの会社に限らず「進出企業の80%が利益を出している」そうです。

そして人が順調に育っていること。

進出から丸2年、根気強く指導をされた結果、元々持っている「指示を受けたことはきちんとこなそうと頑張る」「就業時間中はまじめに働く」「争いごとを好まず、協力し合う」「器用で、潜在的な技術力が高い」「プライドをくすぐるような新しいものや高い目標には前向き」といった特性を活かし、「かなり戦力化できるようになった」とのこと。ちょっと安心しました(笑)。そして

「希望が持てる会社にすれば、国民性に関わらず人は必ず変わってくる」

との社長の言葉がとても印象的でした。

生き残りを掛けた戦略には、いずれにおいても多大な苦労を伴うものです。しかし明るい未来を信じて取り組んでいけば、必ず結果は付いてくる、そんな思いを強く抱くことができました。私にとっても実に有意義な視察旅行となりました。

もう一つ、実質3日の視察を通じ、「福岡の次はジャカルタへ」といわれても、それだけは頑なにお断りしようと心に固く誓いました(苦笑)。


No.240 差異

1000nen

2014/10/14 09:00:00

先日、あるクリニックの先生ご夫婦からお食事にお誘いいただきました。「名南さんと付き合いが始まって20周年記念だから」と、私のみならず、会計部門やFP部門など、関与させていただいている部門の新旧担当者をお呼びいただいたのです。

本来であれば、私共の方からお誘いするのが筋なのでしょうが、本当にありがたい仕事をさせていただいていると、改めて感謝の気持ちに満たされています。

いろいろな昔話に花を咲かせる中で、当社の良いところはどこか、という話になりました。するとご夫婦口を揃えて「すぐに対応してくれるところ」と即答されました。

「中身は薄いのですね」とおどけてみると、先生から次のような話をいただきました。

「中身がいいのは当たり前。それがだめならそもそもお付き合いはできない。ただこうしてお食事にお誘いしたくなるほどありがたく思っているのは、どの部門の人も、何かあったらすぐに対応してくれる。わがままな客だと思うけれども、決して嫌な顔ひとつせずに、笑顔で動いてくれる。これ以上の満足はありません」

“差異”という言葉があります。いろいろな解説があるでしょうが、私は“異”は質の違い、“差”はスピードの違い、と考えています。

そして、質の違いを明確にするのが難しくなっている現在、ますますスピードの速さが満足の基準になってきているように思います。

もちろん、この20年間の間には、対応は早かったものの、中身的にはあまり好ましいものではなかったこともあったのだと思います。しかし対応が早い分、リカバリーも早かった。それがまた新たな満足をいただく結果になったのではないかと思うのです。

「拙攻は巧遅に勝る」

という言葉があります。完璧を求めることも大切ですが、特にお客様対応においては、スピード感を持つことが何より大切なのだと、改めて感じました。

お客様に感謝していただける仕事をさせていただけていることに感謝しつつ、今日もまた、精一杯の対応をしていこうと、心に誓いました。


No.241 初心

1000nen

2014/10/20 09:00:00

先週の金曜日、我が千年経営研究会恒例の中間総会が行われました。私が福岡転勤になって以降は九州での開催が定番化していましたが、今回は主催支部の岡崎会の企画で、東京で行われました。

今回は特別に、首相官邸見学や靖国神社参拝などの企画が組み込まれていました。

首相官邸では、新閣僚が記念写真を取るあの階段で集合写真を撮ったり、記者会見場では官房長官気取りでフラッシュの雨に晒されたりと、完全におのぼりさん状態。とても楽しいひとときでした。

話は少し逸れますが、官邸見学の待ち合わせ場所は併設されている議員会館だったのですが、待機中、ある方が次のような呟きをされました。

「こんなに立派な建物に入れて、多くの警備の人に守られて、黒塗りの立派な車に乗って、入出館のたびに深々と頭を下げられる。こんなところにいたら、誰でも勘違いしちゃうよね」

他山の石としなければなりません。

閑話休題。靖国神社はちょうど例大祭の真っ最中。多くの人でにぎわっていました。しかし今回は参拝もさることながら、主たる目的は併設されている遊就館です。

遊就館とは「中国の古典、『荀子』勧学篇「君子は居るに必ず郷を擇び、遊ぶに必ず士に就く」から「遊」「就」を撰んだものです。国のために尊い命を捧げられた英霊のご遺徳に触れ、学んでいただきたいという願いが館名には籠められています。」(以上、遊就館HPよりhttp://www.yasukuni.jp/~yusyukan/index.html)

詳細な内容についてはHPにお任せするとして、多くの方々の遺書などを拝見しながら私は、6年前に訪ねたある場所を思い出していました。そこは当時、岡崎商工会議所と三好商工会青年部で知り合った、当会立ち上げ時のメンバーたちと行った知覧特攻平和会館。

南の海で散っていった多くの方々の遺書を拝読し、涙が止まらなかったあのとき。そして、命を賭してこの日本という国を守ってくださった方々に報いるためにも、また彼らの願いであったはずの、よりよい日本を築いていくためにも何か私にできることはないのか・・・。この問いから生まれたのがこの千年経営研究会です。

今回の企画で、初心に帰ることができました。今一度、私自身、そして当会の目的と役割を再認識し、明日からの活動に尽力していこうと誓いました。

最後に・・・

今回の企画にあたっては、梶川会長はじめ、岡崎会メンバーの皆さんには多大なご尽力をいただきました。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


No.242 姿勢

1000nen

2014/10/27 09:00:00

昨日、あるイベントに参加してきました。詳細は割愛しますが、完全予約制である施設を見て回る、というもの。40~50人くらいのグループに分かれて、4時間くらい掛けて、案内役の方の説明を受けながらゆっくり見学していきます。

昨日は大変お天気にも恵まれ、秋風も涼しく、紅葉し始めの木々は、季節の変わり目を感じさせてくれるものでした。また案内をしてくださる方もとても親切で、とても気持ちの良いものでした。

大変素晴らしい内容だったのですが、少しだけ残念なことがありました。

当日は、予定通り来られない方や、予定時間の変更を希望される方、また体調を崩される方もいらっしゃったようで、イベント企画者サイドはとても大変だったようです。

その中で、当日の責任者の方だったのでしょうか、無線でのやり取りの中で、「何やっとるんだ、さっさと動け!」とか「いいからやれ!」などの発言が。

私の身の回りの方々はとても親切に、臨機応変に対応していただいていたから余計に感じたのでしょうが、「こういう人の下では働きたくないな」と素直に思いました。ご本人はイベント責任者として、その責務を全うするために真剣なのでしょうが、これでは人は気持ちよく動けない。

翻って、自らを省みたときに、緊急性を要するとき、期待する成果がなかなか出てこないときなど、同じような対応になってしまっているのではないか、と少々反省致しました。

また耳をそばだてていると、結構細かい指示を出されている。大きなイベントであったにもかかわらず、一番の責任者がここまで細かい指示を出していたら、現場は余計に混乱するものだと思います。結局、責任を全うするために口出しし過ぎて、余計成果から遠のいていく、そういう悪循環を感じました。

目的とやってはならないことをきちんと伝え、事前のコミュニケーションを豊かにした上で、ことが始まれば現場を信じて泰然と成果を待つ。そういう姿勢がリーダーに求められるのだと思います。

自省を込めて、他山の石としたいと思いました。


No.243 わがまま

1000nen

2014/11/04 09:00:00

営業に回っていますと、「無茶な注文」を受けることがあります。お客様というのはわがままな存在ですから、好き勝手なことを言うもの。かく言う私も、お客の立場になれば、超のつくわがまま者ですが・・・

特にこのところ、わがままをいうお客様が増えてきたように感じていました。「パンフレットを作ってくれ」とか、「うち用のマニュアルを作ってくれ」とか、基本的にはお客様にやっていただくことになっていることを、「それはわかっている。けど、やってくれ」と仰る方が・・・

最初のうちは、何故できないかを丁寧に説明し、お断りをしていました。なかには腹が立ってきて、少々つっけんどんな対応になってしまったことも。

しかし良く考えてみれば、「それはあったら便利だろうなぁ」と思える。「自分が同じ立場に立ったら欲しくなるだろうなぁ」とも感じる。

そこで、「こうなったらわがまま、全部引き受けちゃえ!」という気持ちになって、以来、一つ一つ対応するようにしてみました。

ただ、1件のお客様のわがままに無償で答えるのはもったいなく思ったので、できるだけ汎用性があり、パーツを入れ替えれば、いろんなニーズに対応できるものを作るように心掛けました。

やってみると、結構できちゃいます。

もちろんすぐにできること、できないことはありますが、すぐには無理なことでも、「どうにかならないか?」と考え、いろんな人の智恵を借りていくと、できる方向性は見えてきます。

そしてできあがったら、わがままに答えたお客様は大満足で、それを他のメンバーに紹介したら、こちらも大満足。結局、一人のお客様のわがままに対応した結果、多くの仲間やお客様が喜ぶ結果になった。

振り返ってみると、これが商いの原点なのかもしれません。

「お客様からの無理な注文は、新商品、新サービス開発の産声」

そんなことを感じる今日この頃です。


No.244 自己中心

1000nen

2014/11/10 09:00:00

「この人、本当に会社のことを考えているんだろうか?」

そんな疑問を感じざるを得ない経営者と、先週立て続けに三人もお会いしてしまいました。社員のことをくそみそに言う社長にも会ってしまい、ちょっとブルーな一週間でした。

その自己中心ぶりはさまざまですが、いくつかの共通点がありました。

・将来ビジョンを示そうとしない。

・思いつきで行動を起こし、うまくいかないと社員の責任にする。ひどい場合は「俺はそんなことやれなんて、一言も言っていない」と驚愕の発言も。

・社員を褒めない。失敗ばかりをあげつらい、罵声を浴びせかける。

書いているだけで、辛くなってきます。

そしてもう一つ、これは推測に過ぎませんが、

「この人たち、いくつになっても社長のポジションを降りようとしないんだろうなぁ~」

やりたいことは何でもやって、自分自身は責任を負わない。そんな楽な役割を手放そうなんて思いませんよね。

この三人に共通するのは「後継者がいない」こと。後継者がいれば、それも自分の親族であれば、少しでも良い会社を残そうとするのでしょうが、その重石がない。もちろん、後継者がいても、同様の行動を取る方もいらっしゃるでしょうが、その確率は、かなり低いと思います。

その点において、後継者の存在は、とても大切なのだと思います。

「捨てる神あれば拾う神あり」で、週末には楽しい仲間とのひとときがあり、このコラムを書いている今は、すっきりしていますが、なんともやるせない一週間でした。

今週は気持ちを切り替えて、同じ鉄を踏まないよう、自分自身を戒めていきたいと思います。


No.245 営業

1000nen

2014/11/17 09:00:00

先日、ある経営者団体からの要請で、営業に関する講演をさせていただきました。「いつもは20名程度しか参加しない」といわれていたのが、当日は50名を越える方においでいただき、“営業”が企業にとって永遠かつ深遠な課題であることを、改めて感じました。

久しぶりにお話させていただくテーマであったため、「この際、ゼロベースで考えてみよう」と、自分が担当した過去のセミナーや、他メンバーのレジュメなどを掻き集め、再構築を試みてみました。

話の構成が出来上がったとき、まず感じたのは

「営業を考えるに当たって最も大切なのは、営業マンの役割ではなく、“売れる仕組み”そのものを作ること」

であり、その中でも特に

「誰に、何を、どういう方法で提供するか、を鮮明にすること」

こそが大切である、ということでした。

これまでもお伝えしてきたことですが、私たち中堅・中小企業の最大の強みは、「大きな市場を必要としない」こと。社員さんが10人なら10人、100人なら100人を食べさせていけるだけの市場があれば良い。

そしてターゲットとなる市場が絞り込まれれば絞り込まれるほど、その市場へのアプローチ方法は具体化され、より魅力的になる。

もしそのターゲット市場だけでは食っていけなければ、その柱をいくつか立てれば良い。

「そんなに簡単に言うけど、それがわかれば苦労はしない」という声が聞こえてきそうですが、目の前の仕事(作業?)に振り回されて、本当に「当社のお客様とは誰か?」「当社の本当の商品とは何か?」「どのように提供していくことが最も良いか?」などについて、きちんと時間を取って考えておられる方がどれほどいらっしゃるでしょうか?

今回、講演をさせていただいて、セミナータイトル通り「基本の“キ”」の内容を、うなずきながらお聴きになっている経営者の方々を見るに付け、そう感じざるを得ません。

私自身、もう一度「基本の“キ”」に立ち戻って、営業構造の再構築を検討してみようと思います。これを機に、皆さんもご検討いただいてはいかがでしょうか?


No.246 伝統

1000nen

2014/11/25 09:00:00

去る11月22日、東京浅草の鷲(おおとり)神社で毎年11月の酉の日に開かれている「酉の市」に行って来ました。

酉の市の由来は以下の通り。

「日本武尊が東夷征討の際、社に立ち寄られ戦勝を祈願し、志を遂げての帰途、社前の松に武具の「熊手」をかけて勝ち戦を祝い、お礼参りをされました。その日が11月酉の日であったので、この日を鷲神社例祭日と定めたのが酉の祭、「酉の市」です。」

「以前は、酉の祭(とりのまち)と呼ばれていましたが、次第に市の文字があてられてきました。祭に市が立ったのです。酉の市(酉の祭)は、鷲神社御祭神の御神慮を伺い、御神恩に感謝して、来る年の開運、授福、殖産、除災、商売繁盛をお祈りするお祭りです。」

(以上、HPより http://www.otorisama.or.jp)

私もご縁あって、毎年伺っているのですが、今回は少し寂しいお話を聴くこととなってしまいました。

私たちが贔屓にしている熊手店は「吉羽」さん。吉羽さんの熊手の特長は、何といっても「おかめさん」の顔です。和紙をすいて型に入れて、何度も何度も重ね合わせて作っていく、とても手間と根気のいる手作りのお面で、手書きのお顔が何とも愛おしい。ところが、そのおかめさんがなくなってしまうかもしれない、というのです。理由は「後継者がいないから」。

また吉羽さんの熊手のもう一つの特徴が「亀」さん。こちらは吉羽さんの手作りで、大将の自慢の一品です。しかしこちらも「私が作れなくなったら、終わりです」とのこと。大将にはお子様がおられず、またお爺様のご遺言で「他家への公開を許さず」なのだとか。

大将自身は「もし本気になって技術を継承してくれる人がいてくれれば渡してもいい」と思っておられるそうですが、「まずいないでしょうね」。おかめさんのお面同様、手間がとてつもなく掛かり、「採算を考えたらとてもやっていられない。自分も家の看板を守る気持ちで続けているだけ。昔は鯛も自作だったが、今は専門で作っている業者に依頼している」のだそうです。

和紙製からプラスチック製へ、国産から中国産へ・・・。伝統を守るということは、それほどに厳しいことなんだと、思い知らされました。

「伝統を守り抜くことへの誇り」と「採算」、きっと各店で毎日のように繰り返されているであろう葛藤。それに対して「後継者が喜んで継いでくれる、伝統を守りながら十分な利益が出せる体質」にしていただくことを祈ることしかできない自分。無力さを感じながら、大将のお話をお聴きしていました。

それ以外に私にできることは、お店の続く限り顔を出すこと。もしよろしければ、来年はご一緒に酉の市に行ってみませんか?少しでも伝統が継承されていくように・・・。


No.247 変革

1000nen

2014/12/01 09:00:00

円安や物価上昇、金利低下など、一般消費者にはあまり歓迎せざる環境変化によるものでしょうか、このところ「今までと同じようにしているつもりなのに、いまひとつ結果が出てこない」という話を耳にするようになりました。みなさんはいかがでしょうか?

景気が良くなれば、物価・株価は上昇するもの。しかし一方で、円と金利も上がるのが経済の大原則にも関わらず、相反する結果が出ているということは、どこかに矛盾を抱えている証拠ともいえます。

しかし私たちは他責にしている訳にはいきません。このような状況に対しては「ピンチはチャンス」と捉え、変化に対して果敢に臨んでいかなければなりません。

さて、「同じことをしていて結果が出なくなった」という場合、いくつかの原因が考えられます。

第一に、その中身が劣化してきているのではないか?ということ。やるにはやっているがマンネリ化してしまっていて、提供される側が魅力を感じなくなってしまっている可能性があります。

人のモチベーションを低下させる最大の要因は“マンネリ”といわれます。よって企業は、常にサービスの提供の仕方を見直していかなければなりません。結果の低迷は、やり方を見直しよいチャンスと考えてみましょう。

第二に、これまでのやり方にマッチしたお客様に浸透し尽くしたのではないか?ということ。

例えば、お客様には大きく4つの層があります。新しいモノがでるとすぐに手を出す「上澄み層」、その価値が明らかになってきたとき、比較的早期に購入する「革新層」、革新層の評判を聞いて購入を決める「追随層」、世の中に広まってきてからやっと手を出す「浸透層」です。同じ商品を提供するにも、アプローチする層によって課題は異なります。これまでのやり方にマッチしていた層には浸透し尽くしていて、次の層へのアプローチを考える段階にきているのではないか?と考える必要があるのかもしれません。

最後に、今のお客様(※)に、今の商品を、今の方法で提供するには限界が来ているのではないか?ということ。

現在のように変化の激しい時代においては、今のお客様に、今の商品を、今の方法で提供し続けることは、その姿勢そのものが衰退を意味します。今のお客様に、今の商品を、今の方法で提供することに限界が来ているとするならば、お客様なのか、商品なのか、方法なのか、またはその全てを革新していかなければならないステージに入っているのではないか?と考えることが必要です。自社のビジネスモデルを根本的に見直すチャンスが来ているのではないか、と考えてみましょう。

※ここでいうお客様とは、一定の共通項を持つターゲットグループを意味します。上記の“層”は、このグループ内の区分であり、ここでの“新しいお客様”というのは、これまでのお客様とは全く性質の異なるお客様群を指しています。

いずれにしろ、低迷は変革のチャンスです。喜んで、楽しんで、活き活きと変革に着手していきましょう!


No.248 承継

1000nen

2014/12/08 09:00:00

先日、ある倫理法人会のモーニングセミナーにて、事業承継のお話をしてきました。そしてその後の朝食会にて、とても嬉しいご報告を受けました。「来年、息子に会社を譲ることにしました。」

数年前に私の事業承継セミナーを受講されたKさんは、元々ご子息に譲るつもりはなかったのだとか。しかし講演後、心変わりをされ、同族承継を決意された。

「本人もやる気になってくれていて、社員も意外に素直に受け入れてくれています」とのこと。そういうものだと思います。

「優秀な社員がいればその者に」という声も聴きます。もちろん、そのような存在がいるのであれば良いのですが、私はあまり拝見したことがない。それは今の優秀さが、経営者としての優秀さではないことが多いからです。現社長の元に優秀なNO2が優秀なNO1になれるとは限らない。否、そうならないことが通常です。

優秀なNO2であるならば、ご子息の優秀なNO2として、その手腕を遺憾なく発揮してもらえば良い。それが互いの幸福だと思います。

更に嬉しいご報告が・・・。

この倫理法人会では、朝食会に参加された方々から感想をお伺いできるのですが、その中に、父娘でご参加されていた方がいらっしゃいました。

そのお父様から、「今日の話をお聴きして、決めました。来月、娘に会社を譲ります」と。すると娘さんがすっと立ち上がられ、「頑張ります。宜しくお願い致します」。

多分、お二人ともどこかで背中を押されるのを待っておられたのだと思います。世の中の風潮から、「子供に継がせる」と言い難い時代になっているように思います。しかしそれは本音とは異なる。

今回のご報告をお聴きし、改めて自分自身の役割を再認識させていただきました。できだけ多くの機会でお話をさせていただきたいと思いました。


No.249 古典

1000nen

2014/12/15 09:00:00

今私は、長崎の税理士先生が主催する「古典の会」なるものに参加させていただいています。2ヶ月に1回開催されるのですが、毎回、会員さんの中のお一人が、ご自身が読んで参考になった古典に関わる本を紹介し、全員で読み合わせしながら、短い単元ごとに感想を述べ合う、という会です。

当初は営業目的で参加をさせていただいたのですが、今ではすっかりはまってしまい、無理無理予定を調整してでも、できる限り参加するようにしています。

この会の良さは、第一に、自分では購入しないであろう本との出会いです。私も本を読むのは嫌いではなく、よく本屋さんに立ち寄るのですが、どうしても手に取る本のジャンルは偏りがち。しかしこの会に参加すると、生い立ちや経験、趣味や関心の異なるメンバーの集まりですから、決して手に取ることはないだろう本を読む機会を、なかば強制的に得ることができます。そしてその内容は、少なくとも紹介者が感動したものですから、実に興味深いもの。いつも新たな気付きがあります。

第二に、参加者の感想が聴けること。手にする本が違えば、価値観も違う。同じ文章を読んでも、感じることやポイントが全く異なります。まさに「目から鱗」の気付きを得ることも実に多い。またその中で聴ける疑似体験は、私の講演のネタが満載で、とっても勉強になっています。

第三に、質の良い古典に出会えること。「古典の会」というくらいですから、もちろん大括りのジャンルは「古典」です。私は常々、経営者の皆さんにお伝えしているのですが、経営者たるもの、歴史と古典は必ず学ばなければならないと思っています。その私が、全く未知の古典と出会わさせていただける。とってもありがたい機会なのです。

少し話は逸れますが、歴史や古典に向き合うとき、大切なのは「を」学ぶのではなく、「から」学ぶ姿勢。古典に触れるといつも感じるのは「古くて新しい」ということ。大切なことはいつの時代も変わらない。であるならば、先人の教えは、ありがたく学ばせていただく。そういう姿勢が大切だと思うのです。

「古典の会」とても良い企画です。みなさんの仲間同士でも企画されてはいかがでしょうか?2ヶ月に1回というペースも、なかなか良い感じです。是非ご検討ください。


No.250 お迎え

1000nen

2014/12/22 09:00:00

先日、ある社長宅にお招きいただき、とても楽しいひとときを過ごさせていただきました。

「お招きいただいた」と書きましたが、実際は「押し掛けた」という方が正しい。「囲炉裏がある部屋がある」とお聴きして、私から「是非!」とお願いしたからです。

その囲炉裏の部屋は、11年前にお亡くなりになられた、ゴルフ大好きだった先代が、当社創業者の佐藤澄男から「ゴルフ会員権だけには手を出すな」との示唆を忠実にお守りになり、ならば「みんなが楽しめる場所を作りたい」と心願されて完成したとのこと。

ご自身は亡くなるまでの2年間しか親しめなかったとのことですが、その後もその会社の社交の場になっており、「親父から本当に良いものを残してもらえた」と、現社長がしみじみといわれる言葉に、とても重く、かつ暖かいものを感じました。

先代の思いをそのまま残した囲炉裏の部屋、そこに奥様の心尽くしの季節のお花がところどころに設えられ、囲炉裏の上に登場する食材たちは、現社長が自ら足を運ばれ、自らの目で選ばれた、地元で捕れた旬の海鮮。そして酒飲みの私のために用意されたとってもおいしいお酒の数々・・・。何もかもが最高でした!

そしてその場には、お母様、奥様、二人のご令嬢もご一緒に。なんとも懐かしく、暖かい気持ちに包まれました。今はあまり体験することがなくなった、昔は普通にあった風景がここになる、そんな感じがしました。

先代の思いをそのままに、紡ぎ続ける家族のみなさん。嬉しくて、楽しくて・・・。3時間ちょっとのひとときでしたが、とっても最高のひとときでした。

二代に亘って引き継がれる、お世話になった方々への感謝の気持ち。そしてそれを忠実に守ろうとする御家族。とても大切なことだと思います。

私自身もそのようになりたいと、心から思いました。


No.251 新年

1000nen

2015/01/05 09:00:00

新年、明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

さてみなさんは、日本経済新聞の1面左上の特集記事に、年間を通じたテーマがあることをご存知でしょうか。もちろん、時事問題が取り上げられることがありますから全てとはいえませんが、年初に企画されている特集には、ベースとなるテーマがあります。

そのテーマ、実は毎年1月1日に明らかにされるのですが、今年は「ターゲット2020」。東京オリンピックが開催される2020年までに、どのような変化が起き、そのような姿勢を持つことが必要か、などを、日経新聞の真骨頂である「経済から見た政治・社会・世界」という視点で解説されていくことと思います。

「ターゲット2020」よりも少し長い目にはなりますが、私は常々「年末年始には、次の10年を見据えて、今年何をすべきかを考えてください」とお伝えしています。

私自身も毎年、その観点で1年の自らの立ち位置を明確にするようにしているのですが、今年は特に「やはり事業承継への取り組みを強化していかなければならない」と、改めて感じています。

昨年末から「相続税」の問題が取り上げられることが多くなっています。今年の1月1日から非課税枠が引き下げられ、納税対象者が相当増えることを前提とした報道ですが、事業承継を考えるにあたっては、相続税対策は二の次。否、これを第一義に考えると、好ましい事業承継ができない可能性が高まってしまいます。

好ましい事業承継を考えるにあたってまず考えなければならないのは、「誰に継がすか」を決めることであり、その次に「継ぐ者に継ぐべき資産を残すこと」です。相続税対策は、このような観点に従って、好ましい個人資産の分割案が明確にされた後に考えること。順番を間違ってはいけません。相続税にスポットライトが当たれば当たるほど、正しい考え方をお伝えする意義を感じざるを得ません。

「そういうことは、年末年始を迎える前に言って欲しい」という声が聞かれそうですが、まだまだ大丈夫です。立春は2月4日、旧暦(太陰暦)における今年の正月は2月19日ですから、いずれにしてもまだ4週間以上あります。

また「年末年始だけでは短過ぎる」という方もいらっしゃるでしょうから、どうぞこの1ヶ月間、じっくり時間を掛け、「ターゲット2025」を強く意識して、今年1年のあるべき姿を明確にしていただきたいと思います。


No.252 干支

1000nen

2015/01/13 09:00:00

今回は、毎年恒例の干支の解説をさせていただきます。「乙(きのと)未」とは、どんな年なのでしょうか?

「乙」という字は、草木の芽が曲がりくねっている象形文字。昨年の「甲(きのえ)」で芽が出たものが、まだ外の抵抗が強いために、まっすぐに伸びないで屈折している。乙々といえば、はかばかしくいかず、苦労する意味である。

従って、新しい改革・創造の歩みを進めるが、まだ周囲の抵抗が強い。しかし、いかなる抵抗、紆余曲折を経ても、それを進めていかなければならない。

「未」という字は、上の短い「一」と「木」からなっており、「一」は木の上層部、枝葉の繁茂を表している。木が繁茂すると、木の下が暗くなる。ゆえに未を「暗い」と読む。未は「昧」にも通じる。つまり「未」は、暗くしてはいけない、「不昧」でなければならない、ということを教えてくれている。

「不昧」とは、「くらまさず」の意。繁茂した枝葉末節を払い落として、生々たる生命を進展させることを示唆している。

よって「乙未」が示唆するのは「更なる困難」。

昨年の「甲午」は、「新しい流れが始まり、新たな改革をしようとするが、陋習のはびこる現在の環境、その勢力が確信を激しく反対する」としでした。

そして今年は、昨年新しい改革に着手したものの、なかなかうまくいかない。本当にこのままでよいのか?という迷いが生じる年といえるようです。そして、そうした迷いを捨て、断固続行せよ、と示唆しています。(以上、「個性学通信 vol.248より」

私が個人的に出させていただいている年賀状。一部の方を除き、「覚悟」と書かせていただきました。それはこの干支から、「昨年の改革を、断固として、覚悟を持って推進しよう!」という意味を込めさせていただきました。

まだまだ厳しい時代は続くようです。ただ、そういうときだからこそ、後世に残せる物語ができます。喜んで、楽しんで、活き活きと経営して参りましょう!


No.253 業界

1000nen

2015/01/19 09:00:00

先週、会計事務所様向けのセミナーを開催しました。「新春セミナー」と銘打たれた今回の企画では、税理士業界で活躍されている先生方にご登壇いただきました。

近年、特徴ある取り組みをされている先生方に、これまでの成功秘話や失敗談、現在特に力を入れておられることや今後の課題などを、忌憚なくお話いただきました。同業者の中で戦略的な取り組み内容を話す。なかなかできることではないと思いますが、今回登場いただいた先生方は、快くお引き受けいただき、更には「ここまでお話いただけるのか?」とこちらが驚くほど、余すことなく公開していただけました。

少しだけ残念だったのは、それほどの内容をお聴きしながら、アンケートで低い評価を平気でつけられる人がいたこと。もちろん講演慣れされていない先生もいらっしゃり、お世辞にもトーク上手とはいえない部分もありましたが、じっくりと耳を傾ければ、参考になることばかり。少しでも感謝の気持ちがあればできないはずの対応をされる方が同じ業界におられることを目の当たりにし、少々悲しい気分になりました。

しかしほとんどの方からは高い評価をいただき、「これほど生のお話を聴けるとは思っていなかった」「机上の空論ではない、実を伴う話が聴けて、とても参考になった」などと、お礼の言葉を数多くいただきました。とても素晴らしいセミナーとなりました。

一方で、先代が業界のために尽くしてこられた会社は、後継後、同業者から苦しめられるようなことはありません。それどころか、たとえ危機的状況に陥ったとしても、「先代にはお世話になった」と、同業者でありながら、自社のことを差し置いてまでも力添えしていただけることさえあります。業界に貢献するとは、後の憂いを払い除けることにもなるのだと思います。

これまでの経験の中から学んだことは、業界のために公開をしていく。業界の発展が、結果として自社の発展へと繋がっていく。とても大切な視点だと思います。

振り返ってみれば、当社の創業者・佐藤澄男は、何でもかんでも教えてしまう人でした。「私がここまでこれたのは、多くの方からさまざまなことを教えていただいたから。だから自分がわかることであれば何でもお伝えするのが当たり前」と、口癖のようにいっていたことを思い出しました。

今回の企画により、私もその精神を受け継いでいきたいと、改めて感じることができました。私自身、次代のためにも、できる限り業界に貢献できるよう、尽力していこうと思います。


No.254 研修

1000nen

2015/01/26 09:00:00

先日、親しい方にお誘いを受け、あるマネジメントに関する研修に、一受講生として参加してきました。

・社員の主体性とは、「うちの会社をよい会社にしたい!」という意思と意欲があり、かつそれに基づく具体的な行動があること。

・お客様からみたわが社の価値を常に明確にすること。

・イノベーションとは、単なる方法論ではなく、新たな価値観を確立させること。

・マーケティングとは、顧客が直面する問題や真の満足を顧客の立場で徹底的に把握すること。

・セクショナリズムは利益を阻害する。セクショナリズムを解決するだけで利益は捻出される。

など、いくつかの気付きや、これまで忘れてしまっていたことなどを思い出させていただきました。

一方で、受講者の方々を少し観察してみると、同じ話を聴いているのに、熱心にメモを取り、大きくうなずきながらお聴きになっている方がいるかと思えば、躊躇なく深い眠りにつかれる方もいる。研修というものは、もちろん講師の良し悪しもあるのでしょうが、聴く側の姿勢こそが大切であると、自身の姿勢を振り返る機会にもなりました。

念頭のコラムにて、「ターゲット2025に向けて、事業承継計画をじっくりご検討ください」とお伝えしましたが、進んでおられますでしょうか?太陰暦の今年の正月2月19日まで後1ヶ月を切りました。まだの方は是非このコラムを機会にご検討をお始めください。具体的な方法がわからないということであれば、どうぞお気軽にご相談ください。

今回の研修を受講して私は、年初に立てた事業そのものの計画の見直しを行いました。教えられたことを素直に受け入れ、「ズレていることはないか?」「欠けていることはないか?」「新たに検討すべきことはないか?」を検証してみたのです。

多少のプラス・マイナスはありましたが、概ね年初計画通りの結果となり、計画への確信が更に増し、実施に向けた勇気をもらうことができました。

経営者にとって、勉強し続けることはとても大切なことです。是非皆さんも研修受講の機会を意識的に持ち、現在の経営のありようを見直す機会をお創りください。


No.255 与件

1000nen

2015/02/02 09:00:00

先日訪問した営業先でのこと。

今年に入ってエリアの変更があり、私は京都・広島・岡山・香川・愛媛がメインとなりました。香川・愛媛は昨年も担当していたのでよいのですが、その他の県は初めて訪問するばかり。よって前情報は、前担当者が残してくれた報告書しかない、ということになります。

それも今回は、1年以上訪問できていなかった先ばかりでしたので、前回訪問時の報告書に記載された内容を確認しながら面談を進めることになりました。

やはり1年も経つと、課題はすっかりと変わってしまっているもので、全件、一からヒアリングをし直さなければならない状況でした。逆に言えば、前担当者の報告書を鵜呑みにしていたら、話が噛み合わないまま、互いに得るものなく終わってしまっていたのだろうと思います。

もちろん、報告書が残っていたことで助かったこともあります。会社の歴史や生い立ちなどは変わりようがなく、担当者の気質や性格も、そんなに急に変化するものではありません。おかげで、初めてお会いした方であっても、旧知の仲のような前提で話が進められることは何よりもありがたく、報告書の価値を痛感しました。

ここに“与件”の価値と怖さがあります。与件とは「他から与えられること。また、そのもの。特に、解決されるべき問題の前提として与えられたもの」。

そもそも情報には「ストック情報」と「フロー情報」があります。前者は変わらないもの、積み上げていくことができる情報です。逆に後者は変化するもの、移ろい行くものになります。よって情報に接するときには、その情報がいずれのものであるかに最大の注意を払わなければなりません。

その振り分けを常に意識し、与件の価値を最大限に高めていきたいものです。

一方で、やはり報告書は組織の最大の財産の一つです。これを機に、是非その価値を改めて見直していただき、社内における報告体制を構築していっていただければと思います。


No.256 先祖

1000nen

2015/02/09 09:00:00

先週の金曜日、千年経営研究会の月例会が三好会主催で開催されました。その中で、後継者教育における「ご先祖様崇拝」はどのような意味をもつのか、についての話になりました。

もちろん、今こうして生きていられるのは、その命の元である先祖代々の方々のおかげであり、そのことに感謝の気持ちをもつことの大切さは、いまさら言葉にする必要はないでしょう。その当たり前の心を育むことに、異論はありませんでした。

今回は、仏壇に手を合わせる「親の後姿」が主たるテーマとなりました。

親が仕事に尽力すればするほど、その姿は子供の憧れや尊敬の的になります。そしてそれは父の仕事を継ぐことの意欲にも繋がっていきます。

一方で、親が立派過ぎる(と感じる)と、萎縮の心も生まれるようです。「父のように立派な経営者になれるだろうか」「自分みたいな非力なものが、本当に父の跡を継げるのだろうか」と思い悩むのは、実績も経験もない後継者にとっては当たり前のことかもしれません。現にそのプレッシャーから、心の病となってしまう後継予定者がいることも事実です。

そのときに大切なのは、仏壇や神棚に額ずく親の姿ではないかと思います。「あんなに優秀な親父さえ、神仏にすがるのだ。非力な自分も守られているのだ。だから一生懸命に生きさえすれば、父のようになれるに違いない」と。

また、親として「俺が守る」という意識は必要ですし、自分の存在そのものが心の支えになることはよいことです。ときに能力や仕事を補ってあげることも必要でしょう。しかし、いずれ直接的な支援はできなくなる。必ずやってくるそのときに、後継者に支えになるものが何もない、では困りものです。

後継者教育において、自分がいなくても大丈夫な心の支えをこしらえてあげることが最も大切なのだと思います。

それが譲る者の神仏への祈りだと思うのです。なかでも、「ご先祖様が守っていてくださる」との意識は、元来日本人にとって最も心強いもの。そして自分自身がご先祖さまの仲間入りしたそのとき、後継者にとって、最高の心の支えになることは間違いありません。「何があっても親父が見守ってくれている」と。

神仏へ額づく姿が、後継者への最強の教育となり、心の支えにもなるものだと思います。


No.257 目標

1000nen

2015/02/16 09:00:00

昨日、3年7ヶ月を過ごした福岡のマンションを退去しました。前日には、福岡事務所立ち上げ時に共に苦労と喜びを分かち合った鈴木君と、営業の責任者の若山君も駆けつけてくれて、昔話に大いに盛り上がりました。

3年間、毎年目標を達成し続けてこられたのですが、それは

・常に目標を意識し、達成するために何が足りないか、何が必要かを常に考えて、行動を起こしてきたこと。

・就業時間の制約を守りながら、とにかく行動量を増やすことを徹底したこと。

・これまでの常識に囚われず、どんどん新しい提案方法や働きかけの仕方を模索し続けたこと。

などが要因であったと、その話し合いの中でまとめられました。

その中でも一番の要因は、「目標意識」にあると思います。当社では、売上目標はもちろんのこと、受注目標、お客様の満足度を示す「スマイルライン」というものを高めることを目的としたスマイル目標、またそれらを達成するための訪問目標などの目標がありますが、いずれに対しても、達成できないときや人を眺めてみると、突き詰めてみれば、やはりこの「目標を絶対に達成させる!」という強い意志と意欲の欠如にあると思わざるを得ないのです。

もちろん方法論の問題もありますが、それもまた、目標を必ず達成させるという気持ちが強ければ強いほど、いろんなアイディアが湧出してくるものです。

しかし若い社員と接するとき、この目標意識を共有することはなかなか難しい、というのも実感するところです。3人の振り返りの中でも話題になりました。

3人の結論は、「徹底的にやらせるしかない」ということでした。ただ、意識や考え方を責めるのではなく、行動の実践を徹底させ、その中で目標達成の喜びを何度も何度も感じさせる中で、真の目標達成意欲を持たせることが大切だ、という結論です。やはり「人に優しく、仕事に厳しく」の姿勢が大切なようです。

最終的には、「目標達成意欲を強く持ち、今後も目標を達成し続けよう!」と互いに決意を新たにし、楽しい壮行会に突入しました。

最後に、福岡在任中、いろいろとお気遣い、ご協力をいただいた多くの方々に、この場をお借りして、感謝申し上げます。本当にありがとうございました。


No.258 後継

1000nen

2015/02/23 09:00:00

先日、来年廃業を考えられているという会計事務所を尋ねて来ました。約20年間、役所勤めをされてから資格を取得され、50手前で独立された苦労人の先生。前職で相続に関わる仕事をされていたとのことで、相続・贈与に特化され、順調に事務所運営をされてきたとのこと。

お客様から感謝される姿を見て、すでに就職されておられたご子息が後を継ぐことを望まれ、会社をやめて試験勉強を始められたのだとか。「継ぎたいと言われたときは、本当に嬉しかった!」と心からの声でおっしゃったのが印象的でした。

しかし残念ながら、15年近く経っても資格取得に必要な5科目に至らず、昨年8月の受験を最後に、諦められたとのこと。残念な話ですが、こればかりは仕方がありません。

「元々、息子が継いでくれるなんて思ってもいなかった。70で引退と決め、それまでは突っ走ろうとしただけ。だから当初予定通り、70ですっぱりやめる。息子には少し夢を見させてもらったよ」と寂しく笑われる姿に、やるせなさを感じずにはいられませんでした。

「継ぐ気はあるのに継ぐことができない」これは資格業ではよくある話です。もちろん資格があるからといって、よい仕事ができるわけではありません。現に当社でも、資格はなくてもそれ以上の仕事をこなしている職員はたくさんいます。

しかし代表となるとそうはいかない。仕事ができようができまいが、資格がないとトップには立てないのです。

このような事例はこの3年半でたくさん見てきました。そのたびに、資格を必要としない会社で四の五の言っている後継候補者をみると、憤りを感じざるを得ません。

「継ぎたくても継げない者がいる」

客観的には継げない理由のない後継者の方には、そのことによくよく思いを致し、継ぐべき会社がある、継がせてもらえるものを残してもらえたことに感謝して、日々精進していただきたいと思います。


No.259 預かり物

1000nen

2015/03/02 09:00:00

去る2月21日、歌舞伎役者の十代目・坂東三津五郎さんがお亡くなりになりました。享年59歳。若過ぎる旅立ちに、各界から悼む声が絶えないようです。

翌週23日の中日新聞に、三津五郎さんの「評伝」が記事になっていました。その冒頭、三津五郎さんの口癖として、次のような言葉が書かれていました。

「歌舞伎の芸というのは先輩たちからの預かり物。しっかり次の世代に譲り渡さないと先輩たちに申し訳ない」

事業承継の現場において、最も大切なことを、ずばりと言い当てているように感じ、とても感銘を受けました。

「歌舞伎が400年続いてきたのは、後輩に芸を移すという繰り返しがあったからこそ。僕も後輩から「教えて欲しい」と言われれば、隔てなく教えます」

深い言葉だと思います。

翻ってこのところ、醜い親子間の争いごとが世間を騒がせています。あそこまでいってしまうと、醜いを通り越して、滑稽としか言いようがありませんが・・・

正直、どちらが悪いとは言い難い。そこにこの問題の難しさがあるのだと思います。ただ、もしどちらかを判定せよ、と問われたら、私は娘側に僅かながら非があると考えます。譲り受ける者が大切にしなければならないことに欠けたところはなかったか・・・

父親がやってきた経営は、もしかすると彼女の言う通り、今の世の中では立ち行かなくなっているのかもしれません。しかしそこには、間違いなく先代が大切にしてきたことを支持してくれているお客様もいる。またそのお客様にご満足していただくために採用され、教育され、そのことに喜びを感じている社員さんがいる。その存在に対して、どのような敬意を払い、どのような思いを持ち、どのような手当てを考えられてきたのか・・・。その僅かなズレが、世間から白い目で見られてしまう結果をもたらしたのではないかと思うのです。

根本は、方法論などではなく、三津五郎さんが仰る「預かり物」の本質は何かを、今一度考える必要があるように思います。

私もこれを機会に、「私が預かった物の本質とは何か?」を考えてみたいと思います。


No.260 預かり物

1000nen

2015/03/02 09:00:00

去る2月21日、歌舞伎役者の十代目・坂東三津五郎さんがお亡くなりになりました。享年59歳。若過ぎる旅立ちに、各界から悼む声が絶えないようです。

翌週23日の中日新聞に、三津五郎さんの「評伝」が記事になっていました。その冒頭、三津五郎さんの口癖として、次のような言葉が書かれていました。

「歌舞伎の芸というのは先輩たちからの預かり物。しっかり次の世代に譲り渡さないと先輩たちに申し訳ない」

事業承継の現場において、最も大切なことを、ずばりと言い当てているように感じ、とても感銘を受けました。

「歌舞伎が400年続いてきたのは、後輩に芸を移すという繰り返しがあったからこそ。僕も後輩から「教えて欲しい」と言われれば、隔てなく教えます」

深い言葉だと思います。

翻ってこのところ、醜い親子間の争いごとが世間を騒がせています。あそこまでいってしまうと、醜いを通り越して、滑稽としか言いようがありませんが・・・

正直、どちらが悪いとは言い難い。そこにこの問題の難しさがあるのだと思います。ただ、もしどちらかを判定せよ、と問われたら、私は娘側に僅かながら非があると考えます。譲り受ける者が大切にしなければならないことに欠けたところはなかったか・・・

父親がやってきた経営は、もしかすると彼女の言う通り、今の世の中では立ち行かなくなっているのかもしれません。しかしそこには、間違いなく先代が大切にしてきたことを支持してくれているお客様もいる。またそのお客様にご満足していただくために採用され、教育され、そのことに喜びを感じている社員さんがいる。その存在に対して、どのような敬意を払い、どのような思いを持ち、どのような手当てを考えられてきたのか・・・。その僅かなズレが、世間から白い目で見られてしまう結果をもたらしたのではないかと思うのです。

根本は、方法論などではなく、三津五郎さんが仰る「預かり物」の本質は何かを、今一度考える必要があるように思います。

私もこれを機会に、「私が預かった物の本質とは何か?」を考えてみたいと思います。


No.261 強味

1000nen

2015/03/09 09:00:00

昨日、大学の同窓会に参加してきました。同窓会といっても同級生の集まりではなく、中部地区に在住の全OBを対象としたものです。総勢30名ほどの参加でしたが、今年五十路を迎える私が7番目に若い、というメンバー構成。最年長は78歳、最年少が25歳。まさに三世代が一堂に会した、というような感じでした。

まずは年1回の総会からスタートしたのですが、その中で発表された同窓会最大の課題は「集客力」。九州の大学ということもあってか、来年創立70周年を迎える歴史はあるものの、中部地区のOKは600名弱。更に、案内を出しても返答が来るのが100名程度。その中からの参加者が30名、というのが実情とのこと。

以前は先輩から「来いよ」と言われれば、「参加せざるを得なかった」とのことで、結構な参加者がいたそうなのですが、今はその強制力は働かない。総会後に開かれたパーティーで、福岡転勤により4年ぶりの参加になった私を大先輩方が取り囲み、「お前たち若いモンが何とかせい!」と発破を掛けられました。「若いモン」との呼び掛けに気恥ずかしさを覚えつつも、「はい」と答えざるを得ませんでした。

その後、50以下の若いモン数名で集まって、早速対策を話し合いました。いろいろ話をするうちに、年1回の総会にしか参加していない私はあまり知らなかったのですが、当会には上場企業の社長あり、野球やバスケのプロ選手あり、政治家ありと多士済々のメンバー揃い。またサラリーマンの中でも、腕利きの営業マンあり、自動車部品メーカーで開発を手がける者あり、人事担当者ありと、極めて広範な能力の持ち主がいる。

「この力を使わない手はない!」

と全員一致で決まりました。

また強制力が効かない現状では、やはり参加するメリットがないと集客などできません。そこで、今度は参加者側に立って、どんな企画をすれば来てくれるだろう、という話になりました。

結論だけお伝えすると、

・将来の囲い込みのため、就活生対象の「大学の先輩が教える就活の極意」

・社会人5年未満のOBを対象とした「各界のプロフェッショナルが語る仕事の極意」

・若手管理者を対象とした「先輩管理者が語るリーダーの極意」

などをやっていくことになりました。

「結構、いけるんじゃない?」と、出たアイディアに、若いモンたちも大満足。早速、詳細を打ち合わせする約束をして、改めて飲み直しとなりました。

まずは強味を明確にする。その上で、今何を求められているのかを考え、その求められているものに役立つ強味は何かを考え、活かす方法を明らかにする。企業経営においても、とても大切なことだと思います。ひょんなことから、よい気付きを得ることができました。


No.262 計画

1000nen

2015/03/16 09:00:00

先週は確定申告業務のラストウィークということもあり、会計事務所様への訪問ができず、ほとんど社内で仕事をすることになりました。おかげさまで、滞っていた本の執筆や、確定申告明けの活動の見直しなど、少し置き去りにしてしまっていた業務に着手し、すっきりとした週末を迎えることができました。

また先々週は、岡崎商工会議所様主催の「ひとづくり塾」の第9期生の修了式がありました(詳しくはコチラ:http://www.okazakicci.or.jp/kosyu/26hito.pdf)。今回は22名と、いつもより多くのご受講をいただきましたが、みなさん無事卒業されることができ、講師として非常に嬉しく思っています。

この「ひとづくり塾」は全9講座で構成されていますが、すべての内容を受講していただくと、中期経営計画が立案できるようにプログラムされています。

本来経営計画はどの企業にも必要なものであり、是非皆さんにも立案していただきたいのですが、「なかなか時間が取れない」という話も聴きます。もちろん日頃から多忙を極める経営者の方々ですから、お気持ちはわかるのですが、まさに「万難排して」立案をして欲しいと願っています。

私は「鶏が先か、卵が先か」の議論でいえば、「間違いなく計画立案が先」と考えています。「計画を立てたって、計画通りなんていかない」という声も聴かれます。それはその通りです。しかしそれでも「計画が先」なのです。何故ならば、計画そのものよりも、計画を立てるプロセスと、計画通りに行かなかったときにこそ、その価値があるからです。

計画を立てるためには、自社の現状をきちんと振り返らなければなりません。また将来の環境予測をしなければいけません。そしてその環境下で生き残り、成長・発展していくための成功要因を明確にしなければなりません。さらにはその成功要因を獲得するための、確かで間違いのない施策を検討しなければなりません。このプロセスが大事なのです。

そしてもうひとつ。計画通りにはいきませんが、計画から外れたとき、何が原因で、今後どうして行かなければならないかを考える機会を得ることができます。計画がなければ、軌道から外れていることにさえ気付くことができません。これは極めて危険な状態といわざるをえません。

だからこそ、「万難を排して、じっくり計画を立てる時間を作る」ことが大切なのです。死んだと思えば何でもできます。

私はたまたま環境が時間を与えてくれましたが、多用な皆さんにおかれましては、是非ご自身で時間をお創りになり、じっくり自社を見直し、今後の方向性を明確にする時間をお取りいただければと思います。

追伸

7月から「ひとづくり塾 第10期生」の募集が始まります。よろしければ是非ご参加ください。お待ちしております。


No.263 相続

1000nen

2015/03/23 09:00:00

 去る21日は春分の日でしたね。古来、お寺やお墓にお参りする7日間の彼岸会の中日でもあります。私も当日は実家に帰り、仏壇に手を合わせ、お寺さんにお参りに行ってきました。今日は、そのお寺さんでお聴きした話を皆さんにもお伝えしたいと思います。テーマは“相続”でした。辞書(以下、大辞泉より)によれば1 家督・地位などを受け継ぐこと。跡目を継ぐこと。「宗家を―する」2 法律で、人が死亡した場合に、その者と一定の親族関係にある者が財産上の権利・義務を承継すること。現行民法では財産相続だけを認め、共同相続を原則とする。とあります。イメージが強いのは後者の方でしょうか。少し話は逸れますが、一般的に相続対策といいますと、相続税の節税対策を考えられることが多いようですが、事業承継において相続税を第一に考えますと、失敗することが多いものです。最悪の場合、“争族”になることも・・・。事業承継においては、まず誰を後継者にするか、を決めなければなりません。そしてその後継者に経営に必要な財産をすべて引き継ぐ。その上で、できる限りの節税対策を打つ、という順番になります。何事も手順を間違ってはいけません。さて今回のお話は、もちろん財産の相続のことではありません。それは“業”の相続。辞書によれば1 (仏語)人間の身・口・意によって行われる善悪の行為。2 前世の善悪の行為によって現世で受ける報い。「―が深い」「―をさらす」「―を滅する」3 理性によって制御できない心の働き。とありますが、今回お聴きした話は「自分の行いが、子々孫々に相続される」ということ。だからこそ「子や孫たちの幸せを祈り、自らの行いを改めなさい」というお話でした。正直、「ドキッ」としました。しかし、なぜかスッと心の中に沁み込み、気が引き締まる思いがしました。月に一度はお寺さんにお参りをさせていただき、ご説法の聴聞をさせていただいていますが、いつも本当によいお話をいただき、自らの行いを反省し、また今後の指針をいただいています。是非皆さんもそのような機会をお持ちいただければと思います。


No.264 両立

1000nen

2015/03/30 09:00:00

 先日、某家具小売会社の株主総会が行われ、問題は何一つ解決されないまま、他力によって休戦状態に入りました。株主からも、お客様からも、そして社員さんからも失われた信頼を取り戻すことは並大抵のことではないでしょう。感情的なしこりは片隅に置いて、取り残された一つ一つの課題に真摯に立ち向かい、全社一丸となって再生を現実のものとしていっていただきたいものです。

私にはあそこまでこじれてしまったその真相はわかりかねますが、知り得る情報だけによれば、「“店舗形態”に対する考え方の違い」だけであるように感じます。

「親父の考えは古い」「お前こそ甘いことばかり言うな」といった衝突や諍いごとは、親子間の事業承継においてはよくあることです。また売り言葉に買い言葉で、今回のように、袂を分かってしまうという最悪のケースに至る場合もあります。

その原因はさまざまですが、「“事業領域”の認識についてのギャップ」が多いように思います。事業領域とは「自社は、誰に、何を、どんな方法で提供する業なのか」を表すものですから、まさに今回のギャップは、この概念の範囲内の問題ということになります。

こういったケースで私は、多くの場合「両立」をお勧めしています。大概は同じ目的地に向かう船の中で、どの航路を取るかでもめているにすぎないからです。今回も、「よりよい家具をお客様に提供し、ご満足をいただきたい」という最終目的地は同じで、ただ、店舗形態という航路が違っているだけのように思えてなりません。

そして大概の場合、いずれの航路にも問題があります。今回も、会員制だけに頼るビジネスでは将来の成長・発展が担保されないのも事実でしょうし、これまで培ってきたノウハウや人材、一クラス上のサービスを受けてきたお客様の満足を捨て切ってしまうことの“もったいなさ”や“やるせなさ”、そしてリスクがあることも事実でしょう。

しかし私からみたら、十分に“両立”できます。いや、両立する先にこそ、当該企業の成長・発展への道があると確信できます。

意見がぶつかるときは、互いに非難し合うのではなく、両者が相容れる、まったく新たな、でも、いっそう魅力的な価値観を二人で創り上げることが大切です。良好な事業承継を果たすには、そのような姿勢を双方がもつことが必要です。是非そのような姿勢で、今一度“派無し”合っていただきたいと、願って止みません。

一方今回の報道で、「同族企業によくある問題」「だから同族経営には問題がある」といったような表現が使われ、非常に悔しく、かつ悲しい思いをしています。このような言われようを見聞きするにつけ、「同族経営こそ好ましい」と胸を張っていえる会社を一社でも増やしていきたいと、今私は決意を新たにしています。


No.265 相続

1000nen

2015/04/06 09:00:00

 先日、豊橋で行われた千年経営研究会の月例会で、「相続」に関わる話をさせていただきました。本日は、その内容について、少しだけお伝えしたいと思います。

「相続」と言いますと、「受ける」というイメージがありますが、その言葉の本質は、本当に「受ける」ものなのでしょうか?私はそうではないように思いますし、そう思ってしまうからこそ間違いが起こるように思います。 

「相続」を訓読みすれば「あいつづく」となります。要するに「受けるもの」ではなく「続けるもの」なのです。もちろん一旦は受けるのですが、それは次に続けるために一時的に預かるのであって、受け切るのではない。ところが一時的ではあっても、一旦は手に入ってしまうから、何か自分のものになったような気になってしまう、そこに問題の原因があるように思います。

もちろん、預かったとはいうものの、使わざるを得ないものもあります。そのときに大切な考え方は、例えば10預かって2使って、その使った2で新たなものを生み出して、11を次に繋げる、ということです。

加えて、「子孫のために美田を残さず」という言葉がありますが、これには続きがあります。それは「社会のために美田を残す」です。社会のために何かをしようと思う、もちろんお金がなくてもできることはありますが、あればあるからできることがあります。だからこそ子孫が社会に役立つくらいの美田を残す。そして子孫は、その預かった中からいくばくかのものを使って社会に貢献し、かつ更に次代に残すべきものを残していく。そういう循環が生まれたとき、「相続」が「争族」になど、なりようがありません。

「相続」とは、受けるものではなく、預かるものである。その根本を忘れないようにしたいものです。


No.266 互恵

1000nen

2015/04/13 09:00:00

 昨日・一昨日と、私の地元の「八百津だんじり祭」が催行されました。残念ながら桜とだんじりのコラボレーションは見ることができませんでしたが、お天気に恵まれ、とてもよいお祭りとなりました。

八百津祭りの映像はコチラ→http://www.town.yaotsu.lg.jp/photo/index.cfm?id=2 

毎年、千年経営研究会のメンバーが遊びに来てくれるのですが、今年は14組28名の大所帯、それもお子さんが11名もいらしてとても賑やかで、私自身、楽しいひと時を過ごさせていただきました。

また尋ねてくれるメンバーは、それぞれが思いのこもったお土産を持ってきてくれたり、配膳や後片付けのお手伝いをしてくれたりと、それぞれが自らできる役割を考え、実践してくれます。それが更によい会になっている秘訣だと感じます。

私は常々思うのですが、一人ひとりが自らを勘定に入れず、目の前の人のために何ができるかを真剣に考え、今の今、できることの精一杯をすることができていれば、会社も社会も必ずよくなります。このお祭りは、毎回そのことを教えてくれるよい機会にもなっています。

話は変わりますが、当社では毎月1回、それぞれの部門の責任者が集まって、「コラボ会議」なる取り組みをしています。これは、各部門で行っている、主として新規開拓や新商品開発といった新たな取り組みの実践状況を発表し、その中で他部門に協力を仰いだり、または「それならこういう協力ができる」と逆提案したり、他者の発表に対して「その取り組みを具体的に教えて欲しい」であったり、「もっとこうしたらよいのではないか」とアドバイスをし合ったりしています。要するに、やっている仕事は違っていても、お互いにどのような協力ができるかを考え、提案し合う場なのです。これは実に有意義で、実際に具体的な成果もどんどん出てきています。

“互恵”という言葉があります。恵みというものは、もちろん天地自然からはただただ与えられるばかりですが、人同士の中では誰かから誰かに一方的に与えるものではなく、互いに与え合うことで真の恵みが生じてくるもののように思います。

これがお祭りであったり会議といった特別な場だけではなく、目の前の一瞬一瞬において実現できたとしたら、どれだけ素晴らしい会社や社会ができるでしょうか。

ではそのような“互恵”社会を実現するためには、何が必要なのでしょうか。それは「互いに」ではなく「自分が」という意識であるように思います。自らが率先垂範して「今の今、自分にできることは何か?」と常に考え、実践していく。その姿勢が大切なのだと思います。


No.267 業界

1000nen

2015/04/20 09:00:00

 先週大阪支店にて、毎年恒例となっている「情報交換会」なるイベントを開催しました。確定申告を乗り切った税理士事務所の方々にご参加いただき、胸襟を開いて今回の申告業務で取り組んだ内容や失敗したこと、または新たに発生した悩みなどを打ち明け合い、またアドバイスし合うというものです。

同業の集まりであるにも関わらず、参加されたみなさんが忌憚のない意見を交換し合い、実に有意義な時間となりました。こういう気質のある業界は、間違いなく発展していくと思います。

皆さんもご存知の博多の明太子「ふくや」さんも、塩麹の生みの親「糀屋本店」さんも、長い年月を掛けて開発した製品のレシピを同業者に公開されました。その結果、業界全体が活性化し、成長・発展していきました。そういうものだと思うのです。

一方で「味付けの秘訣だけは、いまも私と息子たちだけの母子相伝」(創業者・川原俊夫氏の妻で、二代目社長であった川原千鶴子さん)なのだとか。それもまた大事なことだと思います。99%は誰でもできるように公開する。しかし一番大事な1%は子々孫々のみにつなげていく。素晴らしいお考えだと思います。 

翻って、何でもかんでも隠したがる人もいます。傍からみたらたいしたこととはとても思えないものを、後生大事に抱え込む。公開すれば、先行する人たちからアドバイスをもらえたり、同じ悩みを抱えている人と喧々諤々の議論から、これまで解決の糸口さえ見えなかったものに光がさしてくる。そういうチャンスをみすみす逃している。もったいない話です。

会社にしろ個人にしろ、数%の「自分らしさ」は残しつつ、それ以外は大いに公開し、意見を求め、更なる発展を求めて議論することが大切なのだと思います。私自身、そういう人生を歩んで生きたいと思いますし、また会社運営をしていきたいと思っています。

今回もご参加いただいた方々からとても大切なヒントをいただくことができました。心から感謝すると共に、自ら経験を重ねて成長し続け、その成果をまたみなさんにフィードバックさせていただきたいと思います。

※参考:「漫画 博多明太子物語」http://www.fukuya.com/fff/history/manga.html


No.268 営業

1000nen

2015/04/27 09:00:00

 先週は新規開拓営業ウィークでした。広島・愛媛・香川で合計17件を訪問し、さすがの私も、帰りの新幹線ではぐったりしてしまいました。

新規開拓営業は、まさに人生の縮図のようなもので、喜怒哀楽、悲喜こもごもです。けんもほろろの扱いを受ける悲しみ、ドタキャンされる怒り・・・。一方で、よい人と出会える楽しみ、そしてご契約いただける喜び・・・。暗闇があるから明るさがわかる、まさに受注の喜びは、その最たるものであるように思います。

さて本日は、営業にあたって私が意識していることをひとつご紹介してみたいと思います。それは「お客様には“今すぐ客”“じっくり客”“そのうち客”がいる」ということ。“今すぐ客”とは、まさに「待ってました!」といわれるようなお客様。待ったなしの課題が目の前にあり、当社の商品・サービスがその課題解決に直結することが明らかなお客様です。こちらがびっくりするくらい「何もしてないのに取れちゃった」ということさえあります。

しかし“今すぐ客”はそうそういらっしゃる訳ではありませんし、またそこばかりに頼る狩猟型営業は、そうそう長続きしないものです。逆に営業の真骨頂は“じっくり客”“そのうち客”にあるといっても過言ではないと思います。

“じっくり客”とは、関心はあるけれどもすぐに契約するつもりはない、というお客様です。その原因は概ね2つ。ひとつは、課題を解決するのに当社の商品・サービス以外にももっとよいものがあるのではないかと思われている場合、そして当社の商品・サービスを導入にあたっての障害がある場合です。この2つがクリアされない限り、どんなに素晴らしい商品・サービスであっても契約には結びつきません。

また“そのうち客”とは、当社の商品・サービスで解決できる課題以外にもっと重要な課題がある場合や、いつかは必要になるだろうけれども、今すぐに必要というわけではない、という場合などです。

いずれの場合も、営業がじっくり育てていくことが大切なお客様です。農耕型営業といってもよいかもしれません。こういうお客様が増えてくると、営業は非常に楽になってきます。実際に、3年前に営業にいき、その後、定期的に情報提供や状況伺いを継続した結果、先方から「やります」といっていただけることもあります。このときは喜びもひとしおです。 

さてこれまで“課題”という言葉を使ってきましたが、私はあまり“営業”しているという気持ちを持っていません。どちらかというと“課題解決”活動という意識で訪問するようにしています。お客差固有の課題を明らかにし、その課題が当社の商品・サービスで解決することができるのであれば、誠意を持って啓蒙する、という姿勢です。

営業活動は、企業にとって欠かせない活動です。ただ冒頭にもお話した通り、よいことばかりではありませんから、どうしても引き気味になる気持ちも拭えないものです。しかし、だからこそ喜びもひとしおなのです。企業の永続的な成長・発展に欠かせない営業活動。どうせやるなら喜んで、楽しんで、活き活きと行いたいものです。


No.269 傍楽

1000nen

2015/05/11 09:00:00

 先週、痴呆症のお年寄りを預かる施設の視察に行ってきました。とっても大変なお仕事だと思うのですが、どの施設でも皆さん嫌な顔ひとつせず、笑顔でご対応になっており、ただただ「凄いなぁ~」という言葉しか出てきませんでした。

また、何名かの方にお話をお伺いしたのですが、皆さんとてもしっかりと対応していただき、仕事と職場に誇りをもっておられることが、ひしひしと伝わってきました。同じような施設で働いておられる方が全てそうであるとも思えませんから、この施設を運営されておられる方の姿勢やご対応が素晴らしいのだと思います。

本日は、スタッフの方からお聴きした中で、一番心に残ったお話をお伝えしたいと思います。

痴呆症の方はある意味素直というか、感情がそのまま言動に表れるのだそうです。突然騒ぎ出したり、怒り出したり・・・。時には原因がわからないこともあるのだとか。

しかし「そんなときは、必ず私たちの対応に問題があったのだと思います。どうしてそのような行動に出られたのか、その原因をいろいろと考えて、自らの行動を変えていきます」と。

私であれば「何でそんなに騒ぐの(怒るの)!」と、相手の態度・行動に腹を立てて終わってしまうと思います。少なくとも、「何か自分に原因があるはずだ」とはとても思えない。少なくとも彼らの対応を見ていて、彼らに問題があるとはとても思えないのです。

それでも皆さんは当然のように自分に答えを求めていらっしゃる。その姿勢が、更に自信と誇りを深めていかれている理由になっていると思います。

「働く」とは、“傍”(周り)を“楽”(らくに、たのしく)させること。それを当たり前のように実践されている方に久しぶりにお会いできたように思います。

私自身、「傍楽」の意味を改めて噛み締め、仕事に向き合いたいと思います。


No.270 個性

1000nen

2015/05/18 09:00:00

先週、4年ぶりに“個性學”の研修に参加させていただきました。

※個性學とは・・・http://www.koseigaku.co.jp/contents/about/

私と個性學との出会いは20年も前で、インストラクターを勤めさせていただくほど深くお付き合いをさせていただいていたのですが、福岡に転勤となり、また仕事の内容も変わって、少し遠のいていたこともあり、新鮮な気持ちで受講させていただきました。

その中で、改めて個性學の価値を再認識させていただいたことがありました。それは個性學の意義が「自信を持って人生を歩む」ことであり、そのために

①自分と他人の好きなこと(嫌いなこと)、できること(できないこと)、得意なこと(苦手なこと)があることを知り、受け入れ、活かし合う。

②人間関係を可視化し、どのようなお付き合いをしていけばよいかを知り、受け入れ、活かし合う。

③積むべき経験のサイクルを把握し、起こる出来事の意味を知り、受け入れ、活かす。

ことができる学問である、ということです。実にすっきりと整理することができました。

もちろん、個性學で全てわかるわけではありません。前世からの約束事のような目に見えないものもあるでしょうし、人生の分岐点での選択によって変化するものもあるかもしれません。しかし、生年月日や血液型、遺伝子や産んでくださった親は、どんなことがあっても変えることはできません。

その変わらないものによってわかるものがあるならば、活かせばよい。少なくとも、全くゼロの状態から始めるよりも、ある程度わかった状態でスタートを切った方がどれだけ気が楽か・・・。 

少し離れていたからその価値がすっと入ってきた、そんな体験をした2日間でした。 

個性學についてお聴きになりたい方は、どうぞご遠慮なくお声掛けください。お待ちしております。


No.271 採用

1000nen

2015/05/25 09:00:00

 今月に入り、福岡事務所で採用活動を始めました。ありがたいことに開設以来ご契約いただける先が徐々に増え、現在のスタッフ数では、1年先には顧客対応に支障をきたす恐れが出てきたからです。最低限のサポートをさせていただけるレベルになるのに最低半年、安心して任せられるようになるには更に1年以上を要しますから、少々早目に活動をスタートさせよう、ということになりました。

しかし募集を始めてみると、これまでにない厳しい結果に。採用サイトはこれまでと全く同じものを使っているのですが、一昨年の10月ごろに実施したときの2割にも満たない募集数で、正直驚きを隠せません。

元々福岡は九州全土から求職者が集まってくるので、需給バランスは明らかに雇う側に利があると言われています。ただ多くの女性が望むのは事務職で、当社のように訪問を伴う仕事は敬遠されがち。とはいっても、これまでは優秀な人材に恵まれていましたので、「今回も何とかなるだろう」と気軽に構えていました。しかし蓋を開けてみれば無残な結果に・・・。

私は常々「採用活動は、優秀な人間を入れる活動ではなく、入れてはいけない者を採らない活動である」とお話しています。しかし今回のように募集数が極端に少ないと、ついつい「これくらいは目を瞑ろうか?」という気持ちがフツフツと湧いてきて、抑えられなくなりそうになります。

今回も二人の方が私の迷いの中にいました。採用時に行う能力検査の結果も優秀で、面接をしてもそつのない受け答え。それだけであれば落とす理由が見当たらない。しかし、何か引っ掛かりがある。その「何か」に蓋をしようと思ったとき、ふと「現場の声を聞かなければ・・・」と思い直しました。福岡事務所は私を除いて3人。「たかが1人」といっても、全体で25%を占める一大勢力となります。これは大きい・・・。

そこで直接指導をすることになる現場スタッフとの面接の機会を別途設けました。結果は「不採用」。「確かに優秀で、仕事はできると思います。亀井さんが入れると言うならNOとは言いません。ただ、喜んで引き受けられるか、というとそうではありません。具体的には○○という部分です」との回答。私が蓋をしようとしていたその引っ掛かりを明確に指摘してくれました。やはり現場の声は大切にしなければなりません。

1年後に一番苦しい思いをするのは現場で、それを一番わかっているのも現場です。その現場が出す「NO」は意味は重い。

もちろん戦略上重要な採用で、現場の意見を押し切ってでも入れざるを得ない場合もあるでしょう。しかし現状の延長線上にあるものであれば、より現場の声を重視する必要があるように思います。

今回の採用活動を通じて、改めて「現場の声に耳を傾け、入れてはいけない人は絶対に入れない」ことの大切さを感じさせていただきました。


No.272 素直さ

1000nen

2015/06/01 09:00:00

先日、一受講生としてある研修に参加してきました。私は何度か受講したことがある研修でしたが、もう1人、初めて参加するという人と一緒でした。

私は何度目かということもあって、ひとつひとつの話に自分なりの解釈や、是非の判断をしながら聞いていたのですが、もう1人はとにかく素直に、すべてをありのままに受け入れようとしていたようです。

研修終了後、いろいろと話をしたのですが、受講成果は間違いなく彼の方が上。私が聞き逃していたり、うがった受け止め方をしていたことも、実に素直に受け入れられている。感覚では、私が得たものの三倍は大切なことを感じ、身に付けていたようです。

話をすればするほど、こちらは恥ずかしくなるばかり。そのときつくづく感じたのは、「素直さは、最良の土壌」ということ。素直さがあれば、どんどん栄養を吸収し、多くの実がなる苗を育てることができる、そう感じたのです。

一方で素直さがない、ということは、せっかくの成長の機会を阻害することに他ならない。

彼と私は同じ話を聞きました。しかし私には自らの狭い了見の中で“判断”するという心がありました。結果として、本来は1リットルの水が入る容器なのにも関わらず、“我見”という余分なものが入ってしまっていたために、200ミリリットルしかはいらなかった。しかし彼には“我見”はなく、すべてを受け入れようとする素直な姿勢であったために、1リットルまるまる入った。

私と彼の間には10歳の年の差がありますが、もし互いにこのような姿勢であり続けたら、間違いなく私は早晩抜かされてしまうのだろうと思います。

素直さは、最高の土壌。そこに善き師という素晴らしい肥料が蒔かれたならば、間違いなく人は育っていく。

まずは一番大切な素直さを持ちたいと、心から感じることができた1日でした。


No.273 先人

1000nen

2015/06/08 09:00:00

 先週の土曜日、日本最古の肖像彫刻で国宝の鑑真和上坐像が公開されている招提寺(奈良市)を参詣してきました。坐像は、和上の教えが永遠に伝わるよう、子々孫々に亘って和上と結縁できるよう、その容姿だけではなく精神性をも映そうと制作されたもの。「寿像」とも呼ばれるその柔和で暖かなお顔は、拝ませていただいているだけで心が和むように感じられると共に、76歳にしてなお凛としたそのお姿に、身が引き締まる思いがしました。

歴史で学んだはずの鑑真和上ですが、正直その生い立ちはすっかり忘却の彼方。何十年ぶりにガイドの方にご教授いただき、自分では想像だにできない人生に、ただただ呆然となりました。

時は唐の時代、和上既に55歳になられていた742年。4万人以上の人に戒律を授け、「長安に並ぶ者なし」の誉れを一身に集めていた和上の下に、当時、日本にはいなかった正式な伝戒師(僧侶に位を授ける人)を求め、2人の日本人が訪れます。55歳という年齢もさることながら、何の縁もゆかりもない、かつ当時蛮国と思われていた日本に、地位も名誉も多くの信者さんさえも省みず、初めて会ったその日本人たちの熱心な招きに応じて渡日を決心されました。まずここがあり得ない・・・。

しかし当時の航海は極めて困難で、また和上を心配するお弟子さんや信者さんの妨害もあって、渡航は5度も失敗。さらには盲目の身となられてしまいました。しかしそれでも和上の意思は固く、67歳で遂に来朝を果たされました。実に苦節12年。あり得ない・・・。

翌年、東大寺大仏殿前に戒壇を築き、その後5年間で聖武上皇をはじめ400人以上の僧侶に戒律を授けられました。年齢を考えれば、相当なご苦労があったのではないでしょうか。その後759年に日本で二番目の宗派、律宗を立宗し、唐招提寺を建立されました。以後、76歳で遷化されるまで、広く戒律を伝えられたとのこと。何の縁もゆかりもないこの国で・・・。

「なぜそこまでできるのだろう?」自分では決して出来ないであろうこの偉業に、ただただ唸るばかり。

お話を聞き終えて、まずそこまでしてこの日本のために尽力してくださった人がいたということに感謝しなければならないと、強く思いました。

よくよく考えてみれば、これほどの方ではなくとも、また社内の中でも先人はいる。今の日本、今の会社があるのは、多くの先人のご努力の賜物。日頃はすっかり忘れているそのような方々に思いを寄せる時間を設けることは、とても大切なことだと思います。

私自身これを機に、先人たちのご苦労に思いを致す時間を設けていきたいと思います。


No.274 伝統

1000nen

2015/06/15 09:00:00

 昨日、福岡事務所の厚生活動の一環として、有田焼のロクロ体験をしてきました。

ロクロは大変難しく、なかなか思い通りにはいきませんでしたが、スタッフの方にご指導いただき、何とかサラダボウルを2つ、作り上げることができました。焼き上げには2ヶ月掛かるということで、忘れないように楽しみにしておきたいと思います。

ロクロ体験が行えるのは「有田ポーセリンパーク」という場所で、焼酎「のんのこ」で有名な宮政酒造が企画・運営をしているテーマパークとのこと。なぜかドイツのツヴィンガー宮殿がそびえ立っています。

バブルの申し子のような施設ですが、実は平成15年開業。「何故その時期に?」とも思えるのですが、広大な園内ながら、稼動している施設は半分くらい、という感じでしょうか?少々寂しさを感じました。

またその後、有田の町並みを散策してきましたが、こちらも閑散としており、寂しさ倍増。その理由のひとつは、3軒に1軒はあるのではないかと思えるほど軒を連ねる有田焼の販売店。店は開いているものの電気が消えていたり、そもそも日曜日だというのに鍵が掛かっているところも。もちろん、駅までの道すがら、すれ違う人さえいませんでしたから、「開ける必要がない」と言われてしまえばその通りなのですが・・・

その中でも2店舗が煌々と明かりを照らし、店内から「いらっしゃいませ」と声を掛けてくださいました。「こうやって努力をされているお店もあるんだな」と、ちょっと安心した次第です。

一方で、いくら一軒一軒が頑張っても、限界があることは否めません。伝統を守っていくということは、それほど難しいことなのだと思います。

しかし世の中には熊本の黒川温泉のように、町ぐるみで活性化を図り、ひっきりなしの観光客を呼び込めるようになったところもあります。

伝統を守ることは難しい。だからこそ個々の努力の上に、地域一丸の取り組みを図っていかなければならない、と強く感じました。

もちろんこの地においてもそういう努力はされてきたんだと思います。しかし開店休業の町並みを見るに付け、今一度奮起してもらいたいと念願せざるを得ませんでした。

私自身も地域に対してできることはないか、考えてみたいと思います。


No.275 回忌

1000nen

2015/06/22 09:00:00

 昨日は平成5年に亡くなった祖父の23回忌の法要がありました。本当の忌日は8月2日なのですが、7・8月の土日はお寺さんがご多用とのことでかなりの前倒しとなりましたが、小雨が降る中ではあったものの比較的涼しい中での墓参りで、少し助かりました。

また、本当に近い親族だけの集まりでしたが、昔話に花が咲き、とても楽しいひとときを過ごさせていただきました。今年100歳になる祖母も、終始笑顔で、とても嬉しそうでした。

目の前のことに右往左往させられる日常の中、ついつい忘れてしまうご先祖様へのご恩。そして離れ離れになっている親族との語らい。昔の人たちが用意してくださった忌日という習慣は、とても大切なものだとつくづく感じます。

私自身、今があるのは祖父と目の前にいる親族のおかげ。もし祖父が和菓子屋を始めてくれていなければ、そして父がそれを継ぎ、母や叔父・叔母たちが守ってくれていなければ、コンサルタントとしての私は存在しなかったと思いますし、さらには千年経営研究会という場に立つこともなかったでしょう。

本来は、常に感謝の心を胸にしていなければならないのでしょうが、実際はなかなか難しいものです。しかしこの回忌を通じて、改めてそのことを実感し、ありがたさが湧き上がってきました。

何年かに1回の回忌のみならず、日本には様々な行事があります。それらは、日頃忘れている感謝の心を思い出させてくれる、とても大切な機会なのだと思います。私自身、大事にしていきたいと感じた一日でした。


No.276 生産性

1000nen

2015/06/29 09:00:00

 このところ、業務の生産性向上に関わるセミナー講師や具体的なアドバイスを求められることが多くなってきました。その理由は様々ですが、労働に関わる訴訟が増えてきたことと、恒常的な若年労働者の減少と昨年来の景気回復によって新規採用がままならなくなってきていることから、労働環境そのものを見直そうという機運が高まってきていることが大きいようです。

ちなみにここでいう“生産性向上”とは、単に“時短”を指すのではありません。

「“時短”と、“(会社の)付加価値”及び“(社員の)所得”の向上を両立する」

ことにあります。労働時間を短縮して売上高が下がるようでは本末転倒ですし、時短が結果として手取りの減少になるようでは、社員さんもやる気は起きませんよね。「働く時間が短くなって、お給料が増える」・・・これを実現するのが真の“生産性向上”です。

さて、生産性を向上させようとする場合、まずは「時間分析」と「工数分析」の両面から現状把握することが大切です。

「時間分析」とは、人がどんな時間の使い方をしているかに着目し、個々人の時間の使い方の妥当性を問うものです。突き詰めれば「付加価値を生んでいる時間」と「そうでない時間」の割合を明らかにし、後者の削減を目的とします。

一方“工数”とは作業量を時間で表す概念です。「この作業は大体3時間くらいのボリュームです」などと表現されます。よって「工数分析」とは、どの作業にどれだけの人と時間が投入されているかに着目し、作業一つ一つの投入工数の妥当性を問うもので、具体的にはその作業によって得られる付加価値とのバランス、即ち時間単価の改善を目的とします。

そしていずれも個々人で工夫・改善すべきことと、組織全体で取り組むべきことがあります。

しかし中小企業の実態は、このようなデータを採取せず、もぐら叩きのように時々に発生する不具合を潰すだけ。かつその改善には個々人の努力のみに頼ることが多いように感じます。結果として、本来楽になるはずの社員さんの方に疲弊感が漂っている。相談を受ける多くの組織でそのような状態になっているように思います。

よってまず、きちんとしたデータ採取をすることが大切です。「データ採りそのものが不満の原因」との声も聴こえてきそうですが、それは「これまでもデータを採るだけとって何も変わらなかった(変えようとしなかった)」ことが原因です。改善効果に確信が持てる組織では、喜んでデータ採りがなされています。

まずは実態をきちんと把握し、問題に対しては不退転の姿勢で臨む。そして社員さんと共に、ウキウキ・ワクワク・ドキドキしながら、生産性の向上に取り組んでいただきたいと思います。


No.277 仕事

1000nen

2015/07/06 09:00:00

 先週の土曜日、「管理者研修」の講師を務めてきました。現在、個別の研修はお断りさせていただいているのですが、入社以来のお付き合いをいただいている会社で、長年お世話になっている手前、断り切れずにお引き受けさせていただくことになりました。「管理者研修」は実に久しぶりでしたので、私自身、新鮮な気持ちでお話をしてきました。

今回の対象者は非常に若く、また「管理者になりたくてなったわけではない」人が多いと伺っていたので、「部下に植え付けたい考え方」という体で、実際には参加者に「働く」ことの意味を習得してもらうことに力点を置いて話をしました。今回は、その内容を少しお伝えしたいと思います。

・人は会社を選ぶことができても、仕事を選ぶことはできない。人は仕事から選ばれる。したい仕事があるのなら、その仕事に選ばれるような働き方をする。

・権限は与えられるものではない。奪うものである。欲しい権限があるのなら、その権限が得られるよう、与えられた以上の責任を全うする。

・この世の中に、はじめからやりがいのある仕事などない。はじめから楽しい仕事などない。はじめから自分に合っているしごとなどない。やりがいをもって仕事をするからやりがいが感じられるようになる。楽しく仕事をするから仕事が楽しくなる。「これが天職、私の天職」と信じ切って仕事をするから仕事が自分のものとなる。

7時間の研修でしたが、始めはそっぽを向いたり、ひねくれた態度を取ったりしていた者も、最後にはメモを取りながら聴いていただくことができました。多少は感じるものがあったようです。

教育には、「しつけ教育」「知識教育」「技能教育」「動機付け」の4種類があります。多くの企業で知識や技能を教えることを重視されていますが、やる気のない者にいくら知識や技能を詰め込んでも身に付くことはありません。しつけ教育や動機付けこそが大切なのです。

その中でもまず始めにきちんと教育すべきは「しつけ(思付け)」と「しつけ(躾)」です。特に仕事に対する正しい考え方やこちらの思いをきちんと身に修めてもうらことが大切です。是非その意味と価値を考え、しっかりとした「しつけ教育」を実施していただきたいと思います。


No.278 継続

1000nen

2015/07/13 09:00:00

 先週の火曜日、7月7日から、岡崎商工会議所様主催の「ひとづくり塾」10期生がスタートしました。開始当初は10年も続けることができるとは露とも思わず、開講式に臨み、受講生と、同席いただいた派遣責任者の方々の顔を見渡しながら、非常に感慨深いものがありました。

特に続けてきて良かったと感じるのは、「共通の言語」の価値が見出せたときです。

複数の企業が毎年このひとづくり塾に継続して社員さんを派遣してくれているのですが、講座が終わるたびに「上司はこれを聴いて実践していたのですね」という声を聴くことができます。今回も終了後に同じような言葉が聴かれ、とても嬉しい気持ちになりました。

企業には共通の言語が必要です。もちろん理念や方針といったものは当然ですが、もっと日常的な、当たり前に使っている言葉に対して共通の定義を持つことが大切なのです。

たとえば「企業とはどのような存在か?」「利益は何故必要なのか?」「経営戦略とはいかなるものか?」など、常日頃当たり前に使っている言語に対して、本当に同じ認識にたって話ができているか、是非社員さんに確認してみてください。多くの場合、曖昧であったり、ニュアンスが微妙に違っていたりするものです。

ひとづくり塾では、このような言語の定義をきちんと行った上で講義を進めていきます。よって受講者は、受講する年度が異なっても、同じ定義を前提として話をすることができるのです。これはとても大切なことです。

10年続けることが出来たからこそ継承される「共通の言語」。来年の3月までの9ヶ月間。この価値をきちんと認識しながら、講義を進めていこうと思います。

またこのような機会を設け、10年間続けてきていただいた岡崎商工会議所の皆さんに、この場をお借りして心より御礼を申し上げます。


No.279 業界

1000nen

2015/07/20 09:00:00

先週から、開業前ないしは開業5年未満の税理士さんを対象とした「開業塾」なる企画を福岡でスタートさせました。毎月1回、全5回に亘る研修です。
 
私たちが属する税理士業界の環境は、近年大変厳しいものになっています。その厳しさを端的に表すものとして、新規開業数の減少があります。平成25年に総務省・経済産業省より公表された「平成24年経済センサス-活動調査」によれば、平成20年までは毎年1,100件以上あった新規開業数が、翌年からは毎年800件前後で推移しているようです。この状況は、業界全体の成長・発展を考えたとき、決して好ましいものではありません。
 
開業数がここまで減少してしまっている理由のひとつに「以前よりも儲からなくなっている」という声があります。税理士数の増加と事業所の減少という現実を考えれば、ある意味、当然のことかもしれません。
 
一方で、開業当初から隆々とした経営をされている事務所もあります。ときに「どんな業界が伸びていますか」という質問を受けますが、伸びる業界があるのではなく、低迷する業界であったとしても、その中で伸びている会社がある、というだけです。この事実は税理士事務所であっても同じです。
 
私たちは来年開業50周年を迎えるにあたり、この業界の現状を目の当たりにして、「業界の発展に寄与したい。そして共に成長発展していきたい」という思いを強く、強く持つようになりました。その思いを形に表すものとして企画したのが、この「開業塾」です。私たちがこれまで培ってきたノウハウを余すことなく公開し、円滑な開業と発展をサポートさせていただければとの思いで開催することにしたのです。
 
記念すべき第1期生は、ありがたいことに定員いっぱいの10名の先生にご参加いただきました。私たちにとっても初めての経験でしたので手探りの中での開催でしたが、何とか喜んで帰っていただけたようです。
 
今回開催してみて、先代が常々「業界の発展なくして個別企業の発展なし」と話していたのを思い出しました。今回の企画が間違いのないものであったと、先代からのお墨付きをいただいたように感じています。
 
また「中堅・中小企業の経営者は誰に悩みを相談するか?」というアンケートで、実に70%以上の経営者が「税理士事務所」と答えられています。税理士業界の発展が、結果として中堅・中小企業の発展に資するものと確信し、この企画を成功させると共に、全国展開していけるようにしていきたいと思います。


No.280 勉強

1000nen

2015/07/27 09:00:00

 先日、ある税理士の先生と、今後の税理士業界のあるべき姿についてお話しさせていただく機会がありました。業界経験30年を超える先生とのお話は実に有意義で、かつ一般企業においても大切な視点をいただきましたので、今回はその中からいくつかをご紹介したいと思います。

(1)時代は乱世、パラダイムシフトが起きている。乱世では、激しく成長しなければ、激しく落込む。だから現状維持はあり得ない。逆に落込んでからでは手遅れだ。

(2)顧客価値を生み出す方法が分かれば、仕事は必ずうまくいく。だから徹底して自問自答すべきことがある。それは「自分が何をやれば、顧客が仕事を進めやすくなるのだろうか?」ということ。

(3)“あるべき姿”と“現状”との差、「その差」を埋める戦い。経営とは、常に“自分との戦い”。もはや、同業他社は戦うべき敵ではない。

(4)成長をし続ける組織には、次の三つの特徴がある。第一に独自の経営観をもっていること、第二に付加価値の高い事業領域を確立していること、そして第三に人材育成に熱心であること。

これ以外にも多くの学びをいただきましたが、その中で、P・F・ドラッカー氏の言葉として、「経営的な進化とは、リスクを負う能力の増大であると定義できる」という言葉を教えていただきました。まさにその通りだと思います。

私は常々、「付加価値の10%を投資に」とお伝えしてきました。言い換えれば付加価値の10%のリスクを取りなさい、ということであり、更には付加価値を増やすことができれば、その分リスクを負う能力を増やすことにもなります。

ただ過去に投資をしてきたものへの追加投資はよくよく考えなければなりません。事業単位で投資限度を定め、それを超えても成果が出ないようであれば、過去の投資分は捨てる覚悟が必要です。それこそがリスクを取る、という意味だと考えておいた方がよいでしょう。

いずれにしろ、今回の会談を通じて感じたことは、「人生、いくつになっても勉強」ということでした。現状に満足せず、学び続ける姿勢を持ち続けたいと強く感じた一日でした。


No.281 らしさ

1000nen

2015/08/03 09:00:00

 昨年会社を引き継がれた後継社長とお話をする機会がありました。「社長がこんなに大変な仕事とは思わなかった」と漏らされるその方は、少々お疲れ気味でした。

その方との出会いは18年前。経営再建の真っ只中、旧体制を変革せざるを得なかった状況の中で、互いにまだ若く、血気盛んであったことも相俟って、結構ぶつかることも多かった、と懐かしく思い出されます。

その分、当時の彼は活き活きと自分の理想を追求するところがあって、頼もしくも感じたものです。私が「後継者は彼しかいない」と断言できたのも、そんな姿が裏付けだったのです。

しかし目の前の彼は当時の面影が見受けられません。「萎えそうになる気持ちに鞭打って」という感じがにじみ出ておられました。

お話をお聴きする中で、経営再建を現実のものとされた先代との経営スタイルの差にその原因があると感じました。「成果を挙げた先代のやり方を踏襲したいが、なかなかうまくいかない」ギャップの中で苦悶されている、そう感じたのです。

意思決定権がトップに集中する中堅・中小企業においては、トップが替わるということは、会社が変わることに他なりません。もちろん歴代の経営の良い部分は引き継いでいかなければなりませんが、やり方やスタイルは新社長の個性に徐々にシフトしていく必要があります。

少なくとも、トップがイキイキ・ワクワク・ドキドキしていない会社の社員さんが、イキイキ・ワクワク・ドキドキできるはずがありません。過去の良さを活かしつつ、新社長の「らしさ」を発揮する、そういう筋立てが大切なのです。

その社長さんには「仕事をゲーム化してはどうですか?」とアドバイスをしました。私なりの「彼らしさ」の表現です。是非、自分らしさを取り戻していただき、会社全体がイキイキ・ワクワク・ドキドキする組織へと革新していっていただければと思います。


No.282 指標

1000nen

2015/08/10 09:00:00

 先日、ある社長から次のような質問を受けました。

「亀井さん、世の中には4つのタイプの会社がありますよね。

 ①暇で、儲からない。 

 ②忙しいのに、儲からない。

  ③忙しいけど、儲かっている。

  ④忙しくないのに、儲かっている。

 最悪なのはどの会社だと思います?」

答えは②。質問後、試すかの如く「ニヤリ」とされてドキドキしましたが、何とかその方の意図を汲み取ることができて、ホッとしました。実際に私もそうだと思います。そしてそのような状況にしているのはトップの責任です。これは何も社長だけの話ではなく、部門長も同じ。理想は④で、そのような組織にすることがトップの使命であると、常に意識しておかなければなりません。

その状況を客観的に表す指標があります。「人時生産性」(1人1時間あたり付加価値額)と呼ばれるもので、下記の算式によって求められます。

               付加価値額・・・売上高-変動費    

人時生産性(円/人・時間)=―――――――    

               総労働時間

ひとつの目安として、平均的な中堅・中小企業では3,500円くらいであるといわれています。大企業は6,000円を超えているようですから、このあたりが大企業と中堅・中小企業の違いを端的に表しているといえるのかもしれません。皆さんの会社、ないしは部門はいかがですか?

一方で、労働時間に関する締め付けは、今後一層厳しくなってくることは間違いありません。もちろん不実の商いはご法度ですが、「短時間で大きな付加価値を挙げる」というテーマは、今後ますます重要性が増してきます。

そのためにも

 (1)一人当たり付加価値額の増大

 (2)一人当たり労働時間の減少

というテーマに対して常に明確な目標を持って、人時生産性を少しでも6,000円に近づけるようにしていきましょう。


No.283 確認

1000nen

2015/08/17 09:00:00

 先日、私の連絡・確認不足で、せっかくお会いできる予定だった方とお会いすることができないという事態が発生してしまいました。

そのお客様は宮崎の方で、私が九州担当だった頃には月1回は宮崎入りしていたので、少なくとも半年に1回はお会いできていたのですが、昨年から西日本担当となり、訪問エリアが広がったことから、宮崎に行く機会が極端に減っていた中での話です。

せっかくの宮崎訪問ですから、是非お会いしたいとお声掛けをしたのは私の方で、その方が近隣の方にさらにお声掛けをいただいて、少ない時間で多くの方にご挨拶できる状況を作っていただいていました。

ところがどうも私が「確定したら連絡します」などと、言わずもがなの言葉を付け加えてしまっていたようで、先方は確定するまでお待ちいただいていたとのこと。

ところが私の方はすでに確定済みとの認識で、前日になって待ち合わせ場所の確認などをさせていただくために、窓口になっていただいた方にお電話をしたところ、「亀井さんから確定の連絡がなかったので、なくなったものだと思ってました」との返答。

その方にお声掛けいただいた方に連絡していただいたのですが、やはり「なくなったもの」と判断され、みなさん他の予定を入れられてしまっていました。

結局、窓口の方が無理無理時間を空けていただき、その日を棒に振ることはなかったのですが、全く以って大失態。正直、その事実が分かったときは冷や汗もので、確認の大切さを改めて感じた一日でした。

これを機に、すべてのスケジュールについて、確認が取れているかの確認を行いました。今はまだ、失態のショックが残っていますから大丈夫ですが、日が経つにつれ、また疎かになってしまうことが心配です。

そこで、とりあえずのチャレンジとして、アポイントを入れた場合、数日前に確認の連絡を入れるというスケジュールを登録するようにしてみました。効果のほどはまた後日お知らせしたいと思いますが、少なくとも意識に頼るのではなく、何らかの対策を打つことが大切だと思います。

レアケースだとは思いますが、この対策が奏功した、ないしは別の効果が出たときには、またご報告をしたいと思います。楽しみにお待ちください。


No.284 事業

1000nen

2015/08/24 09:00:00

 先日、ある会社の経営計画立案の場に立ち会う機会がありました。このご時勢にあって非常に伸びている会社で、参加者の意欲も高く、その場にいるだけでもウキウキするような気分になれました。

ただ少々違和感のある部分もありました。それは、今後の事業分野の選択の際、確率論で語られることが多く、何かが足りないような気がしたのです。もちろん、過去のデータに基づく検討は非常に重要で、重視すべきことではありますが、確率論だけで事業を検討することは、少々危険です。

私が足りないと感じたのは、その事業への“想い”です。

ある程度の検討が進んだ段階で意見を求められた私は、参加された一人ひとりに「選ばれた事業の中で、あなたが心からやりたい!と思えるものはどれですか?」と尋ねました。残念ながら手が上らない人がいました。どうも「儲かること」と「やりたいこと」が完全一致はしていないようです。

私は事業の成功は、「信念」×「確率」×「行動量」で決まると思っています。想定される確率がたとえ低くとも、信念を持って、より以上の行動をし続けていけば、その確率の低さを凌駕することができる。しかし、どれだけ成功の確率が高い事業であっても、そこに信念なり、熱い想いなり、覚悟なりといったものがなく、また、行動が伴わなければ、成功しようがない、そう思うのです。

また確率を中心に考え始めると、徐々に過去の延長線上でしかものごとを考えることができなくなってしまいます。

よって事業において最も大切なのは、その事業に対する信念、熱い想い、覚悟であり、それを基とする行動にあるといっても過言ではないでしょう。

一方で、いくら信念があっても、成功の見込みがまったくないのでは話になりません。新しい事業で詳細な確率がわからずとも、「概ね6割の成功が見込まれたらGO!」というような基準を設けることは大切です。またその確率の正確さをより高めるための調査も、当然怠ってはなりません。その調査の充実度が、また信念や覚悟への源泉ともなるものです。

また、新規事業を考える際、もう一つ大切なのは“撤退基準”を設けることです。「ここまで投資して駄目だったら、何があっても止める!」という基準を決め、その基準を遵守する、という姿勢が大切です。

新規事業を考えることは、企業にとって欠かせざるものです。今一度このような視点で新規事業を考える時間を設けられてはいかがでしょうか。


No.285 後継

1000nen

2015/08/31 09:00:00

 昨日(8/30)の日本経済新聞9面に、「日曜に考える~カリスマ経営、後継者の条件は」というテーマで、日本電産会長兼社長の永守重信氏へのインタビューが掲載されていました。

その中で特に気になる内容が記載されていましたので、ご紹介します。

「(前略)10年くらい前か、会社も大きくなって『育成するには時間がかかる。外には優秀な人もいるだろうから、そういう人を入れれば楽になる』と思った。で、そういう人を入れだした。灘高→東大→ハーバード大みたいなエリート人材だ。小さい頃、お金持ちが高級ホテルで食べてるフランス料理、さぞかしおいしいだろうなとうらやましかっただろう。あれと同じだ。」

「結論をいうと錯覚だった。そういう経歴の人が経営がうまいとは限らない。外資に3年いたとか、それだけでは難しい。やらせてみたら『これだったら自分が育てた生え抜きの方が上だ』と最近わかった。10年かかってようやくだ。それでもう一度経営塾を始めて育成にエネルギーを使おうと考えた。時間はかかるが仕方がない。世の中、そんなに人材はいないよ。」

私はこの記事を読んだとき、2つのことを感じました。

まず「優秀な人間と、優秀そうにみえる人間とは違う」ということ。私は自社における“優秀さ”とは、まず理念・価値観が共有されていること、会社のため、トップのため、仲間のために精一杯の努力を惜しまないことだと思っています。仮に能力的に劣っていたとしても、そのような姿勢で仕事をしていけば、必ず必要な能力は身に付いていくものだと思うのです。その点において、「最初から優秀な人間を入れる」は絵に描いた餅といえるでしょう。

もう一つが、育てるべき対象が決まっていない、ないしは多人数存在するということは、とても大変なことだということ。その点において、次代が決まっているオーナー企業は、とても恵まれていると思うのです。その価値を十分感じられず、あるものを嘆き、ないものに活路を見出そうとする経営者がいまだ多いことは、とても残念なことです。

オーナー企業の現社長の方には、一代で1兆円を超える企業を育て上げた稀代の名経営者であっても、71歳になっていまだ後継者候補が決められていない現実をきちんと受け止め、早くから後継者教育が施せるというこれ以上ないメリットを最大限に活かして、素晴らしい次代への引継ぎ役を演じていただきたいと思います。


No.286 目標

1000nen

2015/09/07 09:00:00

 先日、私が講師を務めた開業支援の研修を受講した方から「自分がどこへ行きたいか、わからなくなってしまいました」との悩みを打ち明けられました。

彼は35歳。2年前に創業されました。その後研修受講までは「5年で15名の会社にする」と明確な目標を持っておられたとのこと。ところが、研修を受講して、その土台が崩れてしまったのだとか。

そもそも前職を辞めようとしたのは、「一人ひとりのお客様と向き合うことを喜びとしていたのに、社長から「もっと効率のよい仕事の仕方をしろ」と、その姿勢を否定されたから」。その思いが積もり積もって、独立する気持ちが高まってきたのだそうです。そして5年ほど前から独立に向けた準備を初め、その頃に描いた当面の理想の姿が、「5年後15人」だったのです。

しかし「経営理念が大切」「自分らしい経営を」と繰り返し聴かされ、「社員を雇ったら、直接お客様に接する時間がなくなってしまうのではないか?」との疑念から、明確であったはずの目標が揺らぎ始め、結果として「もう、どう考えたらよいか、わからなくなってしまった」ところまでいってしまっていたのでした。

私は「そんなところで迷っている暇があったら、徹底的にお客様に向き合いなさい」とした上で、「形式的な目標を掲げようとするから、ちょっとしたことで揺らいでしまう。心の底から「こうしたい、こうなりたい、こうありたい」との思いがフツフツと湧いてきて、それが自然と目標になることが大切。そのマグマが出てくるまでは、目の前のことに全力投球しなさい」とアドバイスしました。

もちろん目標を掲げることは大切です。明確な目標を持つことは、その実現に向けた強烈なパワーを湧出することとなり、経営にとって重要な要素であることは間違いありません。

しかしそれが“真の目標”になっていなければ、逆境時には儚くも消え去ってしまい、今回のように路頭に迷う結果になってしまいます。「どんなことがあっても達成するんだ!」との思いが伴うものであることが大切なのです。

そのような思いが沸いてくるまでは、まず「目の前のことに全力投球」することが大切です。そして、そのゴールとして、またそのご褒美として、明確な目標が自然と見えてくる。“真の目標”とは、そういうものだと思います。


No.287 経営

1000nen

2015/09/14 09:00:00

 先日、DDI(第二電電・現KDDI)の創業に携わられ、その後、イー・アクセス社を創業して史上最短で一部上場を果たし、さらにイーモバイル社を創業と、ベンチャー企業立ち上げのお手本ともいえる活躍をされてこられた、千本倖生氏のお話をお聴きしてきました。

京都大学卒業後、フロリダ大学大学院にて博士課程を終了。その後、日本電信電話公社というお役所に入られた千本さんは、民営化されるにあたって「成功のためには強力なライバルの存在が必要」と考えられ、その後DDIの社長となられる稲盛和夫氏と共に草案。周囲からの大反対を押し切って退職、そして創業されました。

しかしその決断は並大抵のことではなく、「何度も何度も躊躇した」とのこと。その経験から語られた、「千尋の谷を越えることは誰しも躊躇するだろうが、その谷を飛び越えてしまったら経営者は強くなる。実力の3倍以上の力が出せるようになる。もう帰る場所はないのだから・・・」との言葉は、とても重く、かつ骨身に沁みるものでした。

また3社の経営に携われる中で、一番の窮地はイー・アクセス時代で、Yahoo!BBがモデムを無料で配布し、シェアを伸ばしてきたときだったのだとか。社員の士気も落ちに落ち、「あの時は、さすがに倒産を覚悟した」ほど。しかし、DDI時代に稲盛氏の薫陶を受けてきた氏は、「危機のときこそトップがしっかりしなければいけない」と奮起し、社員に徹底的に話し掛けると共に、ビジネスモデルを根底から見直されたとのこと。その2つの取り組みが奏功し、会社を立て直すことができました。

その経験から、「危機は社員一丸となるチャンス。会社を大改革するチャンス」と結ばれました。まさにその通りだと思います。

その後、宿敵であるはずのソフトバンクに会社を売却されたのは、まさしく会社発展のための宿縁であったといわざるを得ません。

また最後に、ご自身の経験から「怖がるくらいに時間を掛けて準備することが大切」とし、「成功している経営者は総じて臆病者が多い。臆病でなければ優秀な経営者にはなれない」との言葉は、私の経験と照らし合わせても、その通りであり、常に意識しておくべき内容だと思います。

いずれにしろ、大変共感と気付きの多い講演でした。皆さんの経営に少しでもお役に立てるのであれば幸いです。


No.288 生きる

1000nen

2015/09/28 09:00:00

 先週、私の祖母が100歳を向かえましたので、そのお祝いをしてきました。父を始め、実の子が全員集まり、華やかな席となりました。また、かの有名な“銀杯”も見させていただき、私自身も楽しいひとときを過ごさせていただきました。

また祖母は週3回デイサービスでお世話になっているのですが、そこで覚えてきたゲームを披露してもらいました。楽しみながらも一生懸命な姿に、「人間、何歳になっても勉強なんだな」と改めて感じた次第です。一方で、経営者には生涯を賭して学んでいけるものがあります。そのこと自体が本当に幸せなことなんだろうと思います。

その数日後、入社した頃からお世話になっていたある社長の七回忌の法要に参列させていただきました。その社長の場合、「ほとんど問題がない」と言われていた手術の後、にわかに容態が急変し、意識が戻らないまま亡くなってしまわれました。まさに志半ばでの旅立ちでした。

寝ているうちも頑張って働いてくれるこの体は、しかし自分ではコントロールすることができません。スイッチを入れてもらうのも、切られてしまうのも、目に見えぬ何者かによってなされるものです。よくいわれることですが、私たちにできることは、本当に「今の今、精一杯に生きる」ことしかできないのです。

厭世的にものごとを捕らえれば、「だったら享楽的に生きればいいじゃないか」となります。実際にいま世の中で起こっていることを振り返りますと、そのような風潮が蔓延しているように思います。

しかし以前からこのような社会だったかといえば、そうではありませんでした。何が違ってきたのでしょうか。さまざまな視点があるのでしょうが、私は特徴的なことが3つあると思っています。

一つは“生”に対する認識が、「どう死ぬか」から「どう生きるか」に変わってしまったこと、一つは、元々仏教国であった日本では、“来世”が信じられていたこと。もう一つが「お天道様が見てござる」「ご先祖様が見てござる」という教育が廃れてしまったことです。

詳細についてはまた別の機会にさせていただこうと思いますが、いずれにしろ先週のできごとを通じて、私自身「生きる」という意味について、もう一度じっくり考えてみようと思いました。みなさんもこれを機会に、じっくり考える機会を設けられてはいかがでしょうか。


No.289 成果

1000nen

2015/10/05 09:00:00

 先日、長労働時間に悩む企業から依頼を受け、時短に向けた相談に乗ってきました。

とりあえず、幹部社員数名の面談を実施したのですが、当初は「やりたけど、できない」に終始していました。

私は常々、人に気持ちよく動いてもらうためには、自分が指示や依頼をしようとすることが「正しくて、私にもできて、やりたい!」と思ってもらわなければならない、とお伝えしていますが、今回も「時短に取り組むことが必要なことはよくわかってます(正しい)」「またできることなら私も早く帰れるようになりたいです(やりたい)」でも・・・

今回は「私(たち)にはできません」がネックになっていたのです。

そこで、「どうすればできるようになるのか?」を徹底的に議論しました。そうこうしているうちに「実は前々からこうすればいいんじゃないかと思ってました」「これって止められないですかね?」「これにチャレンジしてみませんか?」といった意見が徐々に出始め、最後には全員「やってみよう!」ということになりました。

また、概ねやることが決まったところで、目標を設定することにしました。

そこで私が提示したのが、一人1時間当たり付加価値(人時生産性)です。計算式は下記のとおり。

                 売上高-変動費

  一人1時間当たり付加価値=――――――――――――

                全従業員の総労働時間

この指標、中小企業では3,500円程度といわれています。この会社では約4,200円でした。そこで「1年後5000円にする」との目標を掲げ、その実現可能性を検証したところ、先の対策を打つことができれば、付加価値は据え置きでも、十分に達成することができることが確認されました。

そうなるとみなさん、やる気満々。ほんの数時間前までは「だめだ」「できない」のオンパレードだったことが嘘のようでした。

やはり人は成果がはっきりとみえたとき、やる気になってくるようです。逆に言えば、やる気をもってもらおうとすれば、まず成果を明確にイメージしてもらう必要があります。そしてそれこそが、トップとしての役割だと思います。


No.290 想い

1000nen

2015/10/14 09:00:00

 先週の金・土曜日、千年経営研究会の研修旅行に行って参りました。本当は3日間の旅程だったのですが、日曜日に他の予定が入ってしまっており、ニッカウヰスキー余市蒸留所や、十勝平野での気球遊泳、札幌二条市場散策などの遊び心満載の楽しい企画には参加することができませんでした。本当に残念!

しかし研修旅行のメインイベントは企業訪問で、今年も2社の独自な経営をされている会社にお邪魔することができ、とても有意義な時間となりました。今回は株式会社 北翔様で学ばせていただいた内容について、少しだけお話させていただきます。

いろいろなお話をお聴かせいただきましたが、特に心に響いたのは、次の点でした。

①すべての行動が「クルマを長く、安く、安全に、快適に乗ってもらいたい」という理念と、「日本の自動車アフターマーケットを革新する」というビジョンに基づいている。そこにまったくブレがない。

②あらゆる場面で、「会社の風土を良くしたい」「社員の個性を活かしたい」「家族の誰からも北翔で働いてよかったといわれる会社にしたい」という強烈な思いに基づく意思決定がされている。

③ともすると相反することが多い①と②の両立のため、あらゆる「できない理由」を、問題が発生するたびに、全社一丸となってその場その場で解決されている。

紙面の関係で代表的なものしかご紹介できませんが、その結果として

 ・一般ユーザーへの小売しかしない

(業界では業者間取引と卸売が常識だが、アフターマーケットの主役は一般ユーザー)

 ・メールやネットでの受注・対応のみ

(無体なクレームによる精神的疲弊や、突発的な電話対応による生産性阻害を排除)

 ・役員会以外の会議なし(何かあればその場ですぐに解決しているから必要がない)

などといった、業界の常識を覆す革新を現実のものとされています。

そして何よりも、社員さんが社長の理念やビジョンに心から共感し、自らの意思と意欲で革新をし続けておられることが、話の端々に出ていたことが印象的でした。「ここまで想いが共有できていれば何でもできるだろう」と素直に感じたのです。

文字ではなかなか伝わりにくいとは思います。この内容については、来週10月23日(金)の三好会主催の月例会にてお話しする予定です。是非皆さんもお運びください。心よりお待ちしております。

最後に、今回の研修旅行の企画・運営に多大な尽力をしてくれた岡崎会のメンバーに、この場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。


No.291 縁

1000nen

2015/10/19 09:00:00

 当社では、開業後5年未満の税理士先生を対象にした「開業塾」なる講座を開いています。既に福岡と大阪で開講しており、来月からは東京校も開講します。開業塾では、毎回先輩税理士にご登壇いただき、30分ほどお話いただいています。それもみなさん“手弁当”。「業界発展のため」という私たちの思いに賛同いただいて、快く引き受けていただいています。

今回も、「一人1日8万円」という受講料の講座を持つ開業12年目の先生に、もちろん講師料なしでご登壇いただきました。ちなみに開業塾の受講料は、1日5時間×全5回+2回の懇親会付きで15,000円です。あくまでも「業界貢献の一環」なのです。今回のお話もとても参考になるものでした。

開業当初は「どんな方でも、どんな内容でも、ご依頼があったらお引き受けする」という姿勢だったそうです。もちろん「食っていかなければならない」という現実的な理由もあったのでしょうが、「お役に立ちたいという想いが強かったから」だそうです。

ところが実際にはいろんな方がいらっしゃいます。無理難題を吹っかけてきたり、あらぬ誹謗中傷をしてきたりといった事象も起こるようになってきたのだとか。

「このままでは自分も職員も駄目になってしまう」

そう感じられた先生は、以降「肌の会う人としか付き合わない」と決めたそうです。とはいうものの、会ってすぐ分かるものではありませんから、一定の歳月を経て、そうでないとわかったときは、料金表に基づき、根拠を示しながら値上げ交渉するのだそうです。そうすると、「意外にスムーズに解約になります」のだとか・・・。そのお話のときに、とても心に残る内容がありました。

「たとえ悪縁であったとしても、縁は縁です。結ばれた糸を断ち切るようなことはせず、綺麗に優しくほどくことが大切です」

地元密着でお仕事をされていることもあるのでしょうが、お話をお聴きして、とても大切な姿勢だと感じました。また今では心を通じ合わせることができるお客様だけに囲まれて、「自分も職員も、とても充実した日々を送ることができるようになっています」とのこと。

ちなみに、昨日の「今日の学び」の

「人を雇うということは、その人の大切な時間を、命を使わせていただくということ」

も、その先生のお言葉です。いずれの姿勢も、私自身、心掛けていきたいと思います。


No.292 役割

1000nen

2015/10/26 09:00:00

 先月、西日本統括の任を解かれ、正式に本社に戻ってきました。ただ、活動エリアがちょっと変わっただけで、ほとんど東海地方にはいない状況には変わりありませんが・・・。実際この原稿を書いているのは、広島行きの新幹線の中です(苦笑)。

この10月からの新たな任務は、会計事務所向けのサービスメニューの開発です。これまでのコンサル経験と、この4年間の会計事務所業界の実態把握を通して、より最適なサービスを見出そう、という試みなのです。

まさに「無から有を生む」仕事、実は私はそれほど得意ではありません。どちらかというと苦手な分野で、過去においても何度かチャレンジしながらも、満足のいくモノを産み出すことができなかったという苦い思い出しかないのです。

どうも私は体を動かすことで成果を挙げるタイプのようで、そういう意味では豊田支店や福岡事務所新規開設などの拠点開拓は性に合っていたのでしょう。しかし役割を与えられた以上、全うするしかありません。

そこで、豊田や福岡に出陣する前にやっていたことを、改めてやってみようと考えました。そのとき参考にしていたのが孫子の兵法で、今回はその一部をご紹介したいと思います。

1.郷導を用いざれば、地の利を得ること能わず

 険しい山道を登るのに、その道に精通した人のアドバイスを受ける、といった意味です。新サービスといえども、その道の先駆者は必ずいらっしゃいます。まずはそのような方の話をお聴きしようと思います。そのようなときに大切なのは、「教えを乞うなら、素直に実践する」ということです。経験のないことをいくら頭で考えても仕方がありません。「こうしたらいいよ」といわれたら、とにかく素直に実践することが大切です。

2.爵禄百金を愛しみて敵の情を知らざるは、不仁の至りなり

 簡単にいえば、情報収集に労を惜しんではいけない、という意味です。もちろんこれまでの経験から、まったく情報がないわけではありません。しかし役割が変わりますので、必要な情報はこれまでの活動の中で得てきたものとはその質が異なります。よって初心に立ち返り、改めて必要な情報を求めていかなければなりません。振り返ってみたところ、昨年1年間だけでも334事務所の方々が私のセミナーを受講いただけたようです。大変ありがたいことです。すべての事務所にお伺いすることは不可能ですが、今度は私がみなさんのお話をお聴きする番だと思っています。

3.奇正の相生ずること循環の端無きが如し

 要するに、最後は諦めない人が勝つ、という意味です。勝負の極みですね。

今月ちょうど五十路に入り、人生の折り返し地点でまた新たな役割をいただきました。明確な成果を挙げられるまで邁進していきたいと思います。


No.293 ジョウシキ

1000nen

2015/11/02 09:00:00

 先週の土曜日、当社の社員の結婚式に参列してきました。10年近く採用に携わってきた関係で、直属の部下ではない社員からも声が掛かることもあり、以前は1年間に11組の式にお呼ばれしたこともありました。しかし今年はこれが2組目。結婚そのものが減っているわけではなく、披露宴を行わなかったり、海外や身内だけで行うケースも増えてきてた結果であるようです。確かに体と懐は楽にはなりましたが、少々寂しい感じもします。

また結婚式や披露宴のスタイルもだいぶ様変わりしてきました。仲人がいないのはもう当たり前になっていますが、以前は当たり前にあったものがなくなったり、なかったものが現れたりと・・・。

正直、過去の(私の?)“ジョウシキ”からは外れていて、少々違和感がありました。しかし、その一つひとつは決して不快なものではなく「まあ、こういうのもありかな?」と、好意的に受け容れることができました。結婚式プランナーと呼ばれる人と一緒に考えたというそのイベントは少々詰め込まれ過ぎていて、お手洗いに行くタイミングを見計らうのも大変でしたが・・・

今回の式に出て、「もしかすると自分の“ジョウシキ”に縛られ、思考停止状態になってしまっていることもあるんじゃないか?」という、自分自身に対する疑問が生じてきました。その意味で、こういう機会に触れるとこは大切だと感じます。

しかし一度は“ジョウシキ”となったものには、必ずその目的や意義があるものです。それが時代の変遷で必要性や重みが変わり、「違和感がなくなった」状態になるのだと思います。

よって今思っている“ジョウシキ”は、今も“ジョウシキ”であるか、今の時代に合った“ジョウシキ”とは何か、を常に問い続ける必要があると思うのです。

現状、当たり前に行っていること一つひとつにスポットを当て、常に正しい“ジョウシキ”を持ち続けたいと思います。


No.294 ヒント

1000nen

2015/11/09 09:00:00

 先週の水曜日、ボートメッセなごやで開催された「メッセナゴヤ2015」に行ってきました。

メッセナゴヤとは、「愛知万博の理念(環境、科学技術、国際交流)を継承する事業として2006年にスタートした異業種交流の祭典。業種や業態の枠を超え、幅広い分野・地域からの出展を募り、出展者と来場者相互の取引拡大、情報発信、異業種交流を図る日本最大級のビジネス展示会」です。(以上、HPより抜粋http://www.messenagoya.jp/about/index.html)

今年は記念すべき第10回目ということもあってか、全国・世界から過去最大の1,315の企業や団体の出展があったようです。私たち千年経営研究会のメンバー企業も3社出展しており、とても頼もしく感じました。

実はここ数年、研究会メンバーが出展され始めたこともあり、時間が許せば顔を出すようにしていました。しかしこれまでの私は、この企画そのものの価値を感じていたわけではありませんでした。「仲間がいるから顔を出す」くらいの感覚だったのです。少し時間が取れそうだった今回も、何の迷いもなく同日開催された、京都大学iPS細胞研究所・山中伸弥教授のセミナーに申し込んでおり、出展ブースを回れたのは数10分程度でした。

しかし今回は、何となく感じ方が違っていました。「ビジネスのヒントが隠されているんじゃないだろうか?」と感じたのです。

山中教授の話の中で、元々は「今の医学で目の前の患者さんを治す」臨床医だったのが、お父様の死を目の当たりにして、「今の医学では治せない医学を探す」研究者の道を選んだ、とのくだりがありましたが、私も同じように、役割の変化が感じ方の変化につながったのではないかと思います。

翻って、今のビジネスに限界を感じ、何か新しいことにチャレンジしていきたい、との話はよく耳にします。もしそうであるならば、是非このような機会を見逃さないでいただきたい、そう感じました。いくら頭を悩ませても、頭の中にないものは出てくることはありません。だったら外に出るしかない。そんな機会があれば、どんどん飛び出していく、そういう姿勢が必要だと思うのです。

残念ながら今年は「気付き」だけで終わってしまいましたが、来年はしっかりと時間を取って、じっくりと見学して回り、ビジネスヒントを獲得して帰りたいと思います。

※同日開催された岡崎会主催の千年経営研究会・月例会で、山中教授のお話をベースにお話をさせていただき、とても喜んでいただけたようです。来月の名古屋会主催の月例会でもお話させていただこうと思います。関心がおありの方は、ぜひご参加ください。お待ちしております。


No.295 事業計画

1000nen

2015/11/16 09:00:00

 先日、福岡で開催している、開業5年未満の税理士先生を対象とした「開業塾」が修了しました。5講に亘り、経営者としての姿勢から営業戦略・サービス戦略、そして業務の標準化など、基本的なセオリーを学んでいただき、満足の声をいただくことができました。

5回を通じて改めて感じたのは、「同じ業界といえども、ひとつとして同じ事務所がない」ということでした。

経営者の個性はまちまちですし、生い立ちも積んできた経験も異なっているのですから、当たり前のことではあるのですが、10名の参加者が立てた事業計画は、まさに十人十色。ひとつとして同じような内容が書かれたものはありませんでした。

今日本は、人口減少の最中にあります。かのP・F・ドラッカーは、日本の人口は80年後に5,000~5,500万人になると言い残しています。現状12,700万人ですから、60%近く減ってしまうことになります。

仮に今、同じ業界で10社あるとすれば、その業界では4社しか生き残れないということです。残りの6社がなくなってしまう、ということではありません。他の業界で生きることができるからです。しかし「今のお客様に、今の商品を、今の売り方で」売っていて生き残れるのは4社しかない、そういうことです。

それではひとつの業界で生き残ることができるには、何が必要なのでしょうか。価格でしょうか?否、安ければ売れる、という訳ではありません。どんなに高くても売れるものは売れます。品質でしょうか?品質は良くて当たり前です。納期でしょうか?納期は守って当然です。

生き残る唯一の要件は、「その会社でしか手に入らないものがある」その一点です。その意味において“十人十色”であることは、とても大切なことで、人とは全く異なる事業計画を明らかにして帰っていただけたことは、本当に良かったと、改めて思います。

11月も折り返しの日となりました。新たな年を明確な“自分らしさ”を発揮できる年にできるよう、皆さんも今から来年の事業計画を作ってみてはいかがですか?


No.296 チェック

1000nen

2015/11/24 09:00:00

 先日、かつてコンサル先だったある会社に久しぶりに顔を出してきました。

その会社の社長は非常に細かい方で、仕入れにしろ、販売にしろ、在庫管理にしろ、経理業務にしろ、二重にも三重にもチェックをしないと気が済まない性格でした。しかしそれが会社の生産性を阻害し、長労働時間をもたらし、結果として社員さんの定着率の低下につながっていたのです。

給与水準にはそこそこ自信を持たれていたため、「労働時間が長いのは能力が低いからだ」と意にも介しておられませんでした。しかし「次代はこいつに」と目していた幹部に辞められてしまったことで、強い問題意識を感じられるようになりました。

そこで私がコンサルに入ることになるのですが、社長の細かさに辟易とされ、改善を強く望んでおられた社員さんは、私がコンサルに入ることを、心より歓迎してくださいました。

正直「社長の性格からくるものだから、簡単にはいかないだろう」と思っていたのですが、意外に社長の決意は固く、また社員さんのみなさんの積極的な協力もあいまって、コンサルは非常にスムーズに進みました。

しかし、不要不急のチェックはトコトン削減し、最低限のものしか残さないようなルールがほぼ出来上がってきたとき、不思議なことが起こりました。社員側からチェックを増やすような提案が続々と出てきたのです。

彼らは社長の指示によるチェックに反発していたものの、結局はそのチェック機能に頼り切っていて、チェックがなくなるとわかると、途端自分の仕事の質に対する不安に襲われてしまったのです。

結果としては、社長の決断が踏襲されることになりました。最初のうちは大混乱を来たしましたが、社長が不退転の決意を持っていることがわかると、社員自らチェックがなくても自信を持って仕事を進めるような工夫をし始め、今では残るチェックもなくせないかと、日々検討されるほどになっておられます。

昔話に盛り上がりながら、この会社の事例から学ぶべき2つのことを思い浮かべていました。

ひとつは「チェックは必要悪であり、なくすことができればそれに越したことはない」ということ。チェックなしで百点満点の仕事が完遂できれば、それに越したことはないのです。逆にその発想がないと、チェックが新たなチェックを生んだり、自分の仕事に対する責任感を失わせたりと、弊害も多いことを認識しておく必要があります。

二つ目に、「現在最適」で考えると変わりようがないが、「未来最適」で考えると組織は見事に変革することができる、ということです。あのとき社員さんがチェックを増やす提案をしてきたのは、“今”の仕事の仕方を肯定した上で「何が必要か」を考えた結果です。しかし社長は“将来”のあるべき姿を描いた上で「何を変えるべきか」を考え、改革を進めた。そこにこの会社の成功の秘訣があったと思うのです。

チェック体制は、それそのものが会社の現状の体質を表すものだと思います。みなさんもこれを機に、自社のチェック体制の見直しをされてはいかがでしょうか。


No.297 改革

1000nen

2015/11/30 09:00:00

 先日、ある改革に成功した会社に訪問してきました。紙面の関係上、詳しい内容はまた別の機会にしたいと思いますが、その改革は、多くの会社で取り組もうとされるものの、なかなかうまくいかないといわれているものです。

社長や現場の責任者の方からいろいろとお聴きしたのですが、その成功の秘訣は、次の4点に集約されるように思います。

1.誰もが納得できる、三方善しの大義名分がある。

 改革を達成することによって、誰にどんな幸福をもたらすのかが明確であり、それを達成することに喜びを感じることができると確信できている。

2.トップが「絶対に後戻りさせない」という信念を持っている。

 人は変化を嫌うもの。良いとわかってはいても変えることに抵抗感が生じるのは仕方がないこと。しかしそれを受け入れてしまっては改革を達成させることはできない。何よりもトップに不退転の覚悟が必要。

3.社員がそのトップを心から信頼し、尊敬している。

 「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が問題。どんなに良い内容であっても、言う人によって受け入れのレベルは異なる。トップは「あなたが言うなら」といってもらえるほどの信頼を得ることが大切。

4.それを達成することが互いのためになる、各人に落とし込まれた明確な目標がある。

 それぞれの目標を達成することが、他者や他部門にどのような良い影響を及ぼすかが明確になっていて、自身の貢献度が計れる目標があれば、人はより一層がんばることができる。

結果としてこの会社では、互いの目標を達成することを喜びとし、称え合う、とてもよい雰囲気が漂っていました。

改革は、どんな会社にも必要なことです。特に現状のような変化の激しい時代においては、その時々の改革は必要不可欠なものです。

この会社のように改革を断行できるよう、上記4つの視点について、自社の現状を振り返り、改革を断行できる会社へと変革を遂げていただければと思います。


No.298 現場

1000nen

2015/12/07 09:00:00

 先日、トヨタの一次下請企業で50年勤め上げ、後半の10年間は、社内の「監督者研修」の講師を担われていた方の講演をお聴きしてきました。高校卒業後、一貫して現場で叩き上げられてきたという方の言葉は現場の知恵がぎゅっと詰まっていて、また、私自身が製造現場から随分と遠ざかっていたこともあり、とても充実した時間となりました。

本日はその中でも、特に印象に残った言葉をお伝えしたいと思います。

1.“管理監督者”とは、経営者の視点を持った、高度なマネジメントスキルを有する管理者である。「町工場の社長」という自覚を持て。

2.“管理監督者”のレベルには、「問題を見ても気付かない人」「問題に気付くが、原因や対策を考えない人」「原因や対策を考えるが、実行しない人」「原因や対策を考えて実行する人」の4つのレベルがある。最高レベルを目指せ。

 ※私はその上に「対策を実行し、確実に成果を上げられる人」があると思います、

3.“現場”は会社の真の「ショールーム」であり、最高の「営業マン」である。

4.“異常”は標準だけでは発見できないことがある。どんな些細なことでも心を集中して「これはおかしい」「いつもと違う」という、異常を異常だと感じる「観る精神」「聴く精神」を磨かなければならない。それが“人づくり”の原点である。

5.一番大切な“知恵”は、人の知恵を使う知恵。そして知恵を使うのには熱意がいる。

いかがでしょうか。

文字にしてしまうと「当たり前」のように感じてしまうことかもしれませんが、現場に対する熱い思い、愛情をひしひしと感じる語り口に、素直に「すごいなぁ」と感じる、充実した1時間でした。

ぜひ「文字面」をなぞるのではなく、一つ一つの言葉の意味を噛み締め、そして自らの現場に落とし込んで改善すべきを改善していく、そのきっかけにしていただければと思います。


No.299 報酬

1000nen

2015/12/14 09:00:00

 先日、ある社長とお話をする中で、興味深い内容がありました。

その社長の持論は「社長たるもの、役員報酬を3,000万円は取らないといけない」でした。社員なら1,000万円でよいが、社長は会社のすべてのリスクを背負っているのだから、3,000万円くらいは取らないと、リスクヘッジができないとのこと。

また「役員報酬で3,000万円払えない程度の利益しか出せない経営者は、経営者として失格」であると共に、「社長が1,000万円で満足していたら、社員に夢を見させられない」とも。「そんな会社は魅力がない」と言い切るその社長の会社では、1割の社員の年収が1,000万円を超えているのだとか。

「会社の魅力は給与だけではないが、動機付けのひとつの要因である」との考えは、確かに一理あると思います。

実は私も、日頃から「経営者の年俸は3,000万円以上」とお伝えしています。

私の考える3,000万円の内訳は、1,000万円が生活費、1,000万円が、緊急性を要する資金需要に対応するための一時金、そして最後に、金融機関からの借り入れがままならなくなってきたときの備えとして、「何かあるとき以外は決して手をつけてはいけない」保険的な積立金です。

会社の資産をすべて売却するとしたら、手元にいくら残るのかを考えてみてください。計算してみると、貸借対照表上に載っている金額をかなり下回っていることが多いものです。たとえば土地ひとつとっても、今すぐに売ろうとすれば、なかなか言い値では売れません。景気の良いときに買ったものであったら、なおさらです。ともすると「半値八掛け二割引」となることも少なくはありません。

すべて換金できたとして、その金額と負債の額と比較してみてください。もしマイナスが生じたとしたら、その差額は誰が負担するのでしょうか。当然経営者です。だからこそ経営者は、そのリスクに備えた貯蓄をしておく必要があるのです。これが最後の1,000万円の積み立ての意味です。

今すぐに上げることは難しいとしても、中期的な視点で、役員報酬の見直しをされてはいかがでしょうか。


No.300 代替わり

1000nen

2015/12/21 09:00:00

 先日、先代がお亡くなりになって数年経った会社の幹部の方から相談を受けました。その内容は「幹部同士がいがみ合って収拾がつかない」というものでした。先代がご存命の頃はとても仲の良かった方々であったので、驚きを隠せませんでした。しかし一方、思い当たる節もありました。

先代は典型的なワンマン社長で、社長の指示を受け、期待される成果を挙げさえすればよかった幹部たち。そして成果を挙げて社長に褒められることが最大の喜びでした。

また何かやりたいことがあれば先代に相談するだけでよく、先代に認められさえすれば、他の幹部がどう思っていようが、自分の思い通りに行動することができていました。

よって、幹部同士で意見を出し合ったり、自分たちだけで共通の答えを出すという習慣がまったく身についていませんでした。

ところが新社長は調整型、具体的な指示を出すことよりも、幹部たちに考えさせることを優先させていました。この劇的な変化が、思わぬ事態を招くことになりました。それまでは言われたことをやっていればよかった彼らがお互いの考えを話し始めた途端、考え方の違いが露見してきたのです。

最初のうちは、穏やかに話し合っていた彼らも、あまりの考え方の違いに次第と言葉がとがり始め、いつか話もしなくなってしまったのだとか。

「どうすればよいでしょうか?」というその幹部に私は、「徹底的に議論するしかない」とした上で、次のようにアドバイスをしました。

「あなたを含め幹部全員、自分と自分の部署のことしか考えていない。だから、ただぶつかって終わりになってしまう。確かに先代がいた頃はそれが許された。ただもう代は替わったんだ。もうそろそろ先代への甘えを捨て、新社長が望む会社全体のことを考えることができる幹部になる努力をしてみないか。」

「いがみ合っているあなたたちをみたら、一番悲しむのは先代だよ。」

しばらくうつむき、黙って聴いていた彼ですが、「わかりました」と力強くうなずき、意を決したように帰っていかれました。勇気を持って私に相談した彼のことです。きっと他の幹部を動かしてくれると確信しています。

代が替わるということはそういうもので、残された者の試練であると共に、成長の機会でもあります。変革を楽しみながらクリアしていく、そういう姿勢が必要なのだと思います。