No.730 管理者
先日、創業3年目で社員数50名を超えるまでに急成長されている社長が相談に来られました。「もうやめたい」と嘆息する彼の表情からは、成長の喜びは感じられませんでした。
それもそのはず、それほどの規模になっていながら管理者が育たず、何かあったらすべて彼自身が乗り出さなければ解決しない状態にありました。彼の「事業の成長に人の成長が追い付いていない」との自己分析は、まさにその通りだと思います。
しかし、その原因を作ったのも彼自身。人に任せることができず、すべて自分がやってきてしまった彼の姿勢に問題があったのは火を見るより明らかです。もちろん、自分の後を任せ切るに足る人材がいなかったのも事実でしょう。そうであったとしても、「任せなければ育たない」のもまた事実です。
組織には、『管理限界』というものがあります。一人の管理者がきちんと管理できる部下の人数や事業領域の範囲を表す概念であり、その適正値はさまざまな要因によって変化するものですが、知的作業者集団においては、概ね6名までと言われています。私の実感としても近しいものがあります。そして彼の会社も知的作業者による労働集約型の仕事。「一人で50人」は、限界を超えるどころか、崩壊状態と言っても過言ではないでしょう。
そこで彼には、自社の仕事を、「誰に、何を、どんな方法で提供しているか」という観点からいくつかの事業に細分化し、それぞれの適性から人員配置の見直しを行い、その事業の特性から求められる管理者像を明らかにした上で、まずは育成候補者を選定するようにアドバイスをしました。
当社においても、極力1チーム6名以内を念頭に組織づくりをしていますが、同質の顧客層に同一のサービスを提供している場合、チームを分けることが非効率を招く場合がありますし、仮に第1課、第2課のように分けることはできたとしても、その長に相応しい人材を、その部門の数を満たすまで育て切れていない場合もあります。
そのよう場合は、「マネージャー」と呼ぶ部門管理者の職務を細分化し、その職務の一部を代行するメンバーを「サブマネージャー」として据えています。例えばある部門では、マネージャーが担っている機能を「業務管理」「営業管理」「部下育成」に分け、それぞれを得意分野とするメンバーを「サブマネージャー」として任せるようにしています。
もちろん彼、彼女たちは将来のマネージャー候補であり、サブマネージャーの経験を通じて、次のステップに上る訓練をしてもらおうという意図をもっています。
いずれにしろ、最初からオールマイティで何でもできる人材がいてくれればそれに越したことはありませんが、それはなかなか難しいものです。しかし手をこまねいていては組織の成長を実現することはできません。
皆さんの会社でも、職務の細分化を行い、かつ人材育成のキャリアルートを明らかにすることで、計画的に管理者、ひいては経営幹部を育てていく仕組みを検討されてはいかがでしょうか。