No.739 課題

1月8日に中小企業庁から届いたメールマガジンに、山下隆一長官の年頭所感が掲載されていました。

それによれば、「中小企業・小規模事業者の賃上げ原資を確保する」ことを目的として、

  1. 取引適正化の推進
  2. 生産性向上支援
  3. 成長投資支援

を今年のテーマに掲げられています。

1については、「公正取引委員会と連携し」「価格転嫁対策を含む取引適正化をより一層促進し」「中小企業にとって価格交渉・価格転嫁がしやすい環境を整備し、サプライチェーンの隅々まで取引適正化を浸透させて」いくとのこと。

これまでも私は、適正な価格を提示し、強い意志をもって交渉していかなければならないとお伝えしてきました。しかし実態は、「取引が切られるのが怖い」「言っているけどなかなか聞き入れてもらえない」という声がほとんどで、値上げに成功している中小企業は、2割にも満たないという感覚を持っています。

しかし、中小企業庁のこの方針は年々強度を増し、「まさに今、正念場を迎えて」いるという認識の下、「強力に進めていく」という力強い表現を使っています。改めて、勇気をもって交渉のテーブルにつくべきでしょう。交渉相手は、保身しか考えられないサラリーマンが多いもの、恐れる必要はありません。信念をもって押して、押して、押し通す。断固とした態度で臨んでいきましょう。

2については、「カタログから選べるような簡易で即効性のある省力化投資支援を継続」と「オーダーメイド形式も含めた全方位的な省力化投資支援が可能となる措置」を取るとのこと。要するに、使いやすい制度にするということです。「現在も省力化投資補助金の随時公募を受け付けて」いるとのことですので、積極的な検討を行ってみてください。

一方で、行政がいかに支援しようにも、企業側に革新の意思と意欲がなければ、何ともなりません。私が感じる中小企業の本質的な課題は、そこにあります。どうぞ皆さんは革新派の経営者であり続けてください。

最後に3については、成長投資支援のメイン対象が「(売上高)100億円企業」と明言されています。もちろん、100億円企業でなくとも成長意欲がある企業を見捨てることはしないでしょう。しかし、これまではすべての中小企業・小規模事業者を救うことを使命としていた中小企業庁の姿勢が、徐々に変化してきていることがうかがわれる表現と言えるでしょう。その意味においても、革新を続けられる企業であり続けていただきたいと思います。

そして事業承継対策については、その中心にM&Aが置かれています。同族承継が進んでいない現状を踏まえれば仕方がないことかもしれません。しかし私たちは、自らの姿勢、取り組みによって、今一度同族承継の素晴らしさが見直され、多くの企業でその実現を図っていけるようにしていきたいと思います。

何より会員各位が自己成長・自己革新を続け、誰もがうらやむ事業承継の実現をしてて参りましょう。