No.744 危機感
当社では、お客様の決算月2~3か月前に、進行期の納税額を予測し、その結果に基づいて、決算までに行うべき対策を検討する『決算前検討会』というものを実施しています。
私は、主に入社3年以下のメンバーを対象に、数件のお客様をピックアップして、お客様にその結果をお伝えする前に面談し、内容のチェックをしています。
先週は2件の面談を実施しましたが、いずれも赤字企業で、なおかつ「中小企業あるある」で、交際費以外にこれ以上切り詰めることができる経費もなく、黒字転換するには売上を上げるしか方法はない状況にありました。
一方で、話を聴いてみると、担当者は売上拡大の必要性を毎度伝え、社長も「その通り」と同意はするものの、一向に手を打つ気配が見えないとのこと。
これも「中小企業あるある」で、悪くても何とか回っている現状に安住し、現場仕事に逃げてしまう経営者のよくある姿です。
このような方々にはまず、このまま放置したらどうなってしまうのか、その数年先の姿を明確に示してあげる必要があります。私がよく使う指標は、
- 今会社を閉めたら、いくら手元に残るのか?
- 今売り上げがゼロになったら、何か月生き残れるか?
です。①については、貸借対照表に記載されている資産の金額そのままではなく、その資産を今の今売らざるを得なくなったら実際にはいくらで売れるのかを考え、その額から全負債額を差し引いて、実際に手元に残るであろう額を厳し目に見ます。
赤字が常態化している会社の場合、大概大きなマイナスとなります。そしてこれが社長個人の借金として残ることをきちんと自覚してもらい、「少なくともこれ以上の利益を出さなければならないんだ」ということをきちんと認識してもらうのです。
また②については、せめて1年、できれば2年は売り上げゼロでも生き残れるようにしたいとお伝えしています。今回のコロナ禍や能登半島地震でもそうですが、過去の歴史を紐解けば、パンデミックにしろ大天災にしろ、復興には最低でも2年は要するものとの認識が必要です。
また、復興にはそれ相応の資金が必要です。これを融資に頼ることもできますが、それは苦難の先延ばしにしかなりません。そのような苦難は後回しにするのではなく、できれば前倒しにしておきたいものです。
これらの事実をお伝えすると、多少は危機感を持ってもらえるようになるものです。その後に出てくる「じゃあ、どうすればいい?」の質問に一緒になって考えた結果に対しては、それがどんな内容であったとしても、真剣に取り組んでもらえる可能性が高まるものです。取り組んでもらえるかどうかは、そのアイデアの善し悪しではないのです。
社内で必要な危機感が醸成されていない場合も同様ですが、「何をすればよいか」を議論する前に、まずは「取り組まなければどうなってしまうのか?」の共通認識を持つ必要があります。
ぜひ皆さんの会社でも、上記の金額を算出してみてください。適切な危機感が醸成されると思います。