No.751 承継

先週の土曜日、桜満開の春の日差しの中、千年経営研究会・後継者会メンバーの社長就任式に列席してきました。私にとって3度目の参加となる就任式は、改めて「けじめの式典はやるべきものだ」という持論に確信を持たせていただくことができたものでした。

先代は65歳の創業者で、創業29年目。

まずもって立派だと思うのは、65歳の若さで社長の座を譲られたこと。すべての意思決定が社長に集中する中堅・中小企業において、社長という役職はこの上ない重責である一方で、これほど魅力あるポジションはありません。結果として、のらりくらりとしがみついてしまう方も多いものです。

さらに創業者は、自分が譲られた経験も譲った経験もありませんから、そもそも「譲る」という感覚がわからないもの。結果として「死ぬまで社長」となってしまったり、“老-老承継”といわれる「譲られたときには既に老人」となってしまうケースも少なくはありません。私は継ぐ者が50歳を超えたら、既にその域に入っていると思っています。

大企業であれば、周りの優秀な幹部たちが実務を取り仕切っていますから、歳を取ってからでも、また、わずか5~6年の任期であったとしても何とかなるものです。しかし、何でも「社長これどうしましょう?」となる中堅・中小企業では、トップの意思決定力の高さが会社の浮沈を左右します。

ところが、意思決定力はその経験量によって身に就くもの。ということは、成り立ての新社長は素人同然。免許を持たない艦長が社員という乗員を載せて荒波の中を出港するようなものです。社員さんにとってはたまったものではありません。

そこで必要となるのはベテラン経営者の伴走です。できれば10年、短くとも4~5年はサポートしていただきたいもの。その点においても、できるだけ早い承継は欠かせないのです。

さらに今回は、29期での引き継ぎ。通常であれば「切りのいい30期で」となってもおかしくはありません。それを29期で渡された。なかなかできることではありません。新会長ご自身の挨拶でも仰っていましたが、相当の葛藤があったものと思います。それでも英断をされた。素晴らしいことです。

継いだ新社長は36歳。私の考える理想の承継年齢で、かつ私が強く推奨する就任式までやっていただけた。まさに感無量の1日でした。

新社長には、そのような稀有な承継をしていただいたことに対する感謝を忘れず、また同席していただいた社員さんや協力会社の方々の笑顔をさらに明るくしていく覚悟をもって、自代を切り開いていっていただきたいと思います。

それができれば、新社長をベテラン経営者が支える盤石な体制で、今後より一層の発展を遂げられていくものと確信しています。